[math]1972年東京医科歯科大学数学問題

問題

\(\displaystyle x_n = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\sin^{n}{\theta}d\theta}\ (n = 0, 1, 2, \cdots)\)のとき、次の問に答えよ。
\((1)\) \(\displaystyle x_n = \frac{n-1}{n}x_{n-2}\)であることを示せ
\((2)\) \(nx_nx_{n-1}\)の値を求めよ。
\((3)\) 数列\(\{x_n\}\)は減少数列であることを示せ。
\((4)\) \(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{n{x_n}^2}\)を求めよ。

方針

\((1)\)は部分積分法を用いる。

解答

\((1)\) 部分積分法により、\(n \geq 2\)の時、$$\begin{eqnarray}x_n & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{(-\cos{\theta})^{\prime}\sin^{n-1}{\theta}d\theta}\\ & = & [-\cos{\theta}\sin^{n-1}{\theta}]_{0}^{\frac{\pi}{2}}-\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{(-\cos{\theta})(n-1)\sin^{n-2}{\theta}\cos{\theta}d\theta}\\ & = & (n-1)\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\cos^2{\theta}\sin^{n-2}{\theta}d\theta}\\ & = & (n-1)\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{(1-\sin^2{\theta})\sin^{n-2}{\theta}d\theta} \\ & = & (n-1)(x_{n-2}-x_n)\end{eqnarray}$$である。これを整理すると\(\displaystyle x_n = \frac{n-1}{n}x_{n-2}\)となる。

\((2)\) \(\displaystyle x_0 = \frac{\pi}{2}, x_1 = \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{\sin{\theta}d\theta} = 1\)に注意する。\((1)\)の関係式の両辺に\(nx_{n-1}\)を掛けると$$nx_nx_{n-1}=(n-1)x_{n-1}x_{n-2}\ (n\geq 2)$$が成立する。したがって、数列\(\{nx_nx_{n-1}\}\)は定数列である。これより、\(\displaystyle nx_nx_{n-1}=1\cdot x_1\cdot x_0 =\underline{ \frac{\pi}{2}}\)となる。

\((3)\) \(\displaystyle 0\leq \theta\leq \frac{\pi}{2}\)において\(0\leq \sin{\theta}\leq 1\)であるから、この範囲で\(\sin^{n}{\theta}\leq \sin^{n-1}{\theta}\)である。この不等式を\(0\)から\(\displaystyle \frac{\pi}{2}\)まで積分して、\(x_n \leq x_{n-1}\)を得る。よって、数列\(\{x_n\}\)は減少数列である。

\((4)\) \((2)\)から\(\displaystyle nx_nx_{n-1} = \frac{\pi}{2}\)であるから、変形して\(\displaystyle n{x_n}^2 = \frac{\pi}{2}\frac{x_n}{x_{n-1}}\)となる。ここで、すべての\(n \geq 0\)に対して\(x_n > 0\)であることに注意する。\((3)\)から$$x_{n+1}\leq x_n\leq x_{n-1}$$であるから、\(x_{n-1} > 0\)で割って、$$\frac{x_{n+1}}{x_{n-1}}\leq \frac{x_n}{x_{n-1}}\leq 1$$である。ここで\((1)\)から\(\displaystyle x_{n+1} = \frac{n}{n+1}x_n\)であるから、\(\displaystyle \frac{x_{n+1}}{x_{n-1}} = \frac{n}{n+1}\)である。これを上の式に代入すると、$$\frac{n}{n+1}\leq \frac{x_n}{x_{n-1}}\leq 1$$である。したがってはさみうちの原理から\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\frac{x_n}{x_{n-1}}} = 1\)となる。なので、\(\displaystyle n{x_n}^2 = \frac{\pi}{2}\cdot \frac{x_n}{x_{n-1}}\)から、\(\displaystyle \underline{\lim_{n\to\infty}{n{x_n}^2} = \frac{\pi}{2}}\)となる。

解説

受験数学で現れる\((f(x))^{n}\)の積分についてはほとんどが部分積分法を行うことにより漸化式を得ることが出来る。例外は\(f(x) = \tan{x}\)の場合であるが、機会があれば取り上げる。この問題の(1)も、\(\sin^n{\theta}\)のうち一つ借りてきて、\((-\cos{\theta})^{\prime}=\sin{\theta}\)であることを利用して、漸化式を作っている。慣れていないと中々難しいかもしれないが頻出パターンなので身につけると良い。

\((2)\)は当然\((1)\)を利用して、上手く定数列の形を作ることが出来る。

\((3)\)も、積分の中身を評価すればすぐにわかる。

\((4)\) 先ず、\((1)\)を利用して取りあえず求める\(n{x_n}^2\)を無理矢理作り出してしまう。すると、求めるのは\(\displaystyle \frac{x_n}{x_{n-1}}\)の極限であることに気がつく。\((3)\)より\(x_{n+1}\leq x_n\leq x_{n-1}\)だから、上手く\(\displaystyle \frac{x_n}{x_{n-1}}\)をあぶり出すことができそうである。両辺を\(x_{n-1}\)で割っているが、\(\displaystyle 0\leq \theta\leq \frac{\pi}{2}\)において、\(0\leq \sin{\theta}\leq 1\)で常には等号が成立しないので、積分すると\(x_n > 0\)である。残りは再び\((1)\)を利用してはさみうちの原理から\(\displaystyle \frac{x_n}{x_{n-1}}\)がわかる。

以上が上の解答の大まかな流れで、数学の問題では今ある関係式から求める関係式を作り出していくよりも、求める関係式を変形していまある関係式を利用出来る形にする方が簡単である。以前も触れたとおり、積分の漸化式では以下がポイントとなる。

1:「初項の値は何か」、2:「積分区間における被積分関数の値はどうなっているか」3:「増加数列なのか減少数列なのか」がポイントとなる。

https://denovo2021.com/2021/12/31/math1994%e5%b9%b4%e4%ba%ac%e9%83%bd%e5%a4%a7%e5%ad%a6%e5%be%8c%e6%9c%9f%e7%90%86%e7%b3%bb%e5%95%8f%e9%a1%8c6/

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コメント

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