[math]1994年東京大学前期理系数学問題2

問題

\(\displaystyle a = \sin^2{\frac{\pi}{5}}, b = \sin^2{\frac{2\pi}{5}}\)とおく。このとき、以下のことが成り立つことを示せ。
\((1)\) \(a+b\)および\(ab\)は有理数である。
\((2)\) 任意の自然数\(n\)に対し\((a^{-n}+b^{-n})(a+b)^n\)は整数である。

方針

\((1)\)が難しい。直接\(a, b\)を求める必要がある。

解答

\((1)\) \(\displaystyle \theta = \frac{\pi}{5}\)とする。\(5\theta = \pi\)を変形して、\(3\theta = \pi-2\theta\)である。したがって、\(\sin{2\theta} = \sin{3\theta}\)である。三角関数の二倍角、三倍角の公式から、\(3\sin{\theta}-4\sin^3{\theta} = 2\sin{\theta}\cos{\theta}\)となる。両辺を\(\sin{\theta}(\ne 0)\)で割って、整理すると\(4\cos^2{\theta}-2\cos{\theta}-1 = 0\)となる。\(\cos{\theta} > 0\)であるから、\(\displaystyle \cos{\theta} = \frac{1+\sqrt{5}}{4}\)となる。以上から、$$\begin{eqnarray}a & = & \sin^2{\theta} \\ & = & 1-\cos^2{\theta} \\ & = & 1-\left(\frac{1+\sqrt{5}}{4}\right)^2 \\ & = & \frac{5-\sqrt{5}}{8} \\ b & = & \sin^2{2\theta} \\ & = & 4\sin^2{\theta}\cos^2{\theta} \\ & = & 4\cdot \frac{5-\sqrt{5}}{8}\cdot \left(\frac{1+\sqrt{5}}{4}\right)^2 \\ & = & \frac{5+\sqrt{5}}{8}\end{eqnarray}$$となる。これから\(\displaystyle a+b = \frac{5}{4}, ab = \frac{5}{16}\)となり、確かにこれらは有理数である。

\((2)\) \(c_n = (a^{-n}+b^{-n})(a+b)^n\)とおくと、\((1)\)から$$\begin{eqnarray}c_n & = & \left(\frac{1}{a^n}+\frac{1}{b^n}\right)(a+b)^n \\ & = & \frac{a^n+b^n}{a^nb^n}(a+b)^n \\ & = & (a^n+b^n)\left(\frac{a+b}{ab}\right)^n \\ & = & 4^n(a^n+b^n) \\ & = & (4a)^n+(4b)^n \\ & = & \left(\frac{5-\sqrt{5}}{2}\right)^n + \left(\frac{5+\sqrt{5}}{2}\right)^n\end{eqnarray}$$となる。これを用いると、\(c_1 = 5, c_2 = 15\)である。今、漸化式\(d_{n+2} = 5d_{n+1}-5d_n, d_1 = 5, d_2 = 15\)で定義される数列\(\{d_n\}\)を考えると、帰納的に\(d_n\)は整数であり、特性方程式\(t^2=5t-5\)の解が\(\displaystyle \alpha = \frac{5-\sqrt{5}}{2}, \beta = \frac{5+\sqrt{5}}{2}\)であるから、定数\(p, q\)を用いて\(d_n = p{\alpha}^{n-1} + q{\beta}^{n-1}\)とおける。したがって、$$\begin{cases}d_1 = p+q = 5\\ d_2 = p\alpha+q\beta = 15\end{cases}$$となり、これを解くと\(p = \alpha, q = \beta\)となる。これより、\(\displaystyle d_n = \left(\frac{5-\sqrt{5}}{2}\right)^n+\left(\frac{5+\sqrt{5}}{2}\right)^n\)となり、\(d_n = c_n\)である。よって、\(c_n\)は整数である。

解説

\((1)\)から躓いてしまった受験生が多かったかもしれない。\(\displaystyle \sin{\frac{\pi}{5}}\)や\(\displaystyle \sin{\frac{2\pi}{5}}\)は色々な求め方がある。初等幾何、ベクトル、あるいは解答のような三角関数の式変形だけからなど。どれか一つの方法で求めることができれば十分であるが。頂角が\(36^\circ\)の二等辺三角形とその内部に相似な三角形を書いて求める方法が良く知られている。

二等辺三角形の内部の二等辺三角形

すなわち、上の二等辺三角形\(ABC\)(角\(BAC = 36^\circ, AB = AC\))で、\(AB = 1, BC = x\)すると、角\(ABC\)と\(ACB\)はどちらも\(72^\circ\)になる。図のように、三角形\(ABC\)の内部に\(\ABC)に相似な三角形\(CDB\)を取る。すると、角\(DCA = DAC = 36^\circ\)となり、三角形\(DCA\)は二等辺三角形で、辺\(DA = x\)となる。これより\(DB = 1-x\)となり、三角形の相似から$$1:x = x:1-x$$となる。これを解くと\(\displaystyle x = \frac{-1+\sqrt{5}}{2}\)となる(\(x > 0\)に注意する)。これから、$$\begin{eqnarray}\cos{\angle{ABC}} & = \cos{72^\circ} \\ & = & \frac{x}{2} \\ & = & \frac{-1+\sqrt{5}}{4} & \end{eqnarray}$$がわかり、後は簡単に\(\sin{36^\circ}, \sin{72^\circ}\)などを求めることができる。この方法も覚えておくと良い。

\((2)\) 少し計算すると、\(\displaystyle c_n = \left(\frac{5-\sqrt{5}}{2}\right)^n + \left(\frac{5+\sqrt{5}}{2}\right)^n\)となることが分かる。この形にしてしまえば後は何をしても簡単である。二項定理で展開して\(c_n\)が整数になることを示しても良いし、帰納法でも良い。解答では少し巧妙だが、\(\displaystyle \alpha = \frac{5-\sqrt{5}}{2}, \beta = \frac{5+\sqrt{5}}{2}\)としたとき、\(\alpha+\beta= 5, \alpha\beta = 5\)となることから、\(c_n\)が漸化式\(c_{n+2} = 5c_{n+1}-5c_n\)を満たすのではないかと当たりを付けている。特性方程式の普段利用している性質を逆に利用したわけである。なお、一般に定数\(p, q\)を用いて数列\(x_n\)が\(x_n = p{\alpha}^n+q{\beta}^n\)と表されるのならば、この数列は$$x_{n+2}-(\alpha+\beta)x_{n+1}+\alpha\beta x_n = 0$$を満たす。普段特性方程式を解くときのことを思い返してみると自然だが、試験場で思い出すのは大変なのかも知れない。

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