[math]1970年東京大学理系数学問題1

問題

\(i\)を虚数単位とし\(\displaystyle a = \cos{\frac{\pi}{3}} + i\sin{\frac{\pi}{3}}\)とおく。また\(n\)はすべての自然数にわたって動くとする。このとき
\((1)\) \(a^n\)は何個の異なる値をとりうるか。
\((2)\) \(\displaystyle \frac{(1-a^n)(1-a^{2n})(1-a^{3n})(1-a^{4n})(1-a^{5n})}{(1-a)(1-a^2)(1-a^3)(1-a^4)(1-a^5)}\)の値を求めよ。

方針

一瞬ぎょっとするが、落ち着いて考えれば高々\(6\)通りを考えれば十分である。

解答

\((1)\) \(a\)を具体的に書くと、\(\displaystyle a = \frac{1+i\sqrt{3}}{2}\)である。de Moivreの定理から、$$\begin{eqnarray}a^2 & = & \cos{\frac{2}{3}\pi} + i\sin{\frac{2}{3}\pi} \\ & = & \frac{-1+i\sqrt{3}}{2} \\ a^3 & = & \cos{\pi} + i\sin{\pi} \\ & = & -1\end{eqnarray}$$である。すると、$$\begin{eqnarray}a^4 & = & (a^3)a \\ & = & -a \\ & = & \frac{-1-i\sqrt{3}}{2}\\ a^5 & = & (a^4)a \\ & = & -a^2 \\ & = & \frac{1-i\sqrt{3}} {2} \\ a^6 & = & (a^3)^2 \\ & = & (-1)^2 \\ & = & 1\end{eqnarray}$$である。これから、\(a^{6m+k} = a^6ma^k =a^k\ (m\in \mathbb{Z}, k = 0, 1, 2, 3, 4, 5) \)であることがわかる。以上より、\(a^n\)の取りうる値は\(\displaystyle 1, \frac{1+i\sqrt{3}}{2}, \frac{-1+i\sqrt{3}}{2}, -1, \frac{-1-i\sqrt{3}}{2}, \frac{1-i\sqrt{3}}{2}\)の\(\underline{6}\)個となる。

\((2)\) \((1)\)から\(n\)を\(6\)で割った余りで分類する。
\((i)\) \(n \equiv 0 \pmod 6\)のとき、\(a^n = 1\)であるから、与えられた式は\(0\)になる。
\((ii)\) \(n \equiv 1 \pmod 6\)のとき、\(a^n = a\)であるから、与えられた式は\(1\)になる。
\((iii)\) \(n\equiv 2 \pmod 6\)のとき、\(a^n = a^2\)であるから、\(a^{3n} = a^6 = 1\)となる。よって、与えられた式は\(0\)になる。
\((iv)\) \(n\equiv 3 \pmod 6\)のとき、\(a^n = a^3\)であるから、\(a^{2n} = a^6 = 1\)となる。よって、与えられた式は\(0\)になる。
\((v)\) \(n \equiv 4 \pmod 6\) のとき、\(a^n = a^4\)であるから、\(a^{3n} = a^{12} = 1\)となる。よって、与えられた式は\(0\)になる。
\((vi)\) \(n\equiv 5 \pmod 6\)のとき、\(a^n = a^5\)である。すると、$$\begin{eqnarray}a^{2n} & = & a^{10} \\ & = & a^4 \\ a^{3n} & = & a^{15} \\ & = & a^3 \\ a^{4n} & = & a^{20} \\ & = & a^2 \\ a^{5n} & = & a^{25} \\ & = & a\end{eqnarray}$$である。よって、与えられた式は\(1\)になる。

以上から、\(n\)を\(6\)で割った余りが\(0, 2, 3, 4\)のときは与えられた式は\(\underline{0}\)となり、それ以外(\(n\)を\(6\)で割った余りが\(1, 5\)のとき)は与えられた式は\(\underline{1}\)となる。

解説

\((1)\)は具体的に書きだしてみると、\(6\)を周期として\(a_n\)はが巡回することが分かる。

\((2)\) \((1)\)を使える事がわかる。合同式の表記について、例えば\(n \equiv 4 \pmod 6\)と書いたときは\(n\)を\(6\)で割った余りが\(4\)であることを表している。整数の問題や、この問題のように周期数列を扱うときに便利である。大学受験の答案で用いても全く問題ないので、習熟しておくとよい。

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