[math]1991年前期東京医科歯科大学数学問題2

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問題

座標空間内の図形$$W = \{(x, y, z)\mid 3x^2+3y^2-z^2 \leq 0\}$$について、次の各問に答えよ。
\((1)\) 原点\(O\)を中心とする半径\(1\)の球と\(W\)とが交わってできる図形の体積\(V\)を求めよ。
\((2)\) 原点以外の点\(P\)に対し、ベクトル\(\overrightarrow{OP}\)と\(\overrightarrow{OQ} = (4, 3, 5)\)とのなす角を\(\theta\)とする。\(P\)が\(W\)を動くとき、\(\cos{\theta}\)の最大値を求めよ。

方針

空間座標の問題の鉄則は、あるひとつの平面での切り口を考えることに尽きる。

解答

\((1)\) 原点\(O\)を中心とする半径\(1\)の球は\(x^2+y^2+z^2\leq 1\)と表される。\(z = t\ (-1\leq t\leq 1)\)とする。この平面による\(W\)と球との切り口はそれぞれ$$x^2+y^2\leq \frac{t^2}{3}$$と$$x^2+y^2\leq 1-t^2$$である。したがって、問題の図形の\(z = t\)による切り口の面積を\(S(t)\)とすると、\(\displaystyle 1-t^2\geq \frac{t^2}{3}\)、つまり\(\displaystyle -\frac{\sqrt{3}}{2}\leq t\leq \frac{\sqrt{3}}{2}\)のときは\(\displaystyle \frac{t^2}{3}\pi\)で、\(\displaystyle 1-t^2\leq \frac{t^2}{3}\)、つまり\(\displaystyle -1\leq t\leq -\frac{\sqrt{3}}{2}, \frac{\sqrt{3}}{2}\leq t\leq 1\)のときには\((1-t^2)\pi\)となる。以上から、求める体積は$$\begin{eqnarray}V & = & \int_{-1}^{1}{S(t)dt} \\ & = & 2\int_{0}^{1}{S(t)dt}\\ & = & 2\int_{0}^{\frac{\sqrt{3}}{2}}{\frac{t^2}{3}\pi dt} + \int_{\frac{\sqrt{3}}{2}}^{1}{(1-t^2)\pi dt} \\ & = & \frac{2\pi}{9}[t^3]_{0}^{\frac{\sqrt{3}}{2}} +2\pi\left[t-\frac{t^3}{3}\right]_{\frac{\sqrt{3}}{2}}^{1} \\ & = & \underline{\frac{4-2\sqrt{3}}{3}\pi}\end{eqnarray}$$である。

\((2)\) \(W\)の方程式は\(3(x^2+y^2)\leq z^2\)だから、\(W\)上の点\(P(x, y, z)\)に対し、\(x = t\cos{\phi} , y = t\sin{\phi}\ \left(0\leq t\leq \frac{z}{\sqrt{3}}, 0\leq \phi \leq 2\pi\right)\)とおける。このとき、$$\begin{eqnarray}\cos{\theta} & = & \frac{\overrightarrow{OP}\cdot \overrightarrow{OQ}}{\mid \overrightarrow{OP}\mid \mid \overrightarrow{OQ}\mid } \\ & = & \frac{4x+3y+5z}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}\sqrt{4^2+3^2+5^2}}\\ & = & \frac{4t\cos{\phi}+3t\sin{\phi}+5z}{5\sqrt{2}\sqrt{x^2+y^2+z^2}}\\ & = & \frac{t(\cos{\phi}, \sin{\phi})\cdot (4, 3) + 5z}{5\sqrt{2}\sqrt{t^2\cos^2{\phi}+t^2\sin^2{\phi}+z^2}} \end{eqnarray}$$であるが、内積\(\leq \)絶対値の積であるから、$$\begin{eqnarray}& \leq & \frac{t\sqrt{\cos^2{\phi}+\sin^2{\phi}}\sqrt{4^2+3^2}+5z}{5\sqrt{2}(t^2+z^2)} \\ & = & \frac{t+z}{\sqrt{2}(t^2+z^2)}\end{eqnarray}$$である。\(\displaystyle f(t) = \frac{t+z}{\sqrt{t^2+z^2}}\left(0\leq t\leq \frac{z}{\sqrt{3}}\right)\)とすると、$$\begin{eqnarray}f^{\prime}(t) & = & \frac{\sqrt{t^2+z^2}-(t+z)\cdot \frac{t}{\sqrt{t^2+z^2}}}{t^2+z^2}\\ & = & \frac{z(z-t)}{(t^2+z^2)^{\frac{3}{2}}} \\ & \geq & 0\end{eqnarray}$$となる。したがって\(f(t)\)は増加関数で、\(\displaystyle f(t)\leq f\left(\frac{z}{\sqrt{3}}\right) = \frac{1+\sqrt{3}}{2}\)となる。以上より、\(\displaystyle \cos{\theta}\leq \frac{1}{\sqrt{2}}\cdot \frac{1+\sqrt{3}}{2} = \frac{\sqrt{2}+\sqrt{6}}{4}\)である。等号は\(\displaystyle t = \frac{z}{\sqrt{3}}, \tan{\phi} = \frac{3}{4}\)、つまり\(\displaystyle x = \frac{4z}{5\sqrt{3}}, y = \frac{3z}{5\sqrt{3}}\)のとき成立する。また、これは確かに\(W\)上の点である。よって、\(\cos{\theta}\)の最大値は\(\displaystyle \underline{\frac{\sqrt{2}+\sqrt{6}}{4}}\)である。

解説

\(W\)は実は直円錐になる。もしそのことが分かっていれば、\((1)\)も\((2)\)も図形的に解くことが可能である。しかし現在高校の授業では空間図形をほとんどまともに扱っていない状況なので、別の方法で対処する必要がある。この問題はかなり昔の問題だが、昨今の入試問題を見渡してみても、パッと見空間の問題というのは必ず出題されている。そのような問題に対応するのに高校で習わない知識を詰め込む必要は無い。基本は、ある平面での切り口を考えることだけで、\((1)\)はそれが身に付いていれば比較的簡単に解ける。\(z = t\)での切り口を考えてから、それを足し上げている(積分している)。

\((2)\)も、上の解答ではほとんど図を書かず、式だけで片付けてしまっている。ポイントは、\(3(x^2+y^2)\leq z^2\)となっているので、\(x = t\cos{\phi}, y = t\sin{\phi}\)のように置けるということで、ここが理解できていれば後は単なる計算問題になる。式変形の途中で、内積\(\leq\)絶対値の積を用いている。先にややこしそうな\(\phi\)の方の評価を済ましてから、\(t\)を動かす。不等式を持ち出しているので、最後には等号を成り立たせるような\(x, y, z\)が存在することを言っておかないと、減点されてしまうだろう。

図形的考察と式変形のみでの攻略というのは決して対立するものではない。必要なときに必要な手法がとれれば良い。

関連問題

1985年京都大学理系数学問題4 空間図形と整数、置き換えの利用
2006年度前期東京医科歯科大学数学問題2 四面体、空間座標、体積
2010年東京医科歯科大学前期数学問題2 空間図形と体積
2012年東京医科歯科大学前期数学問題2 空間図形と求積、断面図

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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