[math]1991年京都大学理系後期数学理学部専用問題

問題

整数を係数とする\(3\)次の多項式\(f(x)\)が次の条件\((*)\)を満たしている。
\((*)\) 任意の自然数\(n\)に対し\(f(n)\)は\(n(n+1)(n+2)\)で割り切れる。
このとき、ある整数\(a\)があって、\(f(x) = ax(x+1)(x+2)\)となることを示せ。

方針

「式が割り切れること」と「数が割り切れること」を混同してはいけない。

解答

\(f(x)\)を\(x(x+1)(x+2)\)で割った余りを\(bx^2+cx+d\)とおく。このとき\(f(x)\)は整数係数なので、整数\(a\)があって、$$f(x) = ax(x+1)(x+2) + bx^2+cx+d$$とおける。\(f(n)\)はどんな\(n\)についても\(n(n+1)(n+2)\)で割り切れるので、$$\frac{f(n)}{n(n+1)(n+2)} = a + \frac{bn^2+cn+d}{n(n+1)(n+2)}$$は任意の\(n\)に対して整数である。ところが、\(n\)が十分に大きいときに\(\displaystyle \frac{bn^2+cn+d}{n(n+1)(n+2)} \to 0\)であるから、十分大きな無限個の\(n\)に対して、\(bn^2+cn+d\)は常に\(0\)でなければならない。すなわち、\(b = c = d = 0\)である。よって、\(f(x) = ax(x+1)(x+2)\)となり、題意が成り立つ。

解説

\(f(x)\)が\(x(x+1)(x+2)\)で割り切れるというのは、文字通りある関数\(g(x)\)があり\(f(x)=x(x+1)(x+2)g(x)\)と書けることを意味する。それに対して\(f(n)\)が\(n(n+1)(n+2)\)で割り切れるというのは、\(f(x)=g(x)x(x+1)(x+2)\)と書けることとは意味が違う。例えば、\(f(x)=(x−1)(x−2)(x−3)+12\)は\(x(x+1)(x+2)\)で割り切れないが、\(f(1),f(2),f(3)\)はすべて\(1\cdot 2\cdot 3\)で割り切れる。この違いが分からないと出来たつもりで解答を書き上げてしまい、答案が返ってきたらほとんど点が取れていなかった、ということになってしまう。解答ではこの点を上手く回避するために、十分大きい\(n\)に対して\(\displaystyle \frac{bn^2+cn+d}{n(n+1)(n+2)}\)が\(1\)よりも小さくなり、整数でなくなることを用いている。巧妙な考え方だが、言われてみると当たり前である。理系で極限を学んだ人には意味もすっきり分かるのではないだろうか。京大や東工大など難関大学では、整数係数の多項式についての問題が散見される。慣れていないと中々手が出ない分野であるが、過去問等で十分演習を積むようにされたい。

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