[math]1996年京都大学前期文系数学問題2

問題

\(0 < a\leq b\)をみたす実数\(a, b\)に対し、数列\(\{a_n\}, \{b_n\}\)を$$a_1=a, b_1=b, a_n = \sqrt{a_{n-1}b_{n-1}}, b_{n} = \frac{a_{n-1}+b_{n-1}}{2} (n\geq 2)$$によって定める。
\((1)\) すべての自然数\(n\)に対し、\(a_n\leq a_{n+1}\leq b_{n+1}\leq b_n\)が成り立つことを示せ。
\((2)\) すべての自然数\(n\)に対し、\(\displaystyle b_{n+1}-a_{n+1}\leq \frac{1}{8a_n}(b_n-a_n)^2\)が成り立つことを示せ。
\((3)\) \(a=100, b=900\)のとき、\(b_n-a_n<4\)をみたす最小の\(n\)を求めよ。

方針

\((1)\)は単純に考えると示すべきは\(a_n\leq b_n\)だけで良いことに気がつく。

解答

\((1)\) \(a_n, b_n\)の定義式と、\(a_1 = a, b_1 = b, 0<a\leq b\)からすべての自然数\(n\)に対し\(a_n > 0, b_n > 0\)である。$$\begin{eqnarray}b_n-a_n & = & \frac{a_{n-1}+b_{n-1}}{2}-\sqrt{a_{n-1}b_{n-1}}\\ & = & \frac{(\sqrt{a_{n-1}}-\sqrt{b_{n-1}})^2}{2}\\ & \geq & 0\end{eqnarray}$$となるから、\(a_n\leq b_n\)が成り立つ。これより、$$\begin{eqnarray}a_{n+1}-a_n & = & \sqrt{a_nb_n}-a_n \\ & = & \sqrt{a_n}(\sqrt{b_n}-\sqrt{a_n}) \\ & \geq & 0 \\ b_{n}-b_{n+1} & = & b_n-\frac{a_n+b_n}{2} \\ & = & \frac{b_n-a_n}{2} \\ & \geq & 0\end{eqnarray}$$となる。以上より、すべての自然数\(n\)に対し\(a_n\leq a_{n+1}\leq b_{n+1}\leq b_n\)が成り立つ。

\((2)\) \(a_n, b_n\)の定義式から、$$b_{n+1}-a_{n+1} = \frac{(\sqrt{b_n}-\sqrt{a_n})^2}{2}$$となるから、$$\begin{eqnarray}\frac{(b_n-a_n)^2}{8a_n}-(b_{n+1}-a_{n+1}) & = & \frac{(\sqrt{b_n}-\sqrt{a_n})^2}{8a_n}\left((\sqrt{b_n}+\sqrt{a_n})^2-4a_n\right)\\ & = & \frac{(\sqrt{b_n}-\sqrt{a_n})^2}{8a_n}(\sqrt{b_n}+\sqrt{a_n}+2\sqrt{a_n})(\sqrt{b_n}+\sqrt{a_n}-2\sqrt{a_n})\\ & = & \frac{(\sqrt{b_n}-\sqrt{a_n})^2}{8a_n}(\sqrt{b_n}+3\sqrt{a_n})(\sqrt{b_n}-\sqrt{a_n}) \\ & \geq & 0\end{eqnarray}$$となる。よって題意が示された。

\((3)\) \(a=100, b=900\)の時与えられた漸化式より\(a_2 = 300, b_2 = 500, a_3 = 100\sqrt{15}, b_3 = 400\)となる。ここで、\(3.8^2=14.44, 3.9^2=15.21\)だから、\(3.8<\sqrt{15}<3.9\)である。これから\(380 < a_3 < 390\)となり、\(10<b_3-a_3<20\)となる。\((2)\)から$$\begin{eqnarray}b_4-a_4 & \leq & \frac{1}{8\cdot 100\sqrt{15}}(b_3-a_3)^2 \\ & < & \frac{1}{800\sqrt{15}}\cdot 20^2 \\ & = & \frac{1}{2\sqrt{15}} \\ & < & 4\end{eqnarray}$$となる。よって、求める\(n\)は\(\underline{n = 4}\)である。

解説

\((3)\)は比較的難しく、どこまで具体的に求めてどこから\((2)\)の評価を用いるのかで悩ませられる。\(n=3\)あたりまで具体的に求めると\(a_4, b_4\)は簡単な形にならないので、ここら辺で\((2)\)の評価式を用いると楽そうだと考えると上手く行く。後は\(\sqrt{15}\)を細かく評価してやると良い。ちなみに、\(\sqrt{15} = 3.872983346\cdots\)となる。

この問題は毎年のように何処かの大学で出題されている有名問題で、極限と絡めるものも多く出題されている。\(a_n, b_n\)の極限は等しい値になり、\(a_1, b_1\)に対するガウスの算術幾何平均と呼ばれている。同じ極限に収束することの証明は難しくはなく、大学の微分積分でもよく練習問題として取り上げられる。

関連問題

1961年度東京工業大学数学問題6 関数と極限
1978年京都大学文理共通数学問題1 相加平均、相乗平均の不等式
1989年京都大学理系数学問題2 相加平均

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