[math]2011年東京医科歯科大学前期数学問題1

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問題

ある硬貨を投げたとき、表と裏がそれぞれ\(\displaystyle \frac{1}{2}\)で出るとする。この硬貨を投げる操作を繰り返し行い、\(3\)回続けて表が出たときこの操作を終了する。自然数\(n\)に対し、
操作がちょうど\(n\)回で終了となる確率を\(P_n\)
操作が\(n\)回以上繰り返される確率を\(Q_n\)
とする。このとき以下の各問に答えよ。
\((1)\) \(P_3, P_4, P_5, P_6, P_7\)をそれぞれ求めよ。
\((2)\) \(Q_6, Q_7\)をそれぞれ求めよ。
\((3)\) \(n\geq 5\)のとき、\(Q_n-Q_{n-1}\)を\(Q_{n-4}\)を用いて表わせ。
\((4)\) \(n\geq 5\)のとき、\(\displaystyle Q_n < \left(\frac{3}{4}\right)^{\frac{n-3}{4}}\)が成り立つことを示せ。

方針

\(n\)回目で操作が終了するには、\(n-3\)回目までには操作が終了しておらず、その後\(3\)回連続で表が出る必要がある。

解答

\((1)\) \(P_3\)は\(3\)回連続で表が出る確率だから、\(\displaystyle P_3 = \frac{1}{2^3} = \underline{\frac{1}{8}}\)である。\(P_4\)は\(1\)回目は裏が出て、それから\(3\)回連続で表が出る確率だから、\(\displaystyle P_4 = \frac{1}{2^4} = \underline{\frac{1}{16}}\)である。\(P_5\)は\(1\)回目に表、\(2\)回目に裏が出てそれから\(3\)回連続で表が出るか、\(1, 2\)回目は裏で、それから\(3\)回連続で表が出る確率だから、\(\displaystyle P_5 = \frac{2}{2^5} = \underline{\frac{1}{16}}\)である。\(P_6\)は「表表裏」「表裏裏」「裏表裏」「裏裏裏」と出てからそれから\(3\)回連続で表が出る確率だから、\(\displaystyle P_6 = \frac{4}{2^6} = \underline{\frac{1}{16}}\)である。
また、\(Q_1 = Q_2 = Q_3 = 1\)で、\(\displaystyle Q_4 = 1-P_3 = \frac{7}{8}\)である。\(\displaystyle Q_5 = 1-P_3-P_4 = \frac{13}{16}\)である。
\(P_7\)は\(3\)回目までに操作が終了しておらず、\(4\)回目は必ず裏が出て、それから\(3\)回連続で表が出る確率だから、\(\displaystyle P_7 = Q_4\cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{2^3} = \underline{\frac{7}{128}}\)となる。

\((2)\) 一般に、$$Q_n = 1-P_3-P_4-\cdots -P_{n-1}$$が成り立つ。したがって、\(\displaystyle Q_6 = 1-P_3-P_4-P_5 = \underline{\frac{3}{4}}\)である。また、\(\displaystyle Q_7 = 1-P_3-P_4-P_5-P_6 = \underline{\frac{11}{16}}\)である。

\((3)\) $$\begin{eqnarray}Q_{n} & = & 1-(P_3+P_4+\cdots + P_{n-1})\\ Q_{n-1} & = & 1-(P_3+P_4+\cdots +P_{n-2})\end{eqnarray}$$であるから、辺ごとに引くと$$Q_{n}-Q_{n-1} = -P_{n-1}$$がわかる。ところで、\(n-1\)回目で操作が終了するには、\(n-4\)回目までには操作は終了しておらず、\(n-3\)回目には裏が出て、\(n-3, n-2, n-1\)回目に\(3\)回連続で表が出る必要がある。したがって、\(\displaystyle P_{n-1} = \frac{Q_{n-4}}{2^4} = \frac{Q_{n-4}}{16}\)である。代入して、\(\displaystyle \underline{Q_n-Q_{n-1}=-\frac{Q_{n-4}}{16}}\)となる。

\((4)\) 簡単のため、\(\displaystyle R_n = \left(\frac{3}{4}\right)^{\frac{n-3}{4}}\)とおく。\((3)\)から、\(k\)を自然数として、$$Q_{k+4}-Q_{k+3} = -\frac{Q_{k}}{16}$$がわかる。\(k=n, n-1, n-2, n-3\ (n\geq 4)\)として辺ごとに足すと、$$(Q_{n+4}-Q_{n+3})+(Q_{n+3}-Q_{n+2})+(Q_{n+2}-Q_{n+1}) +(Q_{n+1}-Q_{n}) = -\frac{1}{16}(Q_n+Q_{n-1}+Q_{n-2} + Q_{n-3})$$である。左辺は打ち消し合って、$$Q_{n+4} = Q_n -\frac{1}{16}(Q_n+Q_{n-1}+Q_{n-2} + Q_{n-3}) \tag{a}$$となる。\(Q_n\)は\(n\)についての減少数列である(定義を考えても明らかである。いずれは操作は終了するはずであるし、また\((3)\)から\(\displaystyle Q_{n}-Q_{n-1}=-\frac{Q_{n-4}}{16}\leq 0\)だから、\(Q_{n}-Q_{n-1}\leq 0\)も言える)。したがって、式\((a)\)から$$\begin{eqnarray}Q_{n+4} & < & Q_n-\frac{1}{16}(Q_n+ Q_n + Q_n + Q_n) \\ & = & \frac{3}{4}Q_n\end{eqnarray}$$である。この式は\(n\geq 4\)で成り立つ。\(n=4\)のときは\(\displaystyle Q_4^4 = \left(\frac{7}{8}\right)^4 = \frac{2401}{4096}< \frac{3}{4}=R_4^4\)であるから、$$Q_4 < R_4$$が成り立つ。\(n=5\)のときは\(\displaystyle Q_5^2 = \left(\frac{13}{16}\right)^{2} = \frac{169}{256} < \left(\frac{3}{4}\right)^{2} = R_5^2\)であるから、$$Q_5 < R_5$$が成り立つ。\(n=6\)のときは\(\displaystyle Q_6^4 = \left(\frac{3}{4}\right)^4 = \frac{27}{256} < \left(\frac{3}{4}\right)^3 = \frac{27}{64} = R_6^4\)であるから、$$Q_6 < R_6$$が成り立つ。\(n=7\)のときは\(\displaystyle Q_7 = \frac{11}{16} < \frac{3}{4} = R_7\)であるから、\(Q_7 < R_7\)が成り立つ。

ある\(n\)で$$Q_n < \left(\frac{3}{4}\right)^{\frac{n-3}{4}}$$を仮定すると、$$\begin{eqnarray}Q_{n+4} & < & \frac{3}{4}\cdot \left(\frac{3}{4}\right)^{\frac{n-3}{4}}\\ & = & \left(\frac{3}{4}\right)^{\frac{n+4-3}{4}}\end{eqnarray}$$となるから、\(n+1\)でも式\((a)\)が成立する。したがって、すべての自然数\(n\)で式\((a)\)が成り立つ。

解説

\((1)\) まずは様子をつかもうという問題で、\((2)\)の答えにも影響するので慎重に解く。

\((2)\) 操作\(n\)回以上繰り返される確率は、\(n-1\)回目までに操作が終っていない確率であるから、\(\displaystyle Q_n = 1-\sum_{k=3}^{n-1}{P_{k}}\)となる。

\((3)\)が山場になるが、上の関係式を用いると、\(P_{n-1}\)について考察すれば良いことがわかる。

\((4)\) これが難しい。結局\((3)\)の関係式を用いるが、\(Q_n\)が減少数列であることに気が付かないと、$$Q_{n+4} < \frac{3}{4}Q_n$$までたどり着かない。これさえ出せれば後は帰納法でなんとかなる。ただし。この式では\(n = 4, 5, 6, 7\)まで成立することを示さないと、帰納法としてのサイクルが回らなくなる。

関連問題

1985年東京大学理系数学問題5 確率と極限
1991年東京大学前期理系数学問題1 確率と漸化式、対称性
2005年前期東京医科歯科大学数学問題1 数列、特性方程式

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