[math]2021年度東京工業大学数学問題1

問題

正の整数に関する条件
(*) \(10\)進法で表したときに、どの位にも数字\(9\)が現れない
を考える。以下の問いに答えよ。
\((1)\) \(k\)を正の整数とするとき、\(10^{k-1}\)以上かつ\(10^k\)未満であって条件(*)を満たす正の整数の個数を\(a_k\)とする。このとき、\(a_k\)を\(k\)の式で表せ。
\((2)\) 正の整数\(n\)に対して、
$$b_n =
\begin{cases}
\frac{1}{n} \ \mbox{(\(n\)が条件(*)を満たすとき)}\\
0\ \mbox{(\(n\)が条件(*)を満たさないとき)}
\end{cases}$$
とおく。このときすべての正の整数\(k\)に対して次の不等式が成り立つことを示せ。$$\sum_{n=1}^{10^{k}-1}{b_n} < 80$$

方針

\((1)\) 例えば\(k=3\)とすると、\(10^2 = 100\)以上\(10^3 = 1000\)未満の数字では〇〇〇の形になる。最上位は\(0\)になれないので、\(1\)から\(8\)までの中で選ぶ。それ以下の位は\(9\)以外から選べる。
\((2)\) 問題\((1)\)が利用できる。群数列の様に、求める和を\(1\)以上\(10\)未満、\(10\)以上\(100\)未満、\(100\)以上\(1000\)未満…の様に分けて考える。ちなみに、\(k\)が大きくなるほど評価が厳しくなる(和が増加する)ので、数学的帰納法で示すのは難しい

解答

\((1)\)最上位は\(1\)から\(8\)までの\(8\)個から一つ、それより下の位は\(0\)から\(8\)の\(9\)個から一つ選べば条件を満たす数字が作れる。\(10^{k-1}\)以上かつ\(10^k\)未満の数字は\(k\)桁なので、

\(a_n = 8\cdot 9^{k-1}\)

となる。

\((2)\)\(10^{k-1}\)以上かつ\(10^k\)未満の正の整数で、条件(*)を満たすものは\(a_k\)個であった。この範囲で最も小さい整数は\(10^{k-1}\)である。条件(*)を満たさない時\(b_n\)は\(0\)になる。したがって、\(m\)を適当な整数として、$$\sum_{n=1}^{10^k-1}{b_k} < \sum_{k=1}^{m}{\frac{a_k}{10^{k-1}}}$$ $$= \sum_{k=1}^{m}{\frac{8\cdot9^{k-1}}{10^{k-1}}}$$ $$ = 8\cdot \frac{1-\left(\frac{9}{10}\right)^m}{1-\frac{9}{10}}$$ $$ < 8\cdot \frac{1}{1-\frac{9}{10}}$$ $$ = 80$$である。よって題意が示された。

解説

一般に、調和級数\(\sum_{n=1}^{\infty}{\frac{1}{n}}\)は\(\infty\)に発散する。この級数は非常に緩やかに増加する。具体的には対数的な増加であり、オイラーによって$$\left(1+\frac{1}{2}+\frac{1}{3}+\cdots+\frac{1}{n}+\cdots\right)-\log{n}$$が収束することが示されている。この定数は\(\gamma\)と書いて、オイラーの定数と呼ぶ。
本問題で出題された級数はKempner級数と呼ばれ、\(22.92067\cdots\)に収束する。ちなみに条件(*)の\(9\)を他のどんな数字にしても、やはり収束することが知られている。

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