[math]1987年東京医科歯科大学数学問題1

問題

\(n\)を正の整数とするとき、次の問いに答えよ。
\((1)\) \(\displaystyle S_n = \int_{0}^{1}{\frac{1-(-x^2)^n}{1+x^2}dx}\)の値を求めよ。
\((2)\) \(\displaystyle \left|S_n-\int_{0}^{1}{\frac{dx}{1+x^2}}\right|\leq \frac{1}{2n+1}\)であることを示せ。
\((3)\) \(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{S_n}\)の値を求めよ。

方針

解答

\((1)\) $$\frac{1-(-x^2)^n}{1+x^2} = 1-x^2+x^4-x^6 + \cdots +(-x^2)^{n-1}$$であるから、この式の両辺を\(0\)から\(1\)まで積分すると、\(\displaystyle S_n = \sum_{k=1}^{n}{\frac{(-1)^{k-1}}{2k-1}}\)であることがわかる。

\((2)\) 与えられた式の左辺は\(\displaystyle \left|\int_{0}^{1}{\frac{(-x^2)^n}{1+x^2}dx}\right| = \int_{0}^{1}{\frac{x^{2n}}{1+x^2}dx}\)であるが、\(\displaystyle \frac{1}{1+x^2}\leq 1\)が常に成り立つことに注意すると、$$\int_{0}^{1}{\frac{x^{2n}}{1+x^2}dx}\leq \int_{0}^{1}{x^{2n}dx} = \frac{1}{2n+1}$$である。したがって与えられた式が成り立つ。

\((3)\) \(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\frac{1}{2n+1}} = 0\)であるから、上の過程から$$\lim_{n\to\infty}{S_n} = \int_{0}^{1}{\frac{dx}{1+x^2}}$$である。右の式の積分で\(x = \tan{\theta}\)と置換すると、$$\begin{eqnarray}x = 0 & \to & \theta =0\\ x = 1 & \to & \theta = \frac{\pi}{4}\end{eqnarray}$$と変換できる。また、\(\displaystyle x = \tan{\theta}\)の両辺を微分することで\(\displaystyle dx = \frac{d\theta}{\cos^2{\theta}}\)がわかる。これより求める積分は$$\begin{eqnarray} & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{4}}{\frac{1}{1+\tan^2{\theta}}\cdot \frac{d\theta}{\cos^{\theta}}} \\ & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{4}}{d\theta} \\ & = & \frac{\pi}{4}\end{eqnarray}$$となり、答えは\(\displaystyle \underline{\frac{\pi}{4}}\)となる。

解説

\((1)\) 等比数列の和の公式を用いている。

\((2)\) \(\displaystyle \frac{1}{1+x^2}\leq 1\)に気がつけば難しくない。

\((3)\) この積分が出来ないと理系で入れる大学はない。全体として、医科歯科大学の出題としては易しい部類に入る。

関連問題

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