Human kind 希望の歴史
Human kind 希望の歴史。作者はルトガー・ブレグマンというオランダの歴史学者。人間の本質に対して「万人の万人に対する戦い」との見方を有したトマス・ホッブスと、「文明による堕落」と人間の理性を否定したジャン・ルック・ルソーの互いに対立する思想を紹介しながら、スタンフォード監獄実験、割れ窓理論、ミルグラム実験の再現性について考察する。
人間の本質について希望を持てる見方を有している。
難点としては、文字が大きく、上下に分ける意味があったのかというところ。内容は100点。今年度(2021)ナンバーワン。 サピエンス全史のユヴァル・ノア・ハラリが「人間観が一新した」と書いているが、まさにそう感じることができる。内容をあげたらきりがないが、特に興味深かったのは共感について書かれた部分。
「共感は、人を消耗させる」。共感はより人を悲観的にさせ、「ある女性は、列車に乗り合わせた客を見て、苦しみしか見えなくなったと言った。」
しかし、「共に感じるのでなく、「ために」感じる」ことで、脳の異なる領域が活発化し、エネルギーを搾り取られることはなくなった。
本書ではこれを「思いやり」としているが、まさにこれはsympathyとempathyの違いを表していると考えた。
sympathy—feelings of pity and sorrow for someone else’s misfortune.
empathy—the ability to understand and share the feelings of another
Oxford language
「一緒に悲しむこと」と「気持ちを理解しようと(能動的な)能力」の違い。
気持ちを鍛えるのでなく、訓練によって、他者と自分に距離を置きながらも、他者の心情を理解しようとする能力こそが、希望にほかならない。
関連図書
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309226712/
https://www.kyoto-up.or.jp/books/9784876988266.html
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