[math]2000年京都大学前期理系数学問題5

問題

数列\(\{c_n\}\)を次の式で定める。$$c_n = (n+1)\int_{0}^{1}{x^n\cos{\pi x}dx}\ (n=1, 2, , \cdots)$$このとき、
\((1)\) \(c_n\)と\(c_{n+2}\)の関係を求めよ。
\((2)\) \(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{c_n}\)を求めよ。
\((3)\) \((2)\)を求めた極限値を\(c\)とするとき、\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\frac{c_{n+1}-c}{c_n-c}}\)を求めよ。

方針

\((1)\) 部分積分法を用いる。
\((2)\) \((1)\)をヒントに、はさみうちの原理を用いる。

解答

\((1)\) 部分積分法を繰り返し用いて、$$\begin{eqnarray}c_{n+2} & = & (n+3)\int_{0}^{1}{x^{n+2}\cos{\pi x}dx} \\ & = & (n+3)\left[x^{n+2}\cdot \frac{\sin{\pi x}}{\pi}\right]_{0}^{1}-(n+3)\int_{0}^{1}{(n+2)x^{n+1}\cdot \frac{\sin{\pi x}}{\pi}dx}\\ & = & -\frac{(n+3)(n+2)}{\pi}\int_{0}^{1}{x^{n+1}\sin{\pi x}dx} \\ & = & -\frac{(n+3)(n+2)}{\pi}\left(\left[x^{n+1}\cdot \frac{-\cos{\pi x}}{\pi}\right]_{0}^{1}-\int_{0}^{1}{(n+1)x^n\cdot \frac{-\cos{\pi x}}{\pi}dx}\right) \\ & = & -\frac{(n+3)(n+2)}{\pi}\left(\frac{1+c_n}{\pi}\right) \\ & = & -\frac{(n+3)(n+2)(1+c_n)}{{\pi}^2}\end{eqnarray}$$である。よって、\(\displaystyle \underline{c_{n+2} = -\frac{(n+3)(n+2)(1+c_n)}{{\pi}^2}}\)となる。

\((2)\) \(-1\leq \cos{\pi x}\leq 1\)であるから、\(0\leq x\leq 1\)において、 \(-x^n\leq x^n\cos{\pi x}\leq x^n\)である。この不等式を\(0\)から\(1\)まで積分して、$$-\frac{1}{n+1}\leq \int_{0}^{1}{x^n\cos{\pi x}dx}\leq \frac{1}{n+1}$$である。したがって、\(-1\leq c_n\leq 1\)となる。これより\(-1\leq c_{n+2}\leq 1\)でもある。\((1)\)の結果を代入して、\(\displaystyle -1\leq -\frac{(n+3)(n+2)(1+c_n)}{{\pi}^2}\leq 1\)である。変形して、$$-\frac{{\pi}^2}{(n+3)(n+2)}\leq 1+c_n\leq \frac{{\pi}^2}{(n+3)(n+2)} $$となり、最左辺と最右辺は\(n\to\infty\)で\(0\)に収束するので、\(\displaystyle \underline{\lim_{n\to\infty}{c_n} = -1}\)となる。

\((3)\) \((1)\)の漸化式と\(c=-1\)より、$$\begin{eqnarray}\frac{c_{n+1}-c}{c_n-c} & = & \frac{c_{n+1}+1}{c_n+1} \\ & = & -\frac{{\pi}^2c_{n+3}}{(n+4)(n+3)}\cdot -\frac{(n+3)(n+2)}{{\pi}^2c_{n+2}} \\ & = & \frac{c_{n+3}}{c_{n+2}}\cdot \frac{n+2}{n+4} \\ & \to & \frac{-1}{-1}\cdot 1\ (n\to\infty) \\ & = & 1\end{eqnarray}$$となる。求める答えは\(\underline{1}\)である。

解説

\((1)\)は計算ミスをしやすい。慎重にやらないと、\((2)\)以降がすべて零点になってしまう。部分積分法を何回か繰り返す。

\((2)\)がとても難しい。普通の問題だと\((1)\)で導いた漸化式を解いて極限を求めるという流れになるが、どう考えても\((1)\)の漸化式を解くことは出来ない。発想を転換して、\(c_n\)を不等式で評価するしかない。比較的簡単に\(-1\leq c_n\leq 1\)が分かるので、ここで\((1)\)で求めた漸化式を使うことになる。後ははさみうちの原理でいけるが、それにしても\((1)\)の漸化式に固執すると到底手も足も出なくなる。積分の漸化式では被積分関数の評価が大事である。漸化式ばかりを見ていても極限を求めることは難しい。さすが京都大学という感じの問題である。

\((3)\)の答えは当然\(1\)になるが、きちんと示そうとするとここでも\((1)\)の漸化式を使わなくてはいけない。

実は、次の定理がよく知られている。

実数値をとる連続関数\(f(x)\)に対して、\(\displaystyle n\int_{0}^{1}{x^nf(x)dx}\)は\(n\to \infty\)で\(f(1)\)に収束する。

大学院の入試問題でよく出題されるが、\(f^{\prime}(x)\)が存在し連続な場合は大学入試でもよく出題される。証明は比較的簡単で、部分積分法により$$\begin{eqnarray}n\int_{0}^{1}{x^nf(x)dx} & = & n\left[\frac{x^{n+1}}{n+1}f(x)\right]_{0}^{1} -n\int_{0}^{1}{\frac{x^{n+1}}{n+1}f^{\prime}(x)dx} \\ & = & \frac{nf(1)}{n+1}-\frac{n}{n+1}\int_{0}^{1}{x^{n+1}f^{\prime}(x)dx}\end{eqnarray}$$となる。\(f^{\prime}(x)\)は連続なので、\(0\leq x\leq 1\)で最小値と最大値が存在し、それぞれ\(m, M\)とすると、\(m\leq f^{\prime}(x)\leq M\)であり、これから\(mx^{n+1}\leq x^{n+1}f^{\prime}(x)\leq Mx^{n+1}\)である。\(0\)から\(1\)まで積分して、$$\frac{m}{n+2}\leq \int_{0}^{1}{x^{n+1}f^{\prime}(x)dx}\leq \frac{M}{n+2}$$となり、はさみうちの原理から\(\displaystyle \lim_{n\to \infty}{\int_{0}^{1}{x^{n+1}f^{\prime}(x)dx}} = 0\)である。以上から、$$\begin{eqnarray}n\int_{0}^{1}{x^nf(x)dx} & = & \frac{n}{n+1}f(1)-\frac{n}{n+1}\int_{0}^{1}{x^{n+1}f^{\prime}(x)dx} \\ & \to & 1\cdot f(1)-1\cdot 0\ (n\to \infty)\\ & = & f(1)\end{eqnarray}$$となる。

上の問題でもこの考え方を用いて問題を解決することが出来る。証明がそれほど難しくない割には有用な知識(入試問題の誘導に無関係に極限が一瞬で分かる)なので、頭の片隅に入れておくと良い。

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