[math][東京工業大学]2018年度前期東京工業大学数学問題2

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問題

次の問に答えよ。
\((1)\) \(35x + 91y + 65z = 3\)を満たす整数の組\((x, y, z)\)を一組求めよ。
\((2)\) \(35x + 91y + 65z = 3\)を満たす整数の組\((x, y, z)\)の中で\(x^2+y^2\)が最小となるもの、およびその最小値を求めよ。

方針

中国式剰余定理を題材にした問題である。与えられた式を\(5, 7, 13\)で割ったものを考えると、先が見えてくる。

解答

\((1)\) \(35 = 5\times7, 91 = 7\times 13, 65 = 13\times5\)である。したがって、\(35x + 91y + 65z = 3\)に対して、\(5, 7, 13\)での剰余を考えると、$$\begin{cases}y\equiv 3 \pmod{5} \\ 2z \equiv 3 \pmod{7} \\ 9x\equiv 3 \pmod{13} \end{cases}$$となる。この剰余式を解くと、順に\(y \equiv 3 \pmod{5}, z \equiv 5 \pmod{7}, x \equiv 9 \pmod{13}\)となる。したがって、\(p, q, r\)を整数として、$$\begin{cases}x = 13p+9 \\ y = 5q + 3 \\ z = 7r + 5\end{cases}$$とおける。これを\(35x + 91y + 65z = 3\)に代入すると、$$35(13p+9) + 91(5q + 3)+ 65(7r+5) = 3$$となり、整理すると、$$5\times7\times 13 (p+q+r) = -910 = -5\times 7\times 13\times 2$$となる。よって、\(p+q+r = -2\)である。これを満たす\(p, q, r\)として、適当に\(p = -1, q = -1, r = 0\)を取ることができて、その時\(\underline{x = -4, y = -2, z = 5}\)となる。これは\(35x + 91y + 65z = 3\)を満たす。

\((2)\) \((1)\)から、\(35x + 91y+65z = 3\)を満たす\((x, y, z)\)の組は、$$\begin{cases}x = 13p + 9 \\ y = 5q + 3 \\ z = 7r + 5 \\ p +q + r = -2\end{cases}$$とおける。\(p, q\)は整数を自由に動く事ができる(このとき\(r = -2-p-q\)と\(r\)は自由に動けない)ので、\(x^2+y^2\)を小さくするには、\(\mid x\mid, \mid y\mid\)をそれぞれ小さくすれば良い。$$\begin{eqnarray}x & = & \cdots, -17, -4, 9, 22, \cdots \\ y & = & \cdots, -7, -2, 3, 8, \cdots \end{eqnarray}$$であるから、\(x = -4, y = -2\ (p = -1, q = -1)\)のとき\(x^2+y^2\)は最小である。このとき、\(r = 0\)で、\(z = 5\)となる。よって、\(x^2+y^2\)が最小になるのは\(\underline{(x, y, z) = (-4, -2, 5)}\)のときで、\(x^2+y^2\)の最小値は\(\underline{20}\)となる

解説

日本では古来から百五減算という数遊びが知られている。これは、塵劫記という江戸時代の算術書に記載されたもので、次のような問題である。

\(3\)で割ると\(2\)あまり、\(5\)で割ると\(1\)あまり、\(7\)で割ると\(2\)余る一番小さい数は何か?

これには次のような巧妙な解法が知られている。\(70, 21, 15\)というマジックナンバーを考える。なぜこのような数を考えるかというと、$$\begin{cases}70\equiv 1 \pmod{3}\\ 21 \equiv 1 \pmod{5}\\ 15 \equiv 1\pmod{7}\end{cases}$$であるから、ある数\(x\)を\(3, 5, 7\)で割った余りを順に\(a, b, c\)とすると、$$70a + 21b + 15c$$は、\(3\)で割ると\(a\)あまり、\(5\)で割ると\(b\)あまり、\(7\)で割ると\(c\)あまる数を代表しているのである。これが\(3\times 5\times 7 = 105\)より大きい時は、\(105\)を引き、マイナスになっている時は\(105\)の整数倍を足せば良い。\(105\)を引くので百五減算という訳である。

上の問題の答えは、\(70\times 2 + 21\times 1 + 15\times 2 = 191\)として、これは\(105\)よりも大きいので、\(191-105 = 86\)となる。実際に\(86\)を\(3, 5, 7\)で割った確かめると良い。

以下が中国式剰余定理であり、この定理のおかげで百五減算や、上の東京工業大学の問題に解が存在することが保証されている。

\(p, q, r\)はどの\(2\)つをとっても互いに素な自然数として、\(a, b, c\)を任意の整数とする。このとき、$$\begin{eqnarray}x & \equiv& a \pmod{p} \\ y & \equiv & b \pmod{q} \\ z & \equiv & c \pmod{r} \end{eqnarray}$$を満たす整数\(x\)が、\(0\)から\(pqr-1\)の中に、ただ一つ存在する。

この定理は大学の群論で学ぶので、今はあまり気にしないでも問題ない。

関連問題

2000年京都大学後期理系数学問題3 \(ax+by=1\)を満たす整数(格子点)の存在

関連リンク

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