問題
関数\(f(x) = x^3-x^2+x\)について、以下の各問に答えよ。
\((1)\) \(f(x)\)はつねに増加する関数であることを示せ。
\((2)\) \(f(x)\)の逆関数を\(g(x)\)とおく。\(x > 0\)について$$\sqrt[3]{x}-1<g(x)<\sqrt[3]{x}+1$$が成立することを示せ。
\((3)\) \(b>a>0\)について$$0<\int_{a}^{b}{\frac{1}{x^2+1}dx}<\frac{1}{a}$$が成立することを示せ。
\((4)\) 自然数\(n\)について、\((2)\)で定義された関数\(g(x)\)を用いて$$A_n = \int_{n}^{2n}{\frac{1}{(g(x))^3+g(x)}dx}$$とおくとき、極限値\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{A_n}\)を求めよ。
方針
\((4)\)が問題となる。置換積分法で\(t=g(x)\)などと置いてみる。
解答
\((1)\) \(\displaystyle f^{\prime}(x) = 3x^2-2x+1 = 3\left(x-\frac{1}{3}\right)^2+\frac{2}{3} > 0\)だから、\(f(x)\)は単調増加である。
\((2)\) \(t = \sqrt[3]{x}\)とすると、$$\begin{eqnarray}f(t-1) & = & (t-1)^3-(t-1)^2+(t-1)\\ & = & t^3-4t^2+6t-3\\ f(g(x)) & = & x \\ & = & t^3\\ f(t+1) & = & (t+1)^3-(t+1)^2+(t+1)\\ & = & t^3+2t^2+2t+1\end{eqnarray}$$となる。$$\begin{eqnarray}t^3+2t^2+2t+1-t^3 & = & 2t^2+2t+1 \\ & = & 2\left(t+\frac{1}{2}\right)^2 + \frac{1}{2} > 0 \\ t^3-(t^3-4t^2+6t-3) & = & 4t^2-6t + 3 \\ & = & 4\left(t-\frac{3}{4}\right)^2+\frac{3}{4} > 0\end{eqnarray}$$となり、\((1)\)から\(f(x)\)が単調増加であることと合わせて、\(t-1<g(x)<t+1\)が成り立つ。すなわち、\(\sqrt[3]{x}-1<g(x)<\sqrt[3]{x}+1\)が成り立つ。
\((3)\) 常に\(\displaystyle 0< \frac{1}{x^2+1}\)であるから、左側の不等式は成り立つ。また、$$\begin{eqnarray}\int_{a}^{b}{\frac{1}{x^2+1}dx} & < & \int_{a}^{b}{\frac{1}{x^2}dx} \\ & = & \left[-\frac{1}{x}\right]_{a}^{b} \\ & = & \frac{1}{a}-\frac{1}{b} \\ & < & \frac{1}{a}\end{eqnarray}$$であるから、右側の不等式も成り立つ。
\((4)\) \(t = g(x)\)と置く。\(f(t)=f(g(x))=x\)から、$$t^3-t^2+t = x$$である。これから、\(dx = (3t^2-2t+1)dt\)となる。これより、$$\begin{eqnarray}A_n & = & \int_{g(n)}^{g(2n)}{\left(\frac{(3t^2-2t+1)}{t^3+t}\right)dt} \\ & = & \int_{g(n)}^{g(2n)}{\frac{3t^2+1}{t^3+t}dt}-\int_{g(n)}^{g(2n)}{\frac{2t}{t^3+t}dt} \\ & = & \left[\log{(t^3+t)}\right]_{g(n)}^{g(2n)}-\int_{g(n)}^{g(2n)}{\frac{2}{t^2+1}dt} \\ & = & \log{\left(\frac{(g(2n))^3+g(2n)}{(g(n))^3+g(n)}\right)}-2\int_{g(n)}^{g(2n)}{\frac{1}{t^2+1}dt} \end{eqnarray}$$となる。ここで、\((2)\)から$$\begin{cases}\sqrt[3]{n}-1<g(n)< \sqrt[3]{n}+1 \\ \sqrt[3]{2n}-1<g(2n)<\sqrt[3]{2n}+1\end{cases}$$だから、$$\frac{\sqrt[3]{2n}-1}{\sqrt[3]{n}+1} < \frac{g(2n)}{g(n)} < \frac{\sqrt[3]{2n}+1}{\sqrt[3]{n}-1}$$となり、\(n\to\infty\)で\(\displaystyle \frac{g(2n)}{g(n)}\to \sqrt[3]{2}\)となる。また、\((3)\)から$$0<\int_{g(n)}^{g(2n)}{\frac{t}{t^2+1}dt} < \frac{1}{g(n)}$$であるから、\(n\to\infty\)で\(g(n)\to \infty\)に注意すると、\(\displaystyle \int_{g(n)}^{g(2n)}{\frac{1}{t^2+1}dt}\to 0\)となる。以上より、$$\begin{eqnarray}A_n & = & \log{\frac{(g(2n))^3}{(g(n))^3}\cdot \frac{1+\frac{1}{(g(2n))^2}}{1+\frac{1}{(g(n))^2}}}-2\int_{g(n)}^{g(2n)}{\frac{1+t^2}{dt}} \\ & \to & 3\cdot \log{\sqrt[3]{2}} -2\cdot 0 \\ & = & \log{2}\end{eqnarray}$$がわかる。求める極限は\(\underline{\log{2}}\)である。
解説
\((2)\) \(f(x)\)の\(g(x)\)に対して、\(f(g(x))=x\)になる。これを失念するとどうしようもない。
\((4)\) \((2)\)の不等式を用いて無理やり$$\int_{n}^{2n}{\frac{1}{(\sqrt[3]{x}\pm1)^3+(\sqrt[3]{x}\pm1)^3}dx}$$を計算するのもありだろう。計算量は多いが、\(\sqrt[3]{x}\pm1 = u\)などと置換することで計算は可能である。その場合も結局\((3)\)を用いることになる。
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