[math]1961年度東京工業大学数学問題6

問題

すべての\(x\)に対して\(|f^{\prime}(x)|<\frac{1}{2}\)となるとき、
\((1)\)方程式\(f(x)-x=0\)がただ\(1\)つの実根をもつことを証明せよ。
\((2)\)この実根を\(\alpha\)とするとき、無限数列\({a_n}\)が$$a_n = f(a_{n-1}) \ (n = 1,\ 2,\ \cdots,\ )$$を満たすならば、$$\lim_{n\to\infty}{a_n} = \alpha$$が成り立つことを証明せよ。

方針

\((1)\)は与えられた条件を積分する。\(x\)の正負で場合分けした方が安全である。
\((2)\)は不等式で抑えて、挟み撃ちの原理を用いる。

解答

\((1)\)\(g(x)=f(x)-x\)とする。$$g^{\prime}(x)=f^{\prime}(x)-1$$であるが、与えられた条件から$$-\frac{1}{2} < f^{\prime}(x) < \frac{1}{2}$$であるから、\(g^{\prime}(x) = f^{\prime}(x)-1 < -\frac{1}{2}<0\)である。したがって、\(g(x)\)は減少関数である。\(g(0)=f(0)=0\)とすると、\(x < 0\)では\(g(x)>0\)、\(x>0\)では\(g(x)<0\)となり、確かに\(g(x)=0\)はただ\(1\)つの実根を持つ。\(g(0)=f(0) \ne 0\)とすると、$$-\frac{1}{2}<f^{\prime}(x)<\frac{1}{2}$$を\(0\)から\(x (>0)\)で積分して、$$-\frac{1}{2}x < f(x)-f(0) < \frac{1}{2}x$$となる。変形して、$$-\frac{3}{2}x+f(0)<g(x)<-\frac{1}{2}x+f(0)$$である。十分大きな\(x\)に対して、\(-\frac{1}{2}x+f(0)\)は負になる。したがって、十分大きな\(x\)に対して\(g(x)<0\)である。
また、同じ不等式を\(x(< 0)\)から\(0\)まで積分して、$$-\frac{1}{2}x < f(0)-f(x) < \frac{1}{2}x$$となる。変形して、$$f(0)-\frac{3}{2}x < g(x) < f(0)-\frac{1}{2}x$$となる。十分小さな\(x\)に対して、\(f(0)-\frac{3}{2}x\)は正になる。したがって、十分小さな\(x\)に対して、\(g(x)>0\)である。\(g(x)\)は単調減少であるから、ただ\(1\)つの実根を持つことが証明された。

\((2)\)$$a_{n}-\alpha = f(a_{n-1})-f(\alpha) $$
である。平均値の定理から、$$f(a_{n-1})-f(\alpha) = (a_{n-1}-\alpha)f^{\prime}(c)$$を満たす実数\(c\)が存在する。\(|f^{\prime}(c)|<\frac{1}{2}\)だから、$$| a_{n}-\alpha | < \frac{1}{2} | a_{n-1}-\alpha|$$となる。繰り返しこれを用いると、$$|a_n-\alpha|< \left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}|a_1-\alpha|$$であるが、\(n\to\infty\)の時\(\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}|a_1-\alpha|\to 0\)であるから、\(a_n \to \alpha\)となることが分かる。

解説

この手の問題はよく出題されるので、一般化したことで応用が効く。

コメント

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