[math]1999年京都大学前期理系数学問題4

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問題

以下の問に答えよ。ただし、\(\sqrt{2}, \sqrt{3}, \sqrt{6}\)が無理数であることは使ってよい。
\((1)\) 有理数\(p, q, r\)について、\(p+q\sqrt{2}+r\sqrt{3} = 0\)ならば、\(p=q=r=0\)であることを示せ。
\((2)\) 実数係数の\(2\)次式\(f(x) = x^2+ax+b\)について、\(f(1), f(1+\sqrt{2}), f(\sqrt{3})\)のいずれかは無理数であることを示せ。

方針

\((2)\)が難しい。よくある背理法を用いる問題かと思いきや、一度手が止まると動かなくなる。なんとか\((1)\)を利用できる形に持っていくのが良い。

解答

\((1)\) 与えられた式を変形すると、\(p+q\sqrt{2}=-r\sqrt{3}\)である。両辺を二乗して、$$p^2+2q^2+2pq\sqrt{2}=3r^2$$となる。\(pq \ne 0\)とすると、\(\displaystyle \sqrt{2}=\frac{3r^2-p^2-2q^2}{2pq}\)となるが、この右辺は有理数なので、\(\sqrt{2}\)が無理数であることに矛盾する。よって\(pq=0\)である。
\((i)\) \(p = 0\)のとき、\(q\sqrt{2}+r\sqrt{3}=0\)で、\(q\ne 0\)とすると、\(\displaystyle \sqrt{2}= -\frac{r}{q}\sqrt{3}\)となる。両辺に\(\sqrt{3}\)を掛けて、\(\displaystyle \sqrt{6}=-\frac{3r}{q}\)となるが、\(\displaystyle -\frac{3r}{q}\)は有理数なので、\(\sqrt{6}\)が無理数であることに矛盾する。よって\(q=0\)となり、このとき\(r=0\)になる。
\((ii)\) \(q = 0\)のとき、\(p+r\sqrt{3}=0\)で、\(r\ne 0\)とすると、\(\displaystyle \sqrt{3} = -\frac{p}{r}\)となるが、\(\displaystyle -\frac{p}{r}\)は有理数なので、\(\sqrt{3}\)が無理数であることに矛盾する。よって\(r=0\)となり、このとき\(p=0\)である。

以上から、有理数\(p, q, r\)に対して\(p+q\sqrt{2}+r\sqrt{3}=0\)のとき、\(p=q=r=0\)である。

\((2)\) \(f(1), f(1+\sqrt{2}), f(\sqrt{3})\)がすべて有理数だと仮定し、その値を順に\(\alpha, \beta, \gamma\)とおく。$$\begin{cases}\alpha = 1+a+b \\ \beta = 3+2\sqrt{2}+a(1+\sqrt{2})+b \\ \gamma = 3+a\sqrt{3}+b\end{cases}$$となる。上の式と真ん中の式から、\(\sqrt{2}(a+2) = -\alpha+\beta-2 \)となる。また、上の式と下の式から、\((\sqrt{3}-1)a=-\alpha+\gamma-2\)となる。改めて\(-\alpha+\beta-2 =s, -\alpha+\gamma-2 = t\)と置くと、\(s, t\)は有理数で、$$\begin{eqnarray}a & = &\frac{s}{\sqrt{2}}-2\\ & = & \frac{t}{\sqrt{3}-1}\end{eqnarray}$$である。両辺に\(\sqrt{2}\)を掛けて、$$s-2\sqrt{2} = \frac{\sqrt{3}+1}{2}\cdot \sqrt{2}t$$であるが、さらに\(\sqrt{2}\)を掛けると、$$s\sqrt{2}-4=\sqrt{3}t+t$$となる。\((1)\)から\(s=t=t+4=0\)となるが、これを満たす有理数\(s, t\)は存在しない。よって、背理法から\(f(1), f(1+\sqrt{2}). f(\sqrt{3})\)の少なくとも\(1\)つは無理数になる。

解説

\((1)\)はよく知られた事実で、それほど難しくはない。問題が\((2)\)で、取りあえず背理法という発想でいい。そこからだが、うまく計算しないと、\((1)\)を拡張した

有理数\(p, q, r, s\)について、\(p+q\sqrt{2}+r\sqrt{3}+s\sqrt{6}=0\)ならば、\(p=q=r=s=0\)である

という命題を示せば良いことになるが、これを示すのが中々難しい。実は上の命題は正しいが、ここで手が止まってしまう。解答のように、適当に文字を置き換えていくことである程度見通しよく解決出来る。上の命題も示しておこう。\(p+q\sqrt{2}+r\sqrt{3}+s\sqrt{6}=0\)を変形して、\(p+q\sqrt{2}=-\sqrt{3}(r+s\sqrt{2})\)となる。\(r+s\sqrt{2}\ne 0\)ならば$$\begin{eqnarray}\sqrt{3} & = & -\frac{p+q\sqrt{2}}{r+s\sqrt{2}}\\ & = & \frac{(p+q\sqrt{2})(r-s\sqrt{2})}{r^2-2s^2}\\ & = & \frac{pr-2sq+(-ps+qr)\sqrt{2}}{r^2-2s^2}\end{eqnarray}$$となる。上の式は\(p^{\prime}+q^{\prime}\sqrt{2}+r^{\prime}\sqrt{3}=0\)の形であるが、\(\sqrt{3}\)の係数が\(1\)なので、\((1)\)から矛盾が生じる。よって、\(r+s\sqrt{2}=0\)で、\(r=s=0\)、このとき\(p+q\sqrt{2}=0\)で、\(p=q=0\)となる。解答を読むと難しくはないが、試験場でこれが出来るかと言われると厳しい。

関連問題

1989年京都大学理系後期数学理学部専用問題 二次方程式と整数、解と係数の関係
1991年京都大学理系後期数学理学部専用問題 整数係数多項式

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