[math]1991年東京大学前期理系問題3

問題

定数\(p\)に対して、\(3\)次方程式$$x^3-3x-p = 0$$の実数解の中で最大のものと最小のものとの積を\(f(p)\)とする。ただし、実数解がただ一つのときには、その\(2\)乗を\(f(p)\)とする。
\((1)\) \(p\)がすべての実数を動くとき、\(f(p)\)の最小値を求めよ。
\((2)\) \(p\)の関数\(f(p)\)のグラフの概形を描け。

方針

グラフを描いてから、\(p\)の値によって場合分けを行う。\((2)\)はパラメータで表された曲線についての良い練習問題である。

解答

\(y =x^3 -3x\)のグラフの概形は以下のようになる。

グラフの概形

このグラフを\(y = p\)との交点を考えると、以下のように場合分けできる。

\((i)\) \(p < -2, p > 2\)の時、\(f(p) > (-2)^2 = 4\)あるいは\(f(p) > 2^2 = 4\)となる。

\((ii)\) \(p = \pm 2\)の時、\(f(p) = -2\cdot 1 = -2 \)あるいは\(f(p) = 2\cdot -1 = -2\)となる。

\((iii)\) \(-2 < p < 2\)の時、\(x^3-3x-p = 0\)は\(3\)つの異なる実数解をもつので、小さい順に\(\alpha, \beta, \gamma\)とする。この時、解と係数の関係から\(\alpha\beta\gamma = p\)だから、$$f(p) = \alpha\gamma$$ $$ = \frac{p}{\beta}$$ $$ = \frac{{\beta}^3-3\beta}{\beta}$$ $$= {\beta}^2-3$$となる。これは\(\beta = 0\)、つまり\(p = 0\)で\(\alpha = -\sqrt{3}, \gamma = \sqrt{3}\)の時にも成り立つ。最小値はこの\(\beta = 0\)の時に実現するので、\(f(p)\)の最小値は\(-3\)となる。

\((2)\) \((1)\)と同様に場合分けしていく。

\((i)\) \(p < -2\)あるいは\(p > 2\)の時、\(x^3-3x-p=0\)を満たす実数は一つなので、その値を\(t\)とする。この時\(t^3-3t-p = 0\)で、\(t < -2, 2 < t\)である。\(p = X, f(p) = Y\)とすると、\((X, Y) = (t^3-3t, t^2)\)となる。すると、$$\frac{dX}{dt} = 3t^2-3, \frac{dY}{dt} = 2t$$であり、$$\frac{dY}{dX} = \frac{2}{3}\frac{t}{t^2-1}$$となる。これから、\(p = f(p)\)は\(t < -2\)すなわち\(p < -2\)で減少となり、\(t > 2\)すなわち\(p > 2\)で増加となる。また、$$\frac{d^2Y}{dX^2} = \frac{d}{dX}\left(\frac{dY}{dX}\right)$$ $$ = \frac{d}{dt}\left(\frac{dY}{dX}\right)\cdot \frac{dt}{dX}$$ $$ = \frac{d}{dt}\left(\frac{2t}{3t^2-3t}\right)\cdot \frac{1}{3t^2-3t}$$ $$ = -\frac{2(t^2+1)}{9(t^2-1)^3} < 0$$となるから、\(f(p)\)はこの範囲で上に凸となる。

\((ii)\) \(p = \pm2\)の時、\((1)\)から\(f(p) = -2\)である。

\((iii)\) \(-2 < p < 2\)の時、\((1)\)の記号を使うと、\(p = {\beta}^3-3\beta, f(p) = {\beta}^2-3\)となる。\(-1 < \beta < 1\)であることは\((1)\)のグラフからわかる。\(X = {\beta}^3-3\beta, Y = {\beta}^2-3\)だから、\(\frac{dY}{dX}\)も\(\frac{d^2Y}{dX^2}\)も\((2)(i)\)の時と同じになる。ただし、この時は\(-1<\beta<1\)なので、\(f(p)\)は下に凸になる。以上をまとめて\(f(p)\)のグラフを描くと、下のようになる。

\(f(p)\)の概略図

解説

難問である。\((1)\)はまだなんとかなるが、\((2)\)では解答がなかなか書けずイライラした受験生も多かったことだろう。この時代の東京大学の問題はいまよりも難しく、この問題でも白紙の解答が続出したそうである。\((1)\)は先ず\(y=x^3-3x\)のグラフを書き、\(y=p\)との交点を眺めながら場合分けをする。\((2)\)が問題で、下手に\(p\)の関数ということに拘ると泥沼に嵌る。解答では\(p\)を解\(\alpha\)や\(\beta\)のパラメータとして見て微分を用いてグラフの概形を描いている。ボリュームのある難問で凹凸までは気が回らなかった受験生も多いかも知れない。

なお、パラメーターで表示された関数の凹凸を調べる手法について以下に示す。

パラメータ表示された関数の凹凸について

実数\(t\)に対して、\(xy\)平面上の曲線\(C\)が$$\begin{cases} x = f(t) \\ y = g(t) \end{cases}$$で表されるとする。この時、\(C\)の概形を調べたい。まず、増減については$$\frac{dy}{dx} = \frac{g^{\prime}(t)}{f^{\prime}(t)}$$を調べれば良い。では、凹凸についてだが、多くの受験生が何故か$$\frac{g^{\prime\prime}(t)}{f^{\prime\prime}(t)}$$を考えてしまう。これは\(C\)の凹凸になんの関係もない。凹凸を調べるには$$\frac{d^2y}{dx^2}$$を考える必要がある。これは、$$\frac{d^2y}{dx^2} = \frac{d}{dt}\left(\frac{g^{\prime}(t)}{f^{\prime}(t)}\right)\cdot \frac{dt}{dx}$$ $$ = \frac{g^{\prime\prime}(t)f^{\prime}(t)-f^{\prime\prime}(t)g^{\prime}(t)}{\{f^{\prime}(t)\}^2}\cdot \frac{1}{f^{\prime}(t)}$$ $$ = \frac{g^{\prime\prime}(t)f^{\prime}(t)-f^{\prime\prime}(t)g^{\prime}(t)}{\{f^{\prime}(t)\}^3}$$を考えなくてはいけない。このように、パラメータ表示された曲線の凹凸を調べるのは一般にとても面倒である。

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