[math]1997年京都大学理系後期数学問題4

問題

次の連立方程式\((*)\)を考える。$$(*)\begin{cases}y = 2x^2-1 \\ z = 2y^2-1\\ x = 2z^2-1 \end{cases}$$
\((1)\) \((x, y, z) = (a, b, c)\)が\((*)\)の実数解であるとき、\(\mid a\mid \leq 1, \mid b\mid \leq 1, \mid c\mid \leq 1\)であることを示せ。
\((2)\) \((*)\)は全部で\(8\)個の異なる実数解をもつことを示せ。

方針

\((1)\)が難しいが、色々な解き方のできる問題でもある。解答では背理法を用いてみる。

解答

\((1)\) 背理法で示す。\((*)\)が実数解\((a, b, c)\)をもつとき、$$\begin{cases}b = 2a^2-1 \\ c = 2b^2-1 \\ a = 2c^2-1\end{cases}$$である。\(\mid a\mid \geq 1\)とすると、\(b > 1\)であり、\(c > 1\)となる。つまり、\(a > 1\)である。\((*)\)から、$$\begin{eqnarray}a-1 & = & 2(c+1)(c-1) \\ & = & 2(c+1)\{2(b+1)(b-1)\} \\ & = & 4(c+1)(b+1)\{2(a+1)(a-1)\} \\ & = & 8(a+1)(b+1)(c+1)(a-1)\end{eqnarray}$$となるので、両辺を\(a-1 (\ne 0)\)で割って、$$1 = 8(a+1)(b+1)(c+1)$$となる。ところが\(a >1, b > 1, c > 1\)から\(8(a+1)(b+1)(c+1)\)は\(1\)よりも大きいので、矛盾する。したがって\(\mid a\mid \leq 1\)であり、このとき順に\(\mid b\mid \leq 1, \mid c\mid \leq 1\)となる。

\((2)\) \(x\)が決まると\(y\)が決まり、\(y\)が決まると\(z\)も決まる。したがって、\((*)\)を満たす\(x\)が\(8\)個あることを示せば良い。\((1)\)から\(\mid x\mid \leq 1\)なので、\(x = \cos{\theta}\ (0\leq \theta\leq pi)\)と置くことができる。すると、$$\begin{eqnarray}y & = & 2x^2-1 \\ & = & 2\cos^2{\theta}-1 \\ & = & \cos{2\theta}\end{eqnarray}$$となる。同様に計算すると、\(z = \cos{4\theta}, x = \cos{8\theta}\)となるので、\(\cos{\theta} = \cos{8\theta}\)である。これを満たす実数\(\theta\)は\(n\)を整数として$$\theta = \pm 8\theta + 2n\pi$$と表すことが出来る。\(0\leq \theta\leq \pi\)に注意すると、$$\theta = 0, \frac{2}{7}\pi, \frac{4}{7}\pi, \frac{6}{7}\pi, \frac{2}{9}\pi, \frac{4}{9}\pi, \frac{6}{9}\pi, \frac{8}{9}\pi$$であり、これらの\(\cos\)の値がすべて異なることはすぐに分かるから、\((*)\)は全部で異なる\(8\)個の実数解をもつ。

解説

\((1)\)が難しい。解答では方程式\((*)\)が自明な解\((x,y,z) = (1,1,1)\)を持つことに注意して、因子を括り出している。この式変形は、慣れていないときつい。\((1)\)は他にも色々な解き方がありとても良い練習になるので、色々試してみると勉強になる。例えば、双曲線関数を用いる方法もある。

別解

\((1)\) \(\mid a\mid > 1\)とすると、解答と同様に\(a > 1\)が言える。すると、\(\displaystyle a = \frac{e^x + e^{-x}}{2}\ (x > 0)\)とおける。ただし、\(e\)はネイピア数である。このとき、$$\begin{eqnarray}b & = & 2a^2-1 \\ & = & 2\cdot \frac{e^{2x} +2 + e^{-2x}}{4}-1\\ & = & \frac{e^{2x} + e^{-2x}}{2} \end{eqnarray}$$となる。同様の計算をして、\(\displaystyle c = \frac{e^{4x} + e^{-4x}}{2}, a = \frac{e^{8x} + e^{-8x}}{2}\)となるから、\(a\)が\((*)\)の実数解ならば、$$\frac{e^{x} + e^{-x}}{2} = \frac{e^{8x} + e^{-8x}}{2}$$である。ところが\(x > 0\)で\(\displaystyle \frac{e^x+e^{-x}}{2}\)は単調増加なので、この式を満たす\(x\)は存在しない。よって\((x, y, z) = (a, b, c)\)が\((*)\)の実数解であるならば、\(\mid a\mid \leq 1\)である。同様に、\(\mid b\mid \leq 1, \mid c\mid \leq 1\)となる。

双曲線関数については、双曲線関数リンクを参照。

\((2)\)は\((1)\)をヒントにして、\(x = \cos{\theta}\)と置く。不思議な問題だが、良問である。その他、方程式$$\begin{cases}y = \frac{1}{2}\left(x-\frac{1}{x}\right) \\ z = \frac{1}{2}\left(y-\frac{1}{y}\right) \\ x = \frac{1}{2}\left(z-\frac{1}{z}\right) \end{cases}$$をみたす相異なる実数解の個数を求める際に、\(\displaystyle x = \frac{1}{\tan{\theta}}\)と置くと上手くいくことを知っておくと、役に立つかもしれない。

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