[math]1994年後期東京工業大学数学問題2

問題

自然数\(n = 1, 2, 3, \cdots\)に対して、\((2-\sqrt{3})^n\)という形の数を考える。これらの数はいずれも、それぞれ適当な自然数\(m\)が存在して\(\sqrt{m}-\sqrt{m-1}\)という表示をもつことを示せ。

方針

難問である。$$2-\sqrt{3} = \sqrt{2^2}-\sqrt{2^2-1}$$ $$(2-\sqrt{3})^2 = 7-4\sqrt{3} = \sqrt{7^2}-\sqrt{7^2-1}$$ $$(2-\sqrt{3})^3 = \cdots$$などとすると、問題文の\(m = {a_n}^2\)であることが予想される。これがわかっても、直接帰納法で示すのは難しい。関係式として\({a_n}^2-3{b_n}^2 = 1\)を持ってくる必要がある。

解答

\((2-\sqrt{3})^n = a_n -b_n\sqrt{3}\)と置く。\(a_1 = 2, b_1 = 1\)である。$$a_{n+1}-b_{n+1}\sqrt{3} = (a_n-b_n\sqrt{3})(2-\sqrt{3})$$ $$ = 2a_n + 3b_n -(a_n + 2b_n)\sqrt{3}$$より、$$a_{n+1} = 2a_n + 3b_n, b_{n+1} = a_n + 2b_n$$である。これから、帰納的に\(a_n, b_n\)は整数になる。

今、$$(2+\sqrt{3})^n = a_n + b_n\sqrt{3}$$であることを示す。\(n = 1\)の時に正しく、ある\(n\)で正しいとすると、$$(2+\sqrt{3})^{n+1} = (a_n+b_n\sqrt{3})(2+\sqrt{3})$$ $$ = (2a_n + 3b_n) + (a_n + 2b_n)\sqrt{3}$$ $$ = a_{n+1} + b_{n+1}\sqrt{3}$$であるから、\(n+1\)の時も正しい。以上から、$$(a_n+b_n\sqrt{3})(a_n-b_n\sqrt{3}) = (2+\sqrt{3})^n(2-\sqrt{3})^n$$であるから、両辺を計算して、$${a_{n}}^2-3{b_n}^2 = 1$$となる。これを使うと、$$(2-\sqrt{3})^n = a_n-b_n\sqrt{3}$$ $$ = \sqrt{{a_n}^2} – \sqrt{3{b_n}^2}$$ $$ = \sqrt{{a_n}^2}-\sqrt{{a_n}^2-1}$$となり、確かに題意が成り立つ。

解説

帰納法でも\({a_n}^2-3{b_n}^2 = 1\)を示すことが出来るが、解答では「相棒」である$$(2+\sqrt{3})^n = a_{n} + b_n\sqrt{3}$$を持ち出している。このタイプの問題は,見たことがないと非常に難しいが、一回でも経験すると上のやり方で面白いように解けるようになる。そういう意味で、知識をもっているのは悪いことではない、という見本のような問題である。

コメント

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