[math]1984年東京大学理系数学問題3

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問題

\(2\)以上の自然数\(k\)に対して$$f_k(x) = x^k-kx+k-1$$とおく。このとき、次のことを証明せよ。
\((1)\) \(n\)次多項式\(g(x)\)が\((x-1)^2\)で割り切れるためには、\(g(x)\)が定数\(a_2, \cdots a_n \)を用いて\(\displaystyle{g(x) = \sum_{k=2}^{n}{a_kf_k(x)}}\)の形に表されることが必要十分である。
\((2)\) \(n\)次多項式\(g(x)\)が\((x-1)^3\)で割り切れるためには、\(g(x)\)が関係式$$\sum_{k=2}^{n}{\frac{k(k-1)}{2}a_k} = 0$$をみたす定数\(a_2, \cdots, a_n\)を用いて\(\displaystyle{g(x) = \sum_{k=2}^{n}{a_kf_k(x)}}\)の形に表されることが必要十分である。

方針

多項式\(h(x)\)が\((x-a)^k\)で割り切れるならば、\(h(a) = h^{\prime}(a) = \cdots = h^{n}(a) = 0\)である。証明は簡単で、\(h(x) = (x-a)^kp(x)\)などと置いて微分するとすぐに分かる。

解答

\(n\)次多項式\(g(x)\)を\(\displaystyle{g(x) = \sum_{k=0}^{n}{b_kx^k}}\)と置く。

\((1)\) (必要性について)\(g(x)\)が\((x-1)^2\)で割り切れるとき、\(g(1) = 0, g^{\prime}(1) = 0\)が成り立つ。すなわち、$$\displaystyle{\begin{cases}\sum_{k=0}^{n}{b_k} = 0\\ \sum_{k=0}^{n}{kb_k} = 0 \end{cases}}$$である。これから、$$\begin{eqnarray}g(x) & = & \sum_{k=0}^{n}{b_kx^k}+(-x+1)\sum_{k=0}^{n}{kb_k}-\sum_{k=0}^{n}{b_k} \\& = & \sum_{k=0}^{n}{b_k(x^k-kx+k-1)} \\ & = & \sum_{k=2}^{n}{b_kf_k(x)}\end{eqnarray}$$である(\(k = 0, 1\)で\(x^k-x+k-1 = 0\)となることに注意)。

(十分性について)逆に\(\displaystyle{g(x) = \sum_{k=2}^{n}{a_kf_k(x)}}\)の形で表されるとする。このとき、\(f^{\prime}(x) = kx^{k-1}-k\)より、\(f_k(1) = 0, f_k^{\prime}(1) = 0\)であることに注意すると、\(f_k(x)\)は\((x-1)^2\)で割り切れるから、\(g(x)\)も\((x-1)^2\)で割り切れる。

\((2)\) (必要性について)\(g(x)\)が\((x-1)^3\)で割り切れるとき、\((1)\)の条件に加えて、\(g^{\prime\prime}(1) = 0\)も成り立つから、$$\sum_{k=0}^{n}{k(k-1)b_k} = 0$$も成り立つ。したがって、\(\displaystyle{\sum_{k=2}^{n}{\frac{k(k-1)}{2}b_k} = 0}\)が成り立つ。後は、\((1)\)の経過から\(\displaystyle{g(x) = \sum_{k=2}^{n}{b_kf_k(x)}}\)と表されることがわかる。

(十分性について)逆に、\(g(x)\)が\(\displaystyle{\sum_{k=2}^{n}{\frac{k(k-1)}{2}a_k} = 0}\)を満たす定数\(a_k\)を用いて\(\displaystyle{g(x) = \sum_{k=2}^{n}{a_kf_k(x)}}\)の形で表されるとする。\((1)\)から\(g(1) = 0, g^{\prime}(1) = 0\)である。また、このとき\(2\)以上の自然数\(k\)に対して\(f_k^{\prime\prime}(x) = k(k-1)x^{k-2}\)より、\(f_k^{\prime\prime}(1)=k(k-1)\)であるから、$$\begin{eqnarray}g^{\prime\prime}(1) & = & \sum_{k=2}^{n}{a_kk(k-1)}\\ & = & 0\end{eqnarray}$$となるから、\(g(x)\)は\((x-1)^3\)で割り切れる。

解説

良問である。\((1)\)十分性についてはすぐに分かるが、必要性については難しい。帰納法を用いても良いが、解答では方針で記載した基本的事実を利用した。これを用いるとすっきりとした解答を書くことができるが、簡単な問題ではない。\((1)\)の解答の最初に現れる関係式の値は\(0\)なので、適当に足したり引いたりして問題文の\(f_k(x)\)の形を作り出す。

\((2)\)も\((1)\)が解答の解き方で解ければ、意味が分かりやすい。十分性について、順番に式を書いていけば慌てずに処理することができるのではないかと思う。\((2)\)の関係式で現れる$$\sum_{k=2}^{n}{\frac{k(k-1)}{2}a_k}$$の分母の\(2\)の意味ははっきりとしない。

コメント

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  2. 名無し より:

    失礼します。分母の2は二項係数を仄めかしているのです。そもそも教科書に載っているとはいえ、微分法を用いた証明を可とするのはやはり怪しいところがあります。ここは、x^kを{(x-1)+1}^kと見ることで、二項係数を利用するというのが一番自然な流れではないでしょうか。そうすれば、大学側の想定した証明、すなわち分母の2の意味が見えてくるのではないでしょうか?和が0となるのに、わざわざ東大の教授らが意味もなく2で割るなんてことはそうそうないでしょう…。

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