[math]2018年東京工業大学数学問題3

問題

方程式$$e^x(1-\sin{x}) = 1$$について、次の問に答えよ。
\((1)\) この方程式は負の実数解をもたないことを示せ。また、正の実数解を無限個もつことを示せ。
\((2)\) この方程式の正の実数解を小さい順から順に並べて\(a_1, a_2, a_3, \cdots\)とし、\(\displaystyle S_n = \sum_{k=1}^{n}{a_k}\)とおく。このとき極限値\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\frac{S_n}{n^2}}\)を求めよ。

方針

\((1)\)はグラフを描けば当たり前だが、きちんと論証する。

解答

\((1)\) $$f(x) = e^x(1-\sin{x}) – 1$$とする。$$\begin{eqnarray}f^{\prime}(x) & = & e^x(1-\sin{x}-\cos{x}) \\ & = & e^{x}\left(1-\sqrt{2}\sin{\left(x + \frac{\pi}{4}\right)}\right)\end{eqnarray}$$であるから、\(m\)を整数として、\(f^{\prime}(x)\)は\(\displaystyle x + \frac{\pi}{4} = 2m\pi + \frac{\pi}{4}, 2m\pi +\frac{3}{4}\pi\)の時に極値を取る。書き直すと、\(\displaystyle x = 2m\pi, 2m\pi + \frac{\pi}{2}\)の時に極値を取る。\(f^{\prime}(x)\)は\(x = 2m\pi\)の前後で符号を正から負に変え、\(\displaystyle x = 2m\pi + \frac{\pi}{2}\)の前後で符号を負から正に変えるので、\(\displaystyle f\left(2m\pi\right)\)は極大値、\(\displaystyle f\left(2m\pi + \frac{\pi}{2}\right)\)は極小値である。$$\begin{eqnarray}f\left(2m\pi\right) & = & e^{2m\pi}-1 \\ f\left(2m\pi + \frac{\pi}{2}\right) & = & -1\end{eqnarray}$$であるから、\(m\)が負の時は極大値\(e^{2m\pi}-1 < 0\)で極小値\(-1\)も負となるので、\(f(x) = 0\)は実数解をもたない。\(m\)が非負の時は極大値\(e^{2m\pi}-1 \geq 0\)で(等号が成立するのは\(m=0\)の時だけ)、極小値\(-1\)は負なので、\(f(x) = 0\)は無限個の実数解をもつ。

\((2)\) \(m > 0\)の時\(\displaystyle f\left(2m\pi + \pi\right) = e^{(2m+1)\pi}-1 > 0\)であるから、\((1)\)と合わせて、\(m\)を非負整数として、$$2m\pi+\frac{\pi}{2} < a_{2m+1} < 2m\pi+\pi \\ 2m\pi+2\pi < a_{2m+2} < 2m\pi+2\pi+\frac{\pi}{2}$$が成り立つ。

\begin{array}{|c|*7{c|}}\hline x & 0 & \cdots & \frac{\pi}{2} & \cdots & 2\pi & \cdots & \frac{5}{2}\pi \\ \hline f^{\prime}(x) & 0 & – & 0 & + & 0 & -& 0 \\ \hline f(x) & 0 & \searrow & -1 & \nearrow &e^{2\pi}-1 & \searrow & -1 \\ \hline \end{array}

まとめると、$$\left(k-\frac{1}{2}\right)\pi < a_k < \left(k+\frac{1}{2}\right)\pi$$である。\(k = 1, 2, 3, \cdots, n\)として、辺ごとに足すと、$$\begin{eqnarray} \sum_{k=1}^{n}{\left(k-\frac{1}{2}\right)\pi} < S_n < \sum_{k=1}^{n}{\left(k+\frac{1}{2}\right)\pi} \end{eqnarray}$$となる。ここで、$$\begin{eqnarray}\sum_{k=1}^{n}{\left(k-\frac{1}{2}\right)\pi} & = & \pi \frac{n(n+1)}{2}- \frac{n\pi}{2} \\ \sum_{k=1}^{n}{\left(k+\frac{1}{2}\right)\pi} & = & \pi \frac{n(n+1)}{2}+ \frac{n\pi}{2} \end{eqnarray}$$であるから、$$\frac{n+1}{2n}\pi -\frac{1}{2n} < \frac{S_n}{n^2} < \frac{(n+1)\pi}{2n} + \frac{1}{2n}$$である。はさみうちの原理から、\(\displaystyle \underline{\lim_{n\to\infty}{\frac{S_n}{n^2}} = \frac{\pi}{2}}\)となる。

解説

\((1)\)はグラフを描いて説明、でも良いかも知れないが、\(y = e^{-x}\)や\(y = 1-\sin{x}\)などは我々の親しみのある関数で、単純なケースならば凹凸など細かい点は問題にならないが、微妙なケースもあるので数式できっちりと示すのが安全だろう。

\((2)\) 偶数奇数に分けて考えても良いし、\(n^2\)で割るので解答のように大雑把な評価でも良い。

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