問題
\(f(x)\)は\(x\)に関する\(n\)次の整式(多項式)とする(\(n\geq 0\))。
\((1)\) \(2\)変数\(x, y\)の整式として$$f(x+y) = P_0(x) + P_1(x)y+P_2(x)y^2+\cdots +P_n(x)y^n$$と書き表す。ただし\(P_i(x)\ (i=0, 1, 2, \cdots, n)\)は\(x\)に関する整式である。このとき\(\displaystyle P_0(x)=f(x), P_1(x)=f^{\prime}(x), P_2(x) = \frac{1}{2}f^{\prime\prime}(x)\)かつ\(P_n(x) = \)「\(f(x)\)における\(x^n\)の係数」であることを示せ。
\((2)\) ある定数\(c\)があって、\(f(x+y) – f(x) = yf^{\prime}(x+cy)\)が成立すれば\(f(x)\)の次数は\(2\)以下であることを示せ。
方針
\(x\)か\(y\)のどちらかを定数とみて、もう片方で微分する。
解答
\((1)\) $$f(x+y) = P_0(x)+P_1(x)y + P_2(x)y^2+\cdots P_n(x)y^n \tag{a}$$とする。式\((a)\)で\(y = 0\)として、\(\underline{f(x) = P_0(x)}\)である。式\((a)\)の両辺を\(y\)で微分して、$$f^{\prime}(x+y) = P_1(x) + 2P_2(x)y + 3P_3(x)y^2 + \cdot +nP_n(x)y^{n-1} \tag{b}$$である。式\((b)\)で\(y = 0\)として、\(\underline{P_1(x) = f^{\prime}(x)}\)である。式\((b)\)の両辺を\(y\)で微分して、$$f^{\prime\prime}(x+y) = 2P_2(x) + 6P_3(x) + \cdots + n(n-1)P_n(x)y^{n-2} \tag{c}$$である。式\((c)\)で\(y = 0\)として、\(\displaystyle \underline{P_2(x) = \frac{1}{2}f^{\prime\prime}(x)}\)である。また、$$f(x) = a_nx^n+a_{n-1}x^{n-1}+\cdots + a_0\ (a_n\ne 0)$$とすると、\(f^{(n)}(x) = n!a_n\)だから、$$a_n = \frac{f^{(n)}(x)}{n!} \tag{d}$$がわかり、他方式\((c)\)の両辺を\(y\)で\(n-2\)回微分して、$$f^{(n)}(x+y) = n!P_n(x) \tag{e}$$となり、式\((e)\)で\(y = 0\)として、$$P_n(x) = \frac{f^{(x)}(x)}{n!} \tag{f}$$となるから、式\((d), (f)\)から確かに\(P_n(x) = \)「\(f(x)\)におけおる\(x^n\)の係数」となる。
\((2)\) \(f(x) = P_0(x)\)と式\((a)\)から、$$f(x+y)-f(x) = y(P_1(x)+P_2(x)y + \cdots + P_n(x)y^{n-1}) \tag{g}$$である。式\((b)\)で\(y\)を\(cy\)で置き換えてから両辺に\(y\)を掛けると、$$yf^{\prime}(x+cy) = y(P_1(x)+2cP_2(x)cy + \cdots + nP_n(x)c^{n-1}y^{n-1}) \tag{h}$$である。式\((g), (h)\)から、$$\begin{cases}P_2(x) = 2P_2(x)c \\ P_n(x) = nP_n(x)c^{n-1}\end{cases} \tag{i}$$である。\(P_n(x)\)は\(f(x)\)における\(x^n\)の係数であったから、\(P_n(x)\ne 0\)であることに注意すると、式\((i)\)の下の式から$$1 = nc^{n-1}\tag{j}$$を得る。
\((i)\) \(P_2(x)=0\)とすると、問\((1)\)から\(f^{\prime\prime}(x) = 0\)となり、\(f^{\prime}(x)\)は定数で、\(f(x)\)は\(1\)次関数となる。
\((ii)\) \(P_2(x)\ne 0\)とすると、式\((i)\)の上の式から$$1=2c \tag{k}$$となる。式\((j), (k)\)から\(\displaystyle c = \frac{1}{2}, n\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}=1\)となる。\(\displaystyle x_n = n\left(\frac{1}{2}\right)^{n-1}\)とする。このとき、$$\begin{eqnarray}\frac{x_{n+1}}{x_n} & = & \frac{n+1}{2n} \\ & \leq & 1 \ (n\geq 1)\end{eqnarray}$$である。よって、\(x_n\)は非増加列で、\(\displaystyle x_1 = 1, x_2 = 1, x_3 = \frac{3}{4}, \cdots\)となるから、\(x_n = 1\)となる\(n\)は\(n=1\)か\(n=2\)のみである。以上から\(n\leq 2\)となり、\(f(x)\)の次数は\(2\)以下である。
解説
難問である。実力のある受験生でもまっすぐ進むことは難しい。先ず\((1)\)であるが、\(x\)か\(y\)のどちらかを変数、どちらかを定数と見て固定して変数の方を微分する。続いて\((2)\)であるが、これは難しく、どこまで追求すればいいのかが課題となる。解答の\(x_n\)を得てからも、それが減少数列であることの証明など関門は多い。yについて\(3\)次の係数まで考えこれを比較すると、解答よりは楽に解くことが出来る。理学部専用とあるが、一時期京都大学では理学部専用問題が出題されていた。近年、数学だけが出題される理学部専用の入試が復活している。
関連問題
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1991年京都大学理系後期数学理学部専用問題 整数係数多項式
1993年京都大学理系前期3 数と式の難問
1995年京都大学理系後期数学問題3 式の有名難問
1996年京都大学理系後期数学問題1 チェビシェフの多項式
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