フィボナッチ数とは
フィボナッチ数とは、次の数列(フィボナッチ数列)によって定められる整数列である。$$a_0 = 0, a_1 = 1$$ $$a_{n+2} = a_{n+1} +a_{n}$$
上の定義から分かる通り、負の整数\(n\)に対してもフィボナッチ数列を定義することができる。例えば、\(n=−1,−2,−3,−4, \cdots\)に対して、\(a_n=1,−1,2,−3,\cdots\)となる。この数列は13世紀イタリアの数学者レオナルド⋅フィボナッチの書「算盤の書」に記述された。下記の性質9, 10, 14は大学入試でもよく出題される。
一般的性質
性質1-数列の基本
フィボナッチ数の最初の\(20\)項は、$$0,1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,144,233,377,610,987,1597,2584,4181,6765$$となる。
性質2-偶奇数
フィボナッチ数\(a_n\)は、\(n\)が\(3\)の倍数のときに限り、偶数になる。
性質3-負の整数に対して
正整数\(n\)に対して、\(a_{-n}=(−1)^{n+1}a_n\)となる。
性質4-黄金比との関連
黄金比\(\phi=\frac{1+\sqrt{5}}{2}\)を用いると、フィボナッチ数の第\(n\)項は\(a_n=\frac{{\phi}^n−(−\phi)^n}{\sqrt{5}}\)と表すことができる。
性質5-黄金比と特性方程式
性質4で現れた\(\phi\)は、フィボナッチ数列の特性方程式\(x^2=x+1\)の正の解である。
性質6-近似
\(n\)が十分に大きいとき、\(b_n=\frac{{\phi}^n}{\sqrt{5}}\)とすると、\(b_n\)はフィボナッチ数\(a_n\)の良い近似を与える。
性質7-より正確な表示
より正確には\(a_n=\lfloor\frac{{\phi}^n}{\sqrt{5}}+\frac{1}{2}\rfloor\)で与えられる。ただし、\(\lfloor x\rfloor\)は床関数と呼ばれるもので、実数\(x\)に対して\(x\)以下の最大の整数を表す。
性質8-極限
\(\frac{a_{n+1}}{a_n}\)は\(n\to \infty\)の極限で、黄金比\(\phi = \frac{1+\sqrt{5}}{2}\)に収束する。
関係式
性質9-大学入試でも頻出の関係式
\((-1)^n = a_{n+1}a_{n-1}-{a_n}^2\)が成り立つ。
性質10-性質9の逆
ある数列\(c_n\)が性質9を満たし、かつ\(c_1=c_2=1\)であるならば、その数列はフィボナッチ数列になる。
性質11-これも頻出の関係式
\({a_n}^2+{a_{n-1}}^2 = a_{2n-1} \)が成り立つ。
性質12-離れた項同士の関係式
\(a_{n+1}a_{m}+a_na_{m-1} = a_{n+m}\)が成り立つ。
性質13-2倍の関係式
\((2a_{n-1}+a_n)a_n = (a_{n-1}+a_n)a_n = a_{2n}\)が成り立つ。
性質14-和の関係式
\(a_1+a_2+a_3 + \cdots +a_n = a_{n+2}-1\)が成り立つ。
性質15-累積和
\(a_1 + 2a_2+3a_3 + na_n = na_{n+2}-a_{n+3}+2\)が成り立つ。
性質16-二乗和
\({a_1}^2 + {a_2}^2 + \cdots + {a_n}^2 = a_na_{n+1}\)が成り立つ。
性質17-複雑な関係式
\(a_{2n+k} = a_k{a_{n+1}}^2+2a_{k-1}a_na_{n+1}+a_{k-2}{a_n}^2\)が成り立つ。
性質18-3倍の関係式
\(a_{3n} = 2{a_n}^3 + 3a_{n-1}a_na_{n+1} = 5{a_n}^3 + 3(-1)^na_n\)が成り立つ。
性質19-3倍の方程式2
\(a_{3n+1} = {a_{n+1}}^3 + 3a_{n+1}{a_n}^2-{a_n}^3\)が成り立つ。
性質20-3倍の方程式3
\(a_{3n+2} = {a_{n+1}}^3 + 3{a_{n+1}}^2a_n+{a_n}^3\)が成り立つ。
性質21-4倍の関係式
\(a_{4n} = 4a_na_{n+1}({a_{n+1}}^2+2{a_n}^2)-3{a_n}^2({a_n}^2+2{a_{n+1}}^2)\)が成り立つ。
和の性質
性質22-無限級数
\(s(x) = \sum_{k=0}^{\infty}{a_{k}x^k}\)とおいたとき、\(\bar x \bar < \frac{1}{\phi}\)においてこの級数は収束し、その和は\(s(x) = \frac{x}{1-x-x^2}\)になる。
性質23-無限級数2
\(\sum_{n=0}^{\infty}{\frac{a_n}{10^{(n+1)(k+1)}}} = \frac{1}{10^{2k+2}-10^{k+1}-1}\)となる。
性質24-無限級数3
\(\sum_{n=0}^{\infty}{\frac{a_{k}}{k^n}} = \frac{k}{k^2-k-1}\)
性質25-無限級数4
\(\sum_{n=0}^{\infty}{\frac{1}{1+a_{2n+1}}} = \frac{\sqrt{5}}{2}\)
性質26-無限級数5
\(\sum_{k=1}^{\infty}{\frac{(-1)^{k+1}}{\sum_{j=1}^{k}{{a_j}^2}}} = \frac{\sqrt{5}-1}{2}\)となる。
性質27-無限級数6
\(\sum_{n=1}^{\infty}{\frac{1}{a_n}}\)は収束し、その値は\(3.35988566243\cdots\)となる。
整数としてのフィボナッチ数の性質
性質28-互いに素
すべての番号\(n\)に対して、\(a_n\)と\(a_{n+1}\)は互いに素である。
性質29-最大公約数
自然数\(m,n\)に対して、\(m\)と\(n\)の最大公約数を\(l\)とすると、\(a_n\)と\(a_m\)の最大公約数は\(a_l\)になる。
性質30-4で割った余り
\(n\)が奇数のとき、\(a_n\)の奇数の約数は、すべて\(4\)で割ると\(1\)余る数である。
性質31-11で割った余り
\(\sum_{k=n}^{n+9}{a_k} = 11a_{n+6}\)が成り立つ。すなわち、フィボナッチ数列から任意の連続する\(9\)つの項の和を取り出したとき、その和は\(11\)で割り切れる。
その他の難しい性質
性質32
\(a_{kn+c} = \sum_{i=0}^{k}{_k\mathbb{C}_{i}a_{c-i}{a_n}^i{a_{n+1}}^{k-i}}\)が成り立つ。
性質33
\(a_n = \frac{1}{2^{n-1}}\sum_{k=0}^{\lfloor \frac{n-1}{2}\rfloor}{5^k _{n}\mathbb{C}_{2k+1}}\)
性質34
\(a_{n+1} = \sum_{k=0}^{\lfloor \frac{n}{2}\rfloor}{_{n-k}\mathbb{C}_{k}}\)が成り立つ。
性質35
\(\phi = 1 + \sum_{n=1}^{\infty}{\frac{(-1)^{n+1}}{a_na_{n+1}}}\)
性質36
\(\sum_{k=0}^{n}{_{n}\mathbb{C}_k a_k} = a_{2n}\)が成り立つ。
性質37
\(\sum_{k=0}^{n}{_{n}2^{k}\mathbb{C}_k a_k} = a_{3n}\)が成り立つ。
終わりに
その他にもまだまだ驚くほど多くのフィボナッチ数列の関係式、性質は存在する。上の性質のうちいくつかは高校までの範囲で証明でき、余裕がある人は証明にチャレンジしてみると良い。数式の上の性質だけではなく、フィボナッチ数は自然界のあらゆる所で観察される。
出典
http://mathworld.wolfram.com/FibonacciNumber.html
https://en.wikipedia.org/wiki/Fibonacci_number
コメント
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