[math]1994年京都大学後期理系問題6

問題

\(n\)を自然数とし、\(\displaystyle I_n = \int_{1}^{e}{(\log{x})^ndx}\)とおく。
\((1)\) \(I_{n+1}\)を\(I_n\)を用いて表わせ。
\((2)\) すべての\(n\)に対して、\(\displaystyle \frac{e-1}{n+1}\leq I_n \leq \frac{(n+1)e+1}{(n+1)(n+2)}\)が成り立つことを示せ

方針

\((1)\) 部分積分法を用いる

\((2)\) \((1)\)の結果を利用する。

解答

\((1)\) 部分積分法により、$$\begin{eqnarray}I_{n+1} & = & \int_{1}^{e}{(x)^{\prime}(\log{x})^{n+1}dx} \\& = & \left[x(\log{x})^{n+1}\right]_{1}^{e} -\int_{1}^{e}{x\cdot (n+1)\cdot (\log{x})^n\cdot \frac{dx}{x}}\\ & =& e-(n+1)I_n\end{eqnarray}$$となる。よって、\(\underline{I_{n+1}=e-(n+1)I_n}\)となる。

\((2)\) \(\displaystyle I_1 = \int_{1}^{e}{\log{x}dx} = [x(\log{x}-1)]_{1}^{e} = 1\)である。\(1\leq x\leq e\)において\((\log{x})^{n+1}\leq (\log{x})^n\)であるから、\(I_{n+1}\leq I_n\)なので、\(I_n\)は非増加な数列である。したがって、すべての自然数\(n\)に対して\(I_n\leq I_1 = 1\)である。\(I_{n+1}\leq 1\)に\((1)\)の結果を代入すると、\(e-(n+1)I_n\leq 1\)となり、変形して\(\displaystyle \frac{e-1}{n+1}\leq I_n\)を得る。

これを用いると、\(\displaystyle \frac{e-1}{n+2}\leq I_{n+1} = e-(n+1)I_n\)であり、変形して\(\displaystyle I_n \leq \frac{(n+1)e-1}{(n+1)(n+2)}\)を得る。

解説

このように\(\log{x}\)の出てくる積分では\((x)^{\prime}=1\)が潜んでいると考え部分積分法を用いるのが常套手段である。\(\log{x}\)の積分もこの原理を用いており、$$\int{\log{x}dx} = \int{(x)^{\prime}\log{x}dx}$$としておいてから、部分積分法により$$x(\log{x})-\int{x\cdot \frac{1}{x}dx}$$としている訳である。

\((2)\)の不等式が問題で、左側が簡単そうなので先ずこれを示すことを目指してみる。示すべき不等式を逆に変形していくと、\(I_{n+1}\leq 1\)を示せば良いことが分かるので、すべての自然数\(n\)に対して\(I_n\leq 1\)が示せるかどうか考えてみる。\(I_n\)が減少数列であることはすぐに分かる(\(1\leq x\leq e\)において、\(0\leq \log{x}\leq 1\)に注意)が、これだけでは上手くいかない。もう一つ必要で、せっかく減少数列であることを示したのだから、\(I_1\)も求めてみる。すると、\(I_1=1\)が分かりめでたく\(I_n\leq 1\)が分かる。なお、\(I_0 = e-1\)であることに気がつくと、\((1)\)で求めた漸化式からも\(I_1=1\)が分かる。こちらの方が簡単かも知れない。

右側の不等式は、左側の不等式を用いる。計算も難しくない。この問題のように、何かの\(n\)乗の積分についての不等式を自分で評価しなくてはいけない問題では、\(1: \)「初項の値は何か」、\(2: \)「積分区間における被積分関数の値はどうなっているか」\(3: \)「増加数列なのか減少数列なのか」がポイントとなる。評価に慣れた人にとっても、簡単な問題ではないが、それでも京大後期の問題としては何とか完答したい一問である。

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コメント

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