[math]1996年京都大学理系後期数学問題1

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問題

\(n\)を自然数とする。
\((1)\) すべての実数\(\theta\)に対し$$\cos{n\theta} = f_n(\cos{\theta}), \sin{n\theta} = g_n(\cos{\theta})\sin{\theta}$$をみたし、係数がともにすべて整数であるような\(n\)次式\(f_n(x)\)と\(n-1\)次式\(g_n(x)\)が存在することを示せ。
\((2)\) \(f^{\prime}_n(x) = ng_n(x)\)であることを示せ。
\((3)\) \(p\)を\(3\)以上の素数とするとき、\(f_p(x)\)の\(p-1\)次以下の係数はすべて\(p\)で割り切れることを示せ。

方針

問題の\(2\)つの関数をチェビシェフの多項式という。\((1)\)は関数を具体的に構成するのが良いだろう。

解答

\((1)\) 三角関数の加法定理から$$\cos{(n+1)\theta} = \cos{n\theta}\cos{\theta}-\sin{\theta}\sin{n\theta}$$ $$\cos{(n-1)\theta} = \cos{n\theta}\cos{\theta}+\sin{\theta}\sin{n\theta}$$となる。辺ごとに足して整理すると、$$\cos{(n+1)\theta} = 2\cos{n\theta}\cos{\theta}-\cos{(n-1)\theta}$$となる。\(\cos{2\theta} = 2\cos^2{\theta}-1\)であるから、\(f_1(x) = x, f_2(x) = 2x^2-1\)とすれば良い。\(n = k-1, k\)のときに係数がすべて整数である\(n\)次式\(f_n(x)\)で、\(\cos{n\theta} = f_n(\cos{\theta})\)を満たすものが存在すると仮定する。すると、$$\cos{(n+1)\theta} = 2\cos{\theta}f_n(\cos{\theta})-f_{n-1}(\cos{\theta})$$であるから、\(f_{n+1}(x) = 2xf_n(x)-f_{n-1}(x)\)とすれば、\(f_{n+1}(x)\)は\(n+1\)次式で、係数はすべて整数となる。全く同様に、$$\sin{(n+1)\theta} = \sin{n\theta}\cos{\theta}+\cos{n\theta}\sin{\theta}$$ $$\sin{(n-1)\theta} = \sin{n\theta}\cos{\theta}-\cos{n\theta}\sin{\theta}$$を辺ごとに足して整理すると、$$\sin{(n+1)\theta} = 2\cos{\theta}\sin{n\theta}-\sin{(n-1)\theta}$$となる。\(\sin{2\theta} = 2\cos{\theta}\sin{\theta}\)であるから、\(g_1(x) = 1, g_2(x) = 2x\)とすれば良い。\(n = k-1, k\)のときに係数がすべて整数である\(n\)次式\(g_n(x) \)で、\(\sin{n\theta} = g_n(\cos{\theta}\sin{\theta})\)を満たすものが存在すると仮定する。すると、$$\sin{(n+1)\theta} = \{2\cos{\theta}g_n(\cos{\theta})-g_{n-1}(\cos{\theta})\}\sin{\theta}$$であるから、\(g_{n+1}(x) = 2xg_{n}(x)-g_{n-1}(x)\)とすれば、\(g_{n+1}(x)\)は\(n\)次式で、係数はすべて整数となる。

\((2)\) $$\cos{n\theta} = f_{n}(\cos{\theta})$$を微分して、$$-n\sin{n\theta} = -\sin{\theta}f^{\prime}_{n}(\cos{\theta})$$であるが、\(\sin{n\theta} = \sin{\theta}g_n(\cos{\theta})\)であるから、$$-n\sin{\theta}g_n(\cos{\theta}) = -\sin{\theta}f^{\prime}_{n}(\cos{\theta})$$である。整理して、$$f^{\prime}_{n}(\cos{\theta}) = ng_n(\cos{\theta})$$となる。すべての実数\(\theta\)に対しこれが成り立ち、かつ\(f_n(x)\)は\(n\)次式であるから、\(f^{\prime}_{n}(x) = ng_n(x)\)が成り立つ。

\((3)\) \((1)\)から\(a_0, a_1, a_2, \cdots, a_{p-1}\)を整数として、$$g_{p}(x) = a_{p-1}x^{p-1} + \cdots + a_1x + a_0$$と置ける。\((2)\)から\(f^{\prime}_p(x) = ng_p(x)\)であるから、積分すると、$$f_{n}(x) = a_{p-1}x^2{p-1} + \cdots + \frac{p a_1}{2}x^2 + pa_0 x + C$$となる。ただし、\(C\)は積分定数である。\(x^k (1\leq k\leq p-1)\)の係数は\(\frac{pa_{k-1}}{k}\)であるが、\((1)\)からこの値は整数で、\(1\leq k\leq p-1\)であるから、この値は\(p\)の整数倍となる。さらに、\(f_p(\cos{\theta}) = \cos{p\theta}\)で\(\theta = \frac{\pi}{2}\)とすると、\(f_p(x) = 0\)となるので、\(C=0\)がわかる。ここで、\(p\)が\(3\)以上の素数であり、つまり奇数であることが重要である。以上より、\(f_p(x)\)の\(p-1\)次以下の係数はすべて\(p\)で割り切れる。

解説

\((1)\)では帰納法を\(2\)段階で用いている。もしも$$\cos{(n+1)\theta} = \cos{n\theta}\cos{\theta}-\sin{\theta}\sin{n\theta}$$のみを用いると、\(n\)次の係数が\(0\)となる可能性を排除できない。つまり、問題の要求よりも強い「\(n\)次の係数が\(0\)でないこと」も帰納法の仮定に含める必要がある。そこで解答では、\(2\)段階の帰納法を用いる。この場合、\(n=1\)と\(n=2\)の場合での題意の成立を確認しなくてはいけない。

\((3)\)は\((2)\)が何のために与えられているのかを落ち着いて考えることが出来れば難しくは無い。とは言ってもストレートに解答をつくることが出来た受験生は相当の実力があると思って良い。

全体としてやや高級な問題である。実はこの年代にはチェバシェフ多項式についての問題が多くの大学で取り上げられている。有名大学、特に東大京大の問題は注目されており、東大京大を受験しなくても、直近の過去問をチェックするのは、決して無駄ではない。

コメント

  1. […] 以下の京都大学の問題も参照すると良い。((2))は((1))を利用して帰納法を用いても良い。 […]

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