問題
\((1)\) 定積分\(\displaystyle \int_{0}^{\pi}{e^{-x}\sin{x}dx}\)を求めよ。
\((2)\) 極限値\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\int_{0}^{n\pi}{e^{-x}\mid \sin{x}\mid dx}}\)を求めよ。
方針
部分積分法でも良いが、計算ミスしやすいので、他の手法も身につけると良い。
解答
\((1)\) $$\begin{eqnarray}(e^{-x}\sin{x})^{\prime} & = & e^{-x}(-\sin{x}+\cos{x})\\ (e^{-x}\cos{x})^{\prime} & = & e^{-x}(-\cos{x}-\sin{x}) \end{eqnarray}$$の和を作り、\(2\)で割ると、$$e^{-x}\sin{x} = -\frac{1}{2}((e^{-x}\sin{x})^{\prime} + (e^{-x}\cos{x})^{\prime})$$となる。これを\(0\)から\(\pi\)まで積分して、$$\begin{eqnarray}\int_{0}^{\pi}{e^{-x}\sin{x}dx} & = & -\frac{1}{2}[e^{-x}\sin{x} + e^{-x}\cos{x}]_{0}^{\pi}\\ & = & -\frac{1}{2}(-e^{-\pi}-1) \\ & = & \frac{1}{2}(e^{-\pi}+1)\end{eqnarray}$$となる。答えは\(\displaystyle \underline{\frac{1}{2}(e^{-\pi}+1)}\)である。
\((2)\) \(\displaystyle \int_{0}^{n\pi}{e^{-x}\mid \sin{x}\mid dx} = \sum_{k=1}^{n}{\left(\int_{(k-1)\pi}^{k\pi}{e^{-x}\mid \sin{x}\mid dx}\right)}\)である。区間\((k-1)\pi\leq x\leq k\pi\)において\(\mid \sin{x}\mid = (-1)^{k-1}\sin{x}\)であるから、$$\begin{eqnarray}\int_{(k-1)\pi}^{k\pi}{e^{-x}\mid \sin{x}\mid dx} & = & (-1)^{k-1}\int_{(k-1)\pi}^{k\pi}{e^{-x}\sin{x}dx} \\ & = & (-1)^{k-1}\left[-\frac{e^{-x}}{2}(\sin{x}+\cos{x})\right]_{(k-1)\pi}^{k\pi}\end{eqnarray}$$であるが、整数\(m\)に対して\(\sin{m\pi} = 0, \cos{m\pi} = (-1)^m\)だから、$$\begin{eqnarray} & = & \frac{(-1)^{k}}{2}(e^{-k\pi}(-1)^{k}-e^{-(k-1)\pi}(-1)^{k-1}) \\ & = & \frac{1}{2}(e^{-k\pi}+e^{-(k-1)\pi}) \\ & = & \frac{1+e^{\pi}}{2}\cdot e^{-k\pi}\end{eqnarray}$$となる。したがって、$$\begin{eqnarray}\int_{0}^{n\pi}{e^{-x}\mid \sin{x}\mid dx} & = & \frac{1+e^{\pi}}{2}\sum_{k=1}^{n}{e^{-k\pi}}\\ & = & \frac{1+e^{\pi}}{2}\cdot e^{-\pi}\cdot \frac{1-e^{-n\pi}}{1-e^{-\pi}}\end{eqnarray}$$である。\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{(1-e^{-n\pi})} = 1\)だから、求める極限は\(\displaystyle \underline{\frac{1+e^{-\pi}}{2(1-e^{-\pi})}}\)となる。
解説
\((1)\)は部分積分を繰り返しても良いが、部分積分を何回もするとマイナスなどの符号でミスをしやすくなる。特に\(\sin{2x}\)などとなっているとミスが増える。解答の方法で圧倒的に計算ミスを減らすことが出来、また暗記も必要ない。一回一回微分を行って式を作れば良いだけである。\((2)\)が勝負所で、\((1)\)を利用するが、そのままでは絶対値がついていてどうにもならない。積分では区間を分割できるので、符号が一定になる区間を選んでから積分を実行する。積分を実行して和を計算すれば良い。この発想は意外に重要で、最初の一手が思い浮かばないで苦しんだ受験生も多かったかも知れない。
関連問題
1972年東京医科歯科大学数学問題 部分積分法と積分の漸化式
2001年度京都大学理系数学6 極限、積分
2005年前期東京大学理系数学問題1 微分と数列、\((-1)^n\)の現れる漸化式
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