問題
実数\(a, b, c, x, y, z, p\)が次の\(4\)条件を満たしている。$$\begin{cases}a^2-b^2-c^2 > 0\\ ax + by+cz = p\\ ap < 0 \\ x > 0\end{cases}$$このとき\(x^2-y^2-z^2\)の符号を調べよ。
方針
不等式の問題では一文字消去が原則だが、うまく行かない。空間図形に帰着出来ないかと色々試してみても、駄目(意味がありげな式だが)。
解答
\(ap < 0\)に\(p = ax + by + cz\)を代入して、$$a^2x + a(by+cz) < 0$$である。変形して、$$a^2x < -a(by+cz)$$となる。\(x > 0\)だから両辺を二乗して、$$a^4x^2 < a^2(by+cz)^2$$である。両辺を\(a^2 (>0)\)で割って、$$a^2x^2 < (by+cz)^2$$となる。コーシー・シュワルツの不等式から、$$(by+cz)^2\leq (b^2+c^2)(y^2+z^2)$$が成り立つので、$$a^2x^2 < (b^2+c^2)(y^2+z^2)$$であるが、さらに\(b^2+c^2<a^2\)であるから、$$a^2x^2 < a^2(y^2+z^2)$$である。したがって、\(x^2-y^2-z^2 < 0\)である。
解説
一般に、不等式の問題は「思いつけば一発」というものも多く、逆に言うと、「思いつかなければ何もできない」ということになる。そのような問題ばかりだと試験において受験生の実力を正当に判断できず、近年は不等式の難問が出題されにくくなっているのだろう。
コーシー・シュワルツの不等式について、ベクトルの内積を考えると理解しやすい。すなわち、\(2\)つのベクトル\(\vec{a} = (a, b), \vec{b} = (c, d)\)に対して、なす角を\(\theta\)とすると、$$\vec{a}\cdot \vec{b} = \mid \vec{a}\mid \mid\vec{b}\mid \cos{\theta} $$ $$\leq \mid\vec{a} \mid \mid\vec{b} \mid$$となる。ここに成分を代入すると、$$(ac+bd)\leq \sqrt{(a^2+b^2)(c^2+d^2)}$$となり、両辺を二乗すると不等式の成立がわかる。
コメント
[…] 1969年東京工業大学数学問題1 コーシー・シュワルツの不等式、式の超難問 […]