[math]1993年東京工業大学前期数学問題4

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問題

\(n\)を自然数、\(P(x)\)を\(n\)次の多項式とする。\(P(0), P(1), \cdots, P(n)\)が整数ならば、すべての整数\(k\)に対して、\(P(k)\)は整数であることを証明せよ。

方針

中々難しい問題である。どういう解法をとるにせよ、数学的帰納法を用いないわけにはいかないだろう。

解答

数学的帰納法で示す。\(n=1\)のとき、\(P(x) = ax+b\)とする。\(P(0)=b, P(1) = a+b\)が整数だから、\(a, b\)はともに整数となる。したがって、\(P(k) = ak + b\)はすべての整数\(k\)に対して整数となる。

\(n\leq m\)のとき、題意が成り立つことを仮定する。すなわち、\(m\)次の多項式\(P(x)\)に対し、\(P(0), P(1), \cdots, P(m)\)が整数ならば、すべての整数\(k\)に対し、\(P(k)\)は整数である。さて、\(m+1\)次の多項式\(P(x)\)に対し、$$P(x) = ax(x-1)(x-2)\cdots (x-m) + Q(x)$$とおく。ただし、\(a\ne 0\)であり、\(Q(x)\)は\(m\)次以下の多項式である。このとき、\(P(0), P(1), \cdots, P(m), P(m+1)\)がすべて整数であるとする。\(P(0) = Q(0), P(1) = Q(1), \cdots, P(m) = Q(m)\)であるから、帰納法の仮定から、すべての整数\(k\)に対して\(Q(k)\)は整数である(\(Q(x)\)が\(m\)次以下の多項式であることに注意)。よって、\(Q(m+1)\)は整数である。すると、$$P(m+1)=a\cdot (m+1)!+Q(m+1)$$は整数であるから、\(b\)を整数として\(\displaystyle a = \frac{b}{(m+1)!}\)と書ける。このとき、任意の整数\(k\)に対し$$P(k) = \frac{b}{(m+1)!}\cdot k(k-1)\cdots (k-m)+ Q(k)$$であるが、連続する\(m+1\)個の整数の積は\((m+1)!\)で割り切れるので、\(\displaystyle \frac{b}{(m+1)!}\cdot k(k-1)\cdots (k-m)\)は整数であるから、\(P(k)\)は整数である。したがって、\(n=m+1\)のときにも題意が成り立つ。よって、数学的帰納法により題意が示された。

解説

解答についていくつか補足しよう。先ず,\(m+1\)次の式\(P(x)\))を、\(m+1\)次式\(x(x-1)\cdots (x-m)\)で割ったとき、商は定数で、余りは\(m\)次以下の式になる。次に、連続する\(m+1\)個の整数の積が\((m+1)!\)で割り切れるの部分であるが、これは簡単で、\(0\leq k\leq m\)のときは、$$\frac{k(k-1)\cdots (k-m)}{(m+1)!} = 0$$で、\(k > m\)のときは$$\frac{k(k-1)\cdots (k-m)}{(m+1)!} = _{k}{\mathbb{C}}_{m+1}$$で、\(k < 0\)のときは\(-k = l\)とおくと、$$\frac{k(k-1)\cdots (k-m)}{(m+1)!} = \frac{(-1)^{m+1}l(l+1)\cdots (l+m)}{(m+1)!} = (-1)^{m+1}{_{l+m}{\mathbb{C}}_{m+1}}$$で、これらはすべて整数になる。こんなことをしなくても、連続する\(m\)個の整数の積は\(m!\)で割り切れるというのは、証明抜きで使って問題ない。

他の考え方としては、\(m\)次式\(P(x)\))に対し、\(P(k+1)-P(k)\)が\(m-1\)次式になることを利用するというものがある。こちらも帰納法で解けるので,余力のあるものは試してみると良い。なお、\(1988\)年の京都大学文系で、この問題の\(3\)次式の場合が出題されている。こちらは\(3\)次なので、帰納法ではなく直接係数をおいて解くことができる。他にも類題は数多く出題されているが、ここまでストレートに問うのは、やはり東工大らしい問題,といえよう。

この問題は出来が悪かったらしく、解答に「帰納法で示す」と書いただけで、30点満点のうち10点が貰えた、という話があるが、どこまで本当かは不明である。

関連問題

1984年東京工業大学数学問題1 立方数の和
1989年京都大学理系後期数学理学部専用問題 二次方程式と整数、解と係数の関係
1990年東京医科歯科大学数学問題2 多項式と数列
1991年京都大学理系後期数学理学部専用問題 整数係数多項式
1991年度京都大学後期理系理学部専用問題 微分と整式、理学部専用問題
1994年後期東京工業大学数学問題2 無理数の\(n\)乗、共役無理数

関連リンク

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