[math]2003年東京大学理系後期数学問題3

問題

\((1)\) すべての\(n\)について\(a_n\geq 2\)であるような数列\(\{a_n\}\)が与えられたとして、数列\(\{x_n\}\)に関する漸化式$$(A)\ x_{n+2}-a_{n+1}x_{n+1}+x_n = 0\ (n=0, 1, 2, \cdots) $$を考える。このとき自然数\(m\)を一つ決めて固定すれば、漸化式\((A)\)をみたし、\(x_0 = 0, x_m = 1\)であるような数列\(\{x_n\}\)がただ一つ存在することを示せ。また、この数列について、$$0<x_n<1\ (n=1, 2, \cdots, m-1)$$が成り立つことを示せ。ただし\(m\)は\(3\)以上とする。
\((2)\) 数列\(\{a_n\}\)と正の定数\(b\)が与えられ、すべての\(n\)について\(a_n\geq 1+b\)が成り立つと仮定して、数列\(\{y_n\}\)に関する漸化式$$(B)\ y_{n+2}-a_{n+1}y_{n+1}+by_{n} = 0\ (n=0, 1, 2, \cdots)$$を考える。このとき、自然数\(m\)を一つ決めて固定すれば、漸化式\((B)\)をみたし、\(y_0 = 0, y_m = 1\)であるような数列\(\{y_n\}\)がただ一つ存在して、$$0<y_n<1\ (n=1, 2, \cdots, m-1)$$が成り立つことを示せ。ただし\(m\)は\(3\)以上とする。
\((3)\) \(c\)を\(2\)より大きな定数として、すべての\(n\)について\(a_n\geq c\)が成り立つと仮定する。このとき、\(c\)から決まる\(m\)によらない正の定数\(r\)で\(r<1\)をみたすものが存在し、\((1)\)で得られた数列\(\{x_n\}\)は$$x_n < r^{m-n}\ (n=1, 2, \cdots, m-1)$$をみたすことを示せ。

方針

\((1)\)は\((2)\)で\(b=1\)とした場合なので、まとめて解くのが良い。三項間漸化式の変形が役に立つ。

解答

\((1)\) \((2)\)で\(b=1\)とした場合にあたり、\((2)\)を示す。

\((2)\) $$z_{n+2}-a_{n+1}z_{n+1}+bz_n = 0\ z_0 = 0, z_1 = 1\ (n=0, 1, 2, \cdots) \tag{a}$$をみたす数列\(\{z_n\}\)を考える。\(z_0, z_1\)が与えられ、三項間漸化式が与えられているので、この数列は一意に定まる。式\((a)\)を変形して、$$z_{n+2}-z_{n+1} = (a_{n+1}-1)z_{n+1}-bz_n$$である。ここで、ある\(n\)に対して\(z_0 < z_1\leq z_2\leq \cdots \leq z_n\leq z_{n+1}\)であることを仮定すると、\(a_n\geq 1+b\)より$$z_{n+2}-z_{n+1}\geq b(z_{n+1}-z_n) \tag{b}$$となり、\(b>0\)だから\(z_{n+2}\geq z_{n+1}\)となる。よって、帰納的に\(z_n\geq z_{n-1}\geq \cdots z_1>z_0\)となる。さて、決められた自然数\(m\)に対して\(z_m = k\ (k\ne 0)\)であったとしよう。このとき、\(y_n\)を\(\displaystyle y_n=\frac{z_n}{k}\)で定める。すると、\(\displaystyle y_0=0, y_1 = \frac{1}{k}, y_m = 1\)であり、数列\(\{y_n\}\)は式\((a)\)の漸化式を満たす。さらに、\(z_n\)が非減少数列であることから、\(y_n\)も非減少数列であり、\(\displaystyle y_0 = 0, y_1 = \frac{1}{k}, y_m = 1\)であることから\(0<y_n<1\ (n=0, 1, 2, \cdots, m-1)\)が成り立つ。これらの議論から、題意を満たす数列\(\{y_n\}\)はただ一つで、上のように構成されることがわかる。

\((3)\) \((1)\)の漸化式を変形して、\(\displaystyle x_{n+1} = \frac{x_n+x_{n+2}}{a_{n+1}}\)である。\((2)\)より\((1)\)の\(x_n\)も非減少数列であり、\(x_n\leq x_{n+2}\)で、\(a_n\geq c>2\)に注意すると、$$\begin{eqnarray}x_{n+1} & = & \frac{x_n+x_{n+2}}{a_{n+1}}\\ & \leq & \frac{2x_{n+2}}{a_{n+1}}\\ & < & \frac{2x_{n+2}}{c}\ (n=0, 1, 2, \cdots )\end{eqnarray}$$となる。\(\displaystyle r = \frac{2}{c}\)とすると、\(c > 2\)だから\(r < 1\)で、$$x_n < rx_{n+1}\ (n=1, 2, 3, \cdots)$$である。これを繰り返し使って、$$x_n<rx_{n+1} < r^2x_{n+2}<\cdots <r^{m-n}x_{m} = r^{m-n}\ (n=1, 2, 3, \cdots, m-1)$$となる。すなわち、題意が成立する。

解説

難問であり、定型的でない。初めてこんな問題を解く、という受験生も多かったことだろう。与えられた漸化式から何をしたら良いのかが、見当がつきにくい。\((1)\)は\((2)\)で\(b=1\)とおいた問題だが簡単な訳でなく、結局一般的に通用する解答を作らなくてはいけない。また、\((3)\)は\((1), (2)\)とあまり関係なく解くことができる。なお、東大後期は2007年度をもって終了した。後期数学のテスト時間は、\(3\)題で\(150\)分であったので、一問あたりで\(50\)分かけることが出来た訳だが、時間無制限でも厳しい問題だと思われる。

関連問題

1975年京都大学文系数学問題6 分数漸化式
2000年京都大学文系前期数学問題2 漸化式の変形
2005年前期東京医科歯科大学数学問題1 数列、特性方程式

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