[math]2004年東京医科歯科大学前期数学問題1

問題

次の条件\((A), (B)\)を満たす関数\(f_n(x) (n=1, 2, 3, \cdots)\)を考える。
\((A)\) \(f_n(x)\)は\(x\)の\(n\)次式で表される。
\((B)\) 任意の実数\(\theta\)に対して次式が成立する。$$f_n(2\cos{\theta})\sin{\theta} = \sin{(n+1)\theta}$$このとき以下の問に答えよ。
\((1)\) \(f_1(x), f_2(x)\)を求めよ。
\((2)\) 次の極限値を求めよ。ただし\(k\)は正の定数とする。$$\lim_{\theta\to0}{\frac{\sin{k\theta}}{\sin{\theta}}}$$
\((3)\) \(f_n(2)\)を求めよ。
\((4)\) 整式\(f_n(x)\)を\(x^2-3x+2\)で割ったときの余りが\(ax-25\)のとき、次数\(n\)および定数\(a\)を求めよ。

方針

丁寧な誘導があるので、従うのが良い。

解答

\((1)\) 条件\((B)\)から\(f_1(2\cos{\theta})\sin{\theta} = \sin{2\theta}=2\sin{\theta}\cos{\theta}\)である。任意の実数\(\theta\)に対してこれが成り立つので、\(\underline{f_1(x) = x}\)である。同様に条件\((B)\)から\(f_2(2\cos{\theta})\sin{\theta} = \sin{3\theta} = \sin{\theta}(4\cos^2{\theta}-1)\)である。任意の実数\(\theta\)に対してこれが成り立つので、\(\underline{f_2(x) = x^2-1}\)である。

\((2)\) 求める極限値は、$$\begin{eqnarray}\lim_{\theta \to 0}{\frac{\sin{k\theta}}{\sin{\theta}}} & = & \lim_{\theta\to 0}{\left(\frac{\sin{k\theta}}{k\theta}\cdot \frac{\theta}{\sin{\theta}}\cdot k\right)} \\ & \to & \frac{1}{1}\cdot k (\theta \to 0)\\ & = & k\end{eqnarray}$$となる。答えは\(\underline{k}\)である。

\((3)\) 条件\((B)\)から\(\sin{\theta}\ne 0\)のとき\(\displaystyle f_n(2\cos{\theta}) = \frac{\sin{(n+1)\theta}}{\sin{\theta}}\)であるが、この式で\(\theta \to 0\)とすることで、\((2)\)から\(\underline{f_n(2) = n+1}\)であることがわかる。

\((4)\) $$f_n(x) = (x^2-3x+2)g_n(x)+ax-25 \tag{a}$$と置く。式\((a)\)で\(x=2\)として、\((3)\)から\(f_n(2) = 2a-25 = n+1\)である。また条件\((B)\)で\(\displaystyle \theta = \frac{\pi}{3}\)とすると、\(\displaystyle f_n(1)\cdot \frac{\sqrt{3}}{2} = \sin{\frac{n+1}{3}\pi}\)であるから、式\((a)\)で\(x=1\)として\(\displaystyle \frac{2}{\sqrt{3}}\cdot \sin{\frac{n+1}{3}\pi} = a-25\)である。まとめると、$$\begin{cases}2a = n+26\\ a = \frac{2}{\sqrt{3}}\sin{\frac{n+1}{3}\pi}+25\end{cases}$$となる。\(a\)を消去すると、$$\frac{n+26}{2} = \frac{2}{\sqrt{3}}\cdot \sin{\frac{n+1}{3}\pi} + 25 \tag{b}$$である。ここで、\(n = 1, 2, 3, \cdots\)のとき$$\frac{2}{\sqrt{3}}\cdot \sin{\frac{n+1}{3}\pi} = 1, 0, -1, -1, 0, 1, \cdots $$となり\(1, 0, -1, -1, 0, 1\)を繰り返す。詳しく言うと、\(\displaystyle \frac{2}{\sqrt{3}}\cdot \sin{\frac{n+1}{3}\pi}\)の値は、\(n\)を\(6\)で割った余りが\(1, 0\)のときには\(1\)、\(n\)を\(6\)で割った余りが\(2, 4\)のときには\(0\)、\(n\)を\(6\)で割った余りが\(3, 4\)のときには\(-1\)となる。
\((a)\) \(\displaystyle \frac{2}{\sqrt{3}}\cdot \sin{\frac{n+1}{3}\pi} = 1\)のとき、\(n\equiv 1, 0 \pmod{6}\)である。一方、式\((b)\)から\(\displaystyle \frac{n+26}{2} = 1+25\)より\(n = 26\)となるが、これは\(n\equiv 1, 0 \pmod{6}\)に反する。
\((b)\) \(\displaystyle \frac{2}{\sqrt{3}}\cdot \sin{\frac{n+1}{3}\pi} = 0\)のとき、\(n\equiv 2, 4 \pmod{6}\)である。一方、式\((b)\)から\(\displaystyle \frac{n+26}{2} = 0+25\)より\(n = 24\)となるが、これは\(n\equiv 2, 4 \pmod{6}\)に反する。
\((c)\) \(\displaystyle \frac{2}{\sqrt{3}}\cdot \sin{\frac{n+1}{3}\pi} = -1\)のとき、\(n\equiv 3, 4 \pmod{6}\)である。一方、式\((b)\)から\(\displaystyle \frac{n+26}{2} = -1+25\)より\(n = 22\)となるが、これは\(n\equiv 4 \pmod{6}\)を満たす。このとき、\(a = 24\)である。

以上より、\(\underline{n=22, a=24}\)が答えとなる。

解説

チェビシェフの多項式を題材にした問題だが、それほど難しくない。差がつくのは\((4)\)くらいだが、\(n\)を\(6\)で割った剰余を考えれば解決する。

関連問題

1990年東京大学理系前期数学問題2 チェビシェフの多項式、難問
1991年東京大学理系数学問題4 チェビシェフの多項式
1996年京都大学理系後期数学問題1 チェビシェフの多項式
2020年前期東京工業大学数学問題1 合同式、整式と素数、素数生成多項式

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