[math]1984年東京工業大学数学問題4

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問題

定積分\(\displaystyle \int_{0}^{1}{e^x\mid x-a \mid dx}\)を最小にする\(a\)を求めよ。

方針

もちろん場合分けが必要になる。

解答

問題文の積分を\(f(a)\)と置く。$$f(a) = \begin{cases}\int_{0}^{1}{e^x(x-a)dx} \ (a < 0)\\ \int_{0}^{a}{(-e^x(x-a))dx} + \int_{a}^{1}{e^x(x-a)dx} \ (0\leq a \leq 1) \\ \int_{0}^{1}{(-e^x(x-a))dx}\ (a > 1)\end{cases}$$となる。ここで、$$(e^x(px+q))^{\prime} = pe^xx+(p+q)e^x$$が\(e^x(x-a)\)と一致するように係数\(p, q\)を定めると、\(p=1, q = -a-1\)である。よって、$$\int{e^x(x-a)dx} = e^x(x-a-1) + C$$となる。ただし、\(C\)は積分定数である。これを用いると、

\((i)\) \(a < 0\)のとき
$$\begin{eqnarray}f(a) & = & [e^x(x-a-1)]_{0}^{1} \\ & = & a(1-e)+1\end{eqnarray}$$である。これは\(a=0\)で最小になるから、この範囲で\(f(a)\geq f(0) = 1\)である。

\((ii)\) \(0\leq a\leq 1\)のとき
$$\begin{eqnarray}f(a) & = & -[e^x(x-a-1)]_{0}^{a} + [e^x(x-a-1)]_{a}^{1}\\ & = & 2e^a-(1+e)a-1\end{eqnarray}$$となる。したがって、\(f^{\prime}(a) = 2e^a-(1+e)\)となり、\(f(a)\)は\(\displaystyle a = \log{\frac{1+e}{2}}\)(これは\(0\leq a\leq 1\)に含まれる)で最小になる。

\((iii)\) \(a > 1\)のとき
$$\begin{eqnarray}f(a) & = & -[e^x(x-a-1)]_{0}^{1} \\ & = & a(e-1)-1\end{eqnarray}$$となる。これは\(a=1\)で最小になるから、この範囲で\(f(a)\geq f(1) = e-2\)である。

\(a = 0, 1\)で\(f(a)\)は連続で、\(\displaystyle 0\leq f^{\prime}(a)\leq \log{\frac{1+e}{2}}\)で\(f^{\prime}(a)\leq 0\)、\(\displaystyle \log{\frac{1+e}{2}} \leq a\leq 1\)で\(f^{\prime}(a)\geq 0\)だから、\(\displaystyle \underline{a = \log{\frac{1+e}{2}}}\)のときに題意の積分は最小値をとる。

解説

絶対値を外さなければ計算ができないので、先ず外してしまう。\(\mid x-a \mid\)の絶対値を外すときには計算欄に\(y = \mid x-a\mid\)のグラフを書いて、積分区間(今は\(0\leq x\leq 1\))との大小を見ながら外していく。

その後は積分の実行である。\(\displaystyle \int{e^x(x-a)dx}\)は部分積分法を繰り返して使うと求めることができるが、解答の考え方も身に付けておくと良い。最初に、もし微分して\(e^{x}(x-a)\)になる関数があるとしたら、それは\(e^x(px+q)\)という形になる筈ということを頭の中で考えておいて、そこから計算して\(p, q\)を求めるという流れになる。この方法の利点は計算ミスを減らすことが出来るという一点に尽きる。例えば、\(\int{e^x(ax^2+bx+c)dx}\)を求めるとき部分積分を繰り返して求めようとすると、計算ミスをしやすくなる。初めにもし微分して\(e^x(ax^2+bx+c)\)という形になる関数があるとしたら、それは\(e^x(px^2+qx+c)\)という形をしている筈(実際に微分してみるとすぐに分かる)と考えてから、これを微分して係数を比較すれば良い。積分がきちんと出来たら,只の計算問題になる。

東京工業大学では、この絶対値付き関数の定積分というテーマの問題が、驚くほどの頻度で出題されている。場合分けがポイントになることもいつも変わらない。注意するのは慎重に絶対値を外すことと、積分計算を間違わないことになる。こういったタイプの問題では計算ミスは大きな減点になるだろう。

関連問題

1994年東京工業大学数学問題3 絶対値のついた積分と極
2001年度京都大学理系数学6 極限、積分限

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