[math]1997年東京大学文系前期問題4

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問題

\(0\leq t\leq 1\)をみたす実数\(t\)に対して、\(xy\)平面上の点\(A, B\)を$$A\left(\frac{2(t^2+t+2)}{3(t+1)}, -2\right), B\left(\frac{2}{3}t, -2t\right)$$と定める。\(t\)が\(0\leq t\leq 1\)を動くとき、直線\(AB\)の取り得る範囲を図示せよ。

方針

直線\(AB\)の方程式が\(y = f(x, t)\)の形に書けたとすると、\(f(x, t)\)を\(t\)についての方程式とみる。この最小値、最大値が直線\(AB\)の動く範囲となる。

解答

直線\(AB\)の方程式は$$\begin{eqnarray}y & = & \frac{-2t-(-2)}{\frac{2}{3}t-\frac{2(t^2+t+1)}{3(t+1)}}\left(x-\frac{2}{3}t\right)-2t \\ & = & \frac{3}{2}\cdot \frac{-2(t-1)}{\frac{t^2+t-t^2-t-1}{t+1}}\left(x-\frac{2}{3}t\right)-2t \\ & = & 3(t^2-1)\left(x-\frac{2}{3}t\right)-2t \\ & = & 3(t^2-1)x-2t^3\end{eqnarray}$$である。これを\(t\)についてまとめると、$$y=-2t^3+3t^2x-3x$$となる。これを\(x\)を固定して\(t\)の関数\(f(t)\)とする。\(f(t)\)の最小値、最大値を順に\(m, M\)とすると、\(m\leq y\leq M\)が\(y\)の動く範囲である。\(f^{\prime}(t)=-6t(x-t)\)となるから、\(f(0), f(1), f(t)\)のうち最小のものが\(m\)、最大のものが\(M\)である。ただし、\(f(t = x)\)を考えるときは、\(x\)が区間\([0, 1]\)に含まれなくてはいけないので、\(0\leq x\leq 1\)である。$$\begin{cases}f(0) = -3x \\ f(1)=-2 \\ f(t)=x^3-3x\end{cases}$$となるから、図示して一番小さい部分が\(m\)、一番大きい部分が\(M\)となる。よって、求める図は以下のようになる。ただし、境界はすべて含む。

解答図。

解説

方針としては二通りあって、ひとつは直線\(AB\)の方程式$$y=-2t^3+3t^2x-3x$$の\(x\)を固定して\(t\)の関数と見て動く領域を考える方法と、もうひとつは、$$-2t^2+3t^2-3x-y = 0$$が\(0\leq t\leq 1\)に実数解を持つような条件を求める、というものである。どちらの方法も重要だが、ここでは前者の方法で解決している。解答のように、最大値、最小値の候補を書きあげてしまい目で見て領域を決めるという手法も、身につけると便利だと思う。ところで、上で境界に現れた曲線\(y=x^3-3x\)上の点\((t, t^3-3t)\)における接線を考えてみよう。\(y^{\prime}=3x^2-2\)だから、求める接線は$$y=(3t^2-3)(x-t)+t^3-3t$$となり、整理するとこれは直線\(AB\)と同じになる。ここから解答の図の意味が瞬時に明確になる。つまり、直線\(AB\)は曲線\(y=x^3-3x\)に\(0\leq x\leq 1\)で接しながら動く曲線族の集合ということで、このようにある曲線に接しながら動く曲線のことを包絡線と呼ぶ。この知識が頭にあれば解答の図はすぐに書ける。包絡線の定義をしっかりと知らずに解答に用いるのは危険なので、答えが出た後の確認程度に使うのが良い。

関連問題

2011年東京医科歯科大学前期数学問題2 微分と図形
2015年東京大学理系数学問題1 領域の図示、存在証明、2次方程式の解の配置

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