問題
\(a, b\)を正の整数とする。
\((i)\) \(c = a + b, d =a^2-ab+b^2\)とおくとき、不等式\(\displaystyle{1 < \frac{c^2}{d} \leq 4}\)が成り立つことを示せ。
\((ii)\) \(a^3+b^3\)が素数の整数乗となる\(a, b\)をすべて求めよ。
方針
\((2)\)は\((1)\)をヒントにするのだが、適当に文字を使って、\(c = p^l, d = p^m\)などと置く。この発想が、難しい。
解答
\((i)\) 最初に\(c, d\)は正であることに注意する。\(c^2-d = (a+b)^2-(a^2-ab+b^2) = 3ab > 0\)であるから、\(\displaystyle{1 < \frac{c^2}{d}}\)が成り立つ。また、$$\begin{eqnarray}4d-c^2 & = & 4(a^2-ab+b^2)-(a+b)^2 \\ & = & 3a^2-6ab + 3b^2 \\ & = & 3(a-b)^2 \\ & \geq & 0\end{eqnarray}$$であるから、\(\displaystyle{\frac{c^2}{d}\leq 4}\)が成り立つ。
\((ii)\) \(a^3+b^3=cd\)が素数の整数乗となるとき、その値を\(p^k\)とする。ただし\(p\)は素数で、\(k\)は整数である。このとき、\(c = p^l, d = p^m, l+m=k\)という形になる。ただし、\(l, m\)は負でない整数である。\((i)\)の不等式から、$$1 < p^{2l-m}\leq 4$$となる。この不等式を満たす可能性があるのは、\(p = 2\)かつ\(2l-m = 1, 2\)のときか、\(p = 3\)かつ\(2l-m = 1\)のときしかない。したがって、いずれの場合も\(l = 0\)とはならない。ところで、\(d = (a+b)^2-3ab\)より、\(\displaystyle{ab = \frac{c^2-d}{3}}\)である。これと\(c = a+b\)から、\(a, b\)は二次方程式\(\displaystyle{t^2-ct + \frac{c^2-d}{3} = 0}\)の二つの解である。
\((a)\) \(p = 2\)かつ\(2l-m = 1\)のとき、\(c = 2^l, d = 2^m = 2^{2l-1}\)となり、\(a, b\)は二次方程式$$t^2-2^lt+\frac{2^{2l-1}}{3} = 0$$の二つの解である。この方程式は整数解を持たない。
\((b)\) \(p = 2\)かつ\(2l-m = 2\)のとき、\(c =2^l, d = 2^m = 2^{2l-2}\)となり、\(a, b\)は二次方程式$$t^2-2^lt+2^{2l-2} = 0$$の二つの解である。これは変形すると、$$(t-2^{l-1})^2=0$$となるから、\(a = b = 2^{l-1}\)である。
\((c)\) \(p = 3\)かつ\(2l-m = 1\)のとき、\(c = 3^l, d = 3^m = 3^{2l-1}\)となり、\(a, b\)は二次方程式$$t^2-3^lt + 2\cdot 3^{2l-2} = 0$$の二つの解である。これは変形すると、$$(t-3^{l-1})(t-2\cdot 3^{l-1}) = 0$$となるから、\((a, b) = (3^{l-1}, 2\cdot 3^{l-1}), (2\cdot 3^{l-1}, 3^{l-1})\)である。
以上、\((a), (b), (c)\)から求める\(a, b\)は\(l\)を\(1\)以上の整数として、\((a, b) = (2^{l-1}, 2^{l-1}), (3^{l-1}, 2\cdot 3^{l-1}), (2\cdot 3^{l-1}, 3^{l-1})\)となる。
解説
\((1)\)は単なる式変形なので、当然解けなくてはならない。
\((2)\)は手も足も出なかった人が大半だったことだろう。\((1)\)から、\(a^3+b^3 = cd\)で与えられていて、これが素数の整数乗になるのだから、\(c, d\)も素数の整数乗でなくてはならない。このときに適当な文字を持ち出して、解答のように\(c = p^l, d = p^m\)とすることがポイントで、そうすると\((1)\)で考えた不等式を用いて、\(l, m\)を決めることができる。ただし、\(l, m\)が決まった後の処理も決して簡単ではない。何の誘導もされていないのでここを自分の力で設定出来るかどうかで命運が分かれる。このように、難関大学の入試問題では、与えられた設定を式に直して計算すればおしまいという問題は少なく、どれだけ自分の力で設定出来るのかが大事になることが多い。
特に東京工業大学は昔からその傾向が強く、受験の世界でよく知られた有名事実を題材に、ひとひねり加えた問題が多く出題されている。このような問題への対策法としては、やはり普段から自分の手と頭を動かして、一つの問題に最後まで取り組むことが一番の近道になる。計算問題ばかりをいくら解いても数学の力は向上しない。過去問の演習に取り組む際も、「式が立ったから終わり」、「解答を読んで理解出来たから終わり」とするのではなく答えを出し切るところまでできるようにする必要がある。試験場で提出する答案には「式が立った。後は計算すれば答えが出る」と書くことは出来ない。普段の学習でこそ、数学は最後まで答えを出すことが重要である。
関連問題
1981年東京工業大学数学問題1 数列と極限、隠れた二進数
1986年東京工業大学数学問題1 整数と漸化式
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