[math]1996年東京工業大学前期数学問題1

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問題

\(2\)以上の整数\(n\)に対して方程式\(x_1+x_2+\cdots + x_n = x_1x_2\cdots x_n\)の正の整数解\((x_1, x_2, \cdots, x_n)\)を考える。ただし、たとえば\((1, 2, 3)\)と\((3, 2, 1)\)は異なる解とみなす。このとき次の各問に答えよ。
\((1)\) \(n = 2\)および\(n = 3\)のときの解をすべて求めよ。
\((2)\) 解が\(1\)つしかないような\(n\)をすべて求めよ。
\((3)\) 任意の\(n\)に対して解は少なくとも\(1\)つ存在し、かつ有限個しかないことを示せ。

方針

\((1)\)を解いて様子を掴みたい。\((2)\)は\(n\geq 3\)のときには複数の解を持つ例をあげることができる。

解答

\((1)\) \(n=2\)のとき\(x_1+x_2=x_1x_2\)だから、\((x_1-1)(x_2-1)=1\)である。したがって、\((x_1-1, x_2-1) = (1, 1)\)だから、\(\underline{(x_1, x_2) = (2, 2)}\)である。\(n=3\)のとき、\(x_1+x_2+x_3 = x_1x_2x_3\)だから、\(\displaystyle \frac{1}{x_1x_2}+\frac{1}{x_2x_3}+\frac{1}{x_3x_1} = 1\)である。ここで\(x_1\leq x_2\leq x_3\)とすると、$$\frac{1}{x_1x_2}+\frac{1}{x_2x_3}+\frac{1}{x_3x_1}\leq \frac{3}{{x_1}^2}$$である。左辺は\(1\)なので、\(\displaystyle \frac{3}{{x_1}^2}\geq 1\)である。これから\(x_1 = 1\)となる。すると、\(1+x_2+x_3 = x_2x_3\)となるから、\((x_2-1)(x_3-1)=2\)となる。したがって、\((x_2-1, x_3-1) = (1, 2), (2, 1)\)であるから、\((x_2, x_3) = (2, 3), (3, 2)\)である。以上より、\(x_1\leq x_2\leq x_3\)という制限をなくして考えると、\(\underline{(x_1, x_2, x_3) = (1, 2, 3), (1, 3, 2), (2, 1, 3), (2, 3, 1), (3, 1, 2), (3, 2, 1)}\)となる。

\((2)\) \(n\geq 3\)であるとき\((x_1, x_2, x_3, \cdots, x_{n-1}, x_{n}) = (1, 1, 1, \cdots, 2, n)\)とすると、\(x_1+x_2+\cdots + x_n = 1\times(n-2)+2+n = 2n\)であり、\(x_1x_2\cdots x_n = 2n\)となるから、題意の方程式は解を持つ。どれが\(2\)と\(n\)になるかでいくつかの組み合わせがあるから、\(n\geq 3\)のときは\(1\)つ以上の解があることがわかる。これと\((1)\)から、解が\(1\)つしかない\(n\)は\(\underline{n=2}\)である。

\((3)\) 解が少なくとも\(1\)つあることは\((2)\)から示された。解が有限個であることを示す。\(x_1\leq x_2\leq \cdots \leq x_n\)とすると、\(x_1x_2\cdots x_n = x_1+x_2+\cdots +x_n \leq nx_n \)であるから、\(x_1x_2\cdots x_{n-1}\leq n\)となる。これを満たす\((x_1, x_2, \cdots, x_{n-1})\)の個数は有限個であり、その一つ一つに応じて、\(x_n\)は一意に定まる。\(x_1\leq x_2\leq \cdots \leq x_n\)という制限を外しても、解は高々\(n!\)通りしか増えず、これも有限である。以上から、与えられた方程式の解の個数は有限となる。

解説

\((1)\)はどのように解いても構わない。

\((2)\)は具体的に一つ解を求めようという発想がないと厳しい。なお、次のような考え方もある。すなわち、解が\(1\)つしかないとしたら、それは\(x_1=x_2=\cdots = x_n\)という形で、その値を\(a\)(整数)とすると、\(na=a^n\)となる。これを満たす\(n\)が\(n=2\)のみであることを証明すれば良いが、それほど難しくはない。\((2)\)が出来たら、\((3)\)も一気に解いてしまいたいところである。\(n!\)もされるので本当に有限なのかという気もするが、いくら多くても所詮は\(n!\)倍なので、無限に比べたら大したことはない。要所要所で色々な考え方を引っ張り出してこなければならない。勘、理論のどちらかが欠けても解くことが出来ない東工大らしい、良問である。

関連問題

1989年京都大学理系後期数学理学部専用問題 二次方程式と整数、解と係数の関係
1991年京都大学理系後期数学理学部専用問題 整数係数多項式
1993年東京工業大学前期数学問題4 整数の値を取る多項式

関連リンク

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