[math]1999年前期京都大学理系数学問題3

問題

\((1)\) \(a_0 < b_0, a_1 < b_1\)を満たす正の実数\(a_0, b_0, a_1, b_1\)について、次の不等式が成り立つことを示せ。$$\frac{{b_1}^2}{{a_0}^2+1} + \frac{{a_1}^2}{{b_0}^2+1} > \frac{{a_1}^2}{{a_0}^2+1} + \frac{b_1}{{b_0}^2+1}$$
\((2)\) \(n\)個の自然数\(x_1, x_2, \cdots, x_n\)は互いに異なり、\(1\leq x_k\leq n (1\leq k\leq n)\)を満たしているとする。このとき、次の不等式が成り立つことを示せ。$$\sum_{k=1}^{n}{\frac{{x_k}^2}{k^2+1}} > n-\frac{8}{5}$$

方針

\((2)\)はもちろん\((1)\)を利用する。どのような時に与えられた式の値が最も小さくなるのかを評価する。

解答

\((1)\) $$\frac{{b_1}^2}{{a_0}^2+1} + \frac{{a_1}^2}{{b_0}^2+1}-\frac{{a_1}^2}{{a_0}^2+1}-\frac{{b_1}^2}{{b_0}^2+1}$$ $$ = ({b_1}^2-{a_1}^2)\left(\frac{1}{{a_0}^2+1}-\frac{1}{{b_0}^2+1}\right)$$であるが、\(a_0 < b_0, a_1 < b_1\)であるからこれは正になる。

\((2)\) \(l < m\)である自然数\(l, m\)を考える。ただし、\(1\leq l, m\leq n\)である。\(x_l > x_m\)であるとすると、\((1)\)の不等式で\(a_0 = l, b_0 = m, a_1 = x_m, b_1 = x_l\)として、$$\frac{{x_l}^2}{l^2+1} + \frac{{x_m}^2}{m^2+1} > \frac{{x_m}^2}{l^2+1} + \frac{{x_l}^2}{m^2+1}$$となる。すなわち、\(x_l\)と\(x_m\)を入れ替えることで$$\sum_{k=1}^{n}{\frac{{x_k}^2}{k^2+1}}$$の値を小さくできる。これから、\(x_k = k\)の時$$\sum_{k=1}^{n}{\frac{{x_k}^2}{k^2+1}}$$は最も小さくなる。したがって、$$\sum_{k=1}^{n}{\frac{{x_k}^2}{k^2+1}}\geq \sum_{k=1}^{n}{\frac{k^2}{k^2+1}}$$ $$ = \sum_{k=1}^{n}{\frac{k^2+1-1}{k^2+1}}$$ $$ = n-\sum_{k=1}^{n}{\frac{1}{k^2+1}}$$となるから、$$\sum_{k=1}^{n}{\frac{1}{k^2+1}} < \frac{8}{5}$$を示せば良い。ここで、\(k\geq2\)の時\(k(k-1)\leq k^2+1\)となるから、\(\frac{1}{k^2+1} \leq \frac{1}{k(k-1)} \)である。これを使って、$$\sum_{k=1}^{n}{\frac{1}{k^2+1}}\leq \frac{1}{1^2+1} + \sum_{k=2}^{n}{\frac{1}{k(k-1)}}$$ $$ = \frac{1}{2} + \sum_{k=2}^{n}{\left(\frac{1}{k-1}-\frac{1}{k}\right)}$$ $$ = \frac{1}{2} + 1-\frac{1}{n}$$ $$ < \frac{8}{5}$$が成り立つ。

解説

高度で面白い問題である。関門は\(2\)つあって、先ず\((1)\)を用いて\(x_k = k\)のときに、与えられた式が最も小さくなることを示す。何となくは分かるがとても表現しづらい。次の関門が\(\sum_{k=1}^{n}{\frac{1}{k^2+1}}\)の評価である。これは\(n\)について増加であるから、$$\sum_{k=0}^{\infty}{\frac{1}{k^2+1}}$$が\(\frac{8}{5}\)より小さいことを示しても良い。実はこれは\(\zeta\)関数の特殊な値で、\(\frac{{\pi}^2}{6}\)になることがオイラーにより示されている。また、\(y = \frac{1}{x^2+1}\)のグラフを描いて、積分で評価しても良い。

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