[math]1997年京都大学後期理系数学問題6

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問題

媒介変数表示された曲線\(\displaystyle C: x = e^{-t}\cos{t}, y = e^{-t}\sin{t}\ \left(0\leq t\leq \frac{\pi}{2}\right)\)を考える。
\((1)\) \(C\)の長さ\(L\)を求めよ。
\((2)\) \(C\)と\(x\)軸、\(y\)軸で囲まれた領域の面積\(S\)を求めよ。

方針

媒介変数表示された曲線の長さおよび面積の公式は覚える必要がある。

解答

\((1)\) $$\begin{eqnarray}\frac{dx}{dt} & = & e^{-t}(-cos{t}-\sin{t}) \\ \frac{dy}{dt} & = & e^{-t}(-\sin{t}+\cos{t})\end{eqnarray}$$であるから、$$\begin{eqnarray}\sqrt{\left(\frac{dx}{dt}\right)^2+\left(\frac{dy}{dt}\right)^2} & = & e^{-t}\sqrt{(-\cos{t}-\sin{t})^2+(-\sin{t}+\cos{t})^2} \\ & = & \sqrt{2}e^{-t}\end{eqnarray}$$となる。よって、\(C\)の長さ\(L\)は$$\begin{eqnarray}L & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}(\sqrt{2}e^{-t}dt) \\ & = & \sqrt{2}[-e^{-t}]_{0}^{\frac{\pi}{2}}\\ & = & \underline{\sqrt{2}(1-e^{-\frac{\pi}{2}})}\end{eqnarray}$$となる。

\((2)\) 次の図で、\(C\)上の動点が点\(P\)から\(Q\)へ動くとき、動径の掃く面積は扇形で近似できて、それは\(\displaystyle dS=\frac{1}{2}r^2 dt\)となるから、$$\begin{eqnarray}S & = & \frac{1}{2}\int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{(e^{-t})^2 dx} \\ & = & \frac{1}{4}[-e^{-2t}]_{0}^{\frac{\pi}{2}} \\ & = & \underline{\frac{1}{4}(1-e^{-\pi})}\end{eqnarray}$$となる。

解説

\((1)\) 曲線の長さについては範囲外となっているが、難関大学では実質的に範囲内と考えておいたほうが良い。実際に、京大や東京医科歯科大学をはじめとして、多くの大学でほぼ毎年出題されている。媒介変数表示された曲線の長さがなぜこのような公式で表されるのかについては、以下の記事で詳しく解説している。

\((2)\) 公式一発であるが、この公式が掲載されていない教科書もあるそうである、覚えておくと便利なので身に付けておくと良い。なお、扇形の面積の覚え方であるが、円の一部と考えても良いし、扇形を三角形と見なして覚えるのも明快である(下図)。

扇形(円の一部)

つまり、上の図で扇形\(OPQ\)の弧\(PQ\)の長さは\(r\theta\)であるので、これを三角形の底辺とみて、高さは\(OP=r\)となるので、面積は$$\frac{1}{2}r\cdot r\theta = \frac{r^2\theta}{2}$$になる、というわけである。解答の公式を知らなくとも平凡に積分すると、\(\displaystyle S = \int_{0}^{1}{ydx} = \int_{\frac{\pi}{2}}^{0}{y\frac{dx}{dt}dt}\)を計算することになる。こちらも計算量は大したことはない。

問題の曲線は等角螺旋という。自然界ではアンモナイトの巻貝がこの曲線になっていると言われている。さらに、古生物にNipponites mirabilisという、アンモナイトの一種があるのだが、これの貝は異常な巻き方をしてる。これは奇形の一種と考えられていたのだが、数式で表すことができるということで大きな衝撃を与えたそうである(ニッポニテス)。フィボナッチ数列や、素数ゼミなど、我々が親しんでいる数学が自然に現れることはとても興味深いことである。

関連問題

2002年京都大学理系数学第4問 微分、積分、曲線の長さ

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