[math]1971年京都大学理系数学問題2

問題

\(\alpha, \beta\)は複素数で、\(\alpha\)の絶対値は\(1\)とする。このとき\(z + \alpha\bar{z} +\beta =0\)を満足する複素数\(z\)があるための必要十分条件は\(\alpha\bar{\beta} = \beta\)であることを示せ。

方針

極端に難しい問題である。必要性は共役複素数を取ると簡単に導くことができるが、十分性の方では何をしたら良いのか全く分からずに、多くの受験生が手が出せなかったことだろう。

解答

$$z + \alpha\bar{z}+\beta = 0$$を満たす複素数が存在するとき、両辺の共役複素数を考え、$$\bar{z} + \bar{\alpha}z + \bar{\beta} = 0$$である。第\((1)\)式\(-\alpha \times\)第\((2)\)式を作ると、$$z(1-\alpha\bar{\alpha}) + \beta-\alpha\bar{\beta} = 0$$である。\(\mid {\alpha}^2 \mid = \alpha\bar{\alpha} = 1\)だから、上の式は\(\beta -\alpha\bar{\beta} = 0\)となる。

逆に、\(\alpha\bar{\beta} = \beta\)が成り立つ時、\(z = -\frac{\beta}{2}\)とすると、$$z + \alpha\bar{z} + \beta = -\frac{\beta}{2}-\frac{\alpha\bar{\beta}}{2} + \beta$$ $$ = 0$$となり、\(z + \alpha\bar{z} +\beta = 0\)が成り立つ。以上より、題意が成り立つ。

解説

こういった問題では、ひとつ題意を満たす実例を見つけてしまえば、問題は解決する。そこで、どうやって\(z = -\frac{\beta}{2}\)を見つけたか考えてみよう。今示すべきは、\(\alpha\bar{\beta} = \beta\)の時、\(z+\alpha\bar{z}+\beta = 0\)となる\(z\)が存在することである。与えられた条件を有効に使うには、\(\alpha, \beta\)のどちらかを消去した方がやりやすそうである。条件が二つあるよりも一つの方が考えやすいからだ。そこで、\(\alpha\)を消去することにしよう。上の式で、\(\beta\)を消去しようとすると、$$z +\alpha\bar{z} + \beta = z + \alpha\bar{z} + \alpha\bar{\beta}$$となり\(\alpha, \beta\)の両方が現れるが、\(\alpha\)を消去すると、$$z + \alpha\bar{z} + \beta = 0$$の両辺に\(\bar{\beta}\)を掛けて、$$\bar{\beta}z + \alpha\bar{\beta} \bar{z} + \beta\bar{\beta} = 0$$としてから、\(\alpha\bar{\beta} = \beta\)を使って$$\bar{\beta}z + \beta\bar{z} +\beta\bar{\beta} = 0$$と、\(\alpha\)を消去できるからである。

この$$\bar{\beta}z + \beta\bar{z} + \beta\bar{\beta} = 0$$を考えよう。これは実は複素平面上の直線を表す。そのことを知っている必要はないが、「\(z\)はもしかしたら\(z = k\beta\)の形で表されるのでは」と思えれば、しめたものである。実際に置いてみると、$$\bar{\beta}z + \beta\bar{z} + \beta\bar{\beta} = \mid {\beta}^2\mid(2k+1) = 0$$となり、\(k=-\frac{1}{2}\)が求めるものだということがわかる。

なお、複素数平面の話なので、例えば\(z=x+yi\)などと成分で計算するということも考えられなくもないが、実際やってみると、試験場では絶望的である。先を見通した計算ができないと結論まで持っていくことはできない。特に十分性については、厳しいものがある。ただし、$$\bar{\beta}z + \beta\bar{z} + \beta\bar{\beta} = 0$$まで出していれば、成分計算でも何とかなる。ここら辺の兼ね合いも、またこの問題の難しさである。

コメント

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