[math]2010年前期東京医科歯科大学数学問題3

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問題

\(xy\)平面において、次の円\(C\)と楕円\(E\)を考える。$$\begin{eqnarray}C: x^2+y^2=1\\ E: x^2+\frac{y^2}{2}=1\end{eqnarray}$$また、\(C\)上の点\(P(s, t)\)における\(C\)の接線を\(l\)とする。このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(l\)の方程式を\(s, t\)を用いて表わせ。
以下、\(t > 0\)とし、\(E\)が\(l\)から切り取る線分の長さを\(L\)とする。
\((2)\) \(L\)を\(t\)を用いて表わせ。
\((3)\) \(P\)が動くとき、\(L\)の最大値を求めよ。
\((4)\) \(L\)が\((3)\)で求めた最大値をとるとき、\(l\)と\(E\)が囲む領域のうち、原点を含まない領域の面積を\(A\)とする。\(A\)の値を求めよ。

方針

解答

\((1)\) \(l\)の方程式は\(\underline{sx+ty=1}\)となる。

\((2)\) \(l\)の方程式を\(y\)について解くと、\(\displaystyle y = \frac{1-sx}{t}\)である。これを\(E\)の方程式に代入すると、\(s^2+t^2=1\)に注意して、$$\begin{eqnarray}x^2+\frac{(1-sx)^2}{2t^2} & = & 1 \\ 2t^2x^2+s^2x^2-2sx+1-2t^2 & = & 0 \\ (2t^2+s^2)x^2-2sx+1-2t^2 & = & 0 \\ (t^2+1)x^2-2sx + 1-2t^2 & = & 0 \tag{a}\end{eqnarray}$$である。この\(x\)についての二次方程式の判別式は、$$\begin{eqnarray}D^{\prime} & = & s^2-(t^2+1)(1-2t^2)\\ & = & (1-t^2)-(t^2-2t^4+1-2t^2)\\ & = & 2t^4\end{eqnarray}$$で、正となる。そこで\(x\)についての二次方程式\((a)\)の\(2\)つの解を\(\alpha, \beta\)とすると、\(L\)は点\(\displaystyle \left(\alpha, \frac{1-t\alpha}{t}\right), \left(\beta, \frac{1-s\beta}{t}\right)\)の間の距離であるから、$$\begin{eqnarray}L^2 & = & (\beta-\alpha)^2+\left(\frac{1-s\beta}{t}-\frac{1-s\alpha}{t}\right)^2\\ & = & (\beta-\alpha)^2\left(1+\frac{s^2}{t^2}\right)\\ & = & \frac{1}{t^2}(\beta-\alpha)^2\end{eqnarray}$$となる。一方、解と係数の関係から、$$\begin{cases}\displaystyle \alpha+\beta = \frac{2s}{t^2+1}\\ \displaystyle \alpha\beta = \frac{1-2t^2}{t^2+1}\end{cases}$$である。したがって、$$\begin{eqnarray}(\beta-\alpha)^2 & = & (\alpha+\beta)^2-4\alpha\beta \\ & = & \frac{4s^2}{(t^2+1)^2}-\frac{4(1-2t^2)}{t^2+1}\\ & = & 4\cdot \frac{1-t^2-(t^2+1)(1-2t^2)}{(t^2+1)^2}\\ & = & \frac{8t^4}{(t^2+1)^2}\end{eqnarray}$$である。以上より、$$\begin{eqnarray}L^2 & = & \frac{8t^2}{(t^2+1)^2}\\ L & = & \underline{\frac{2\sqrt{2}t}{t^2+1}}\end{eqnarray}$$が答えとなる。

\((3)\) \((2)\)と、相加平均が相乗平均よりも大きいことから、$$\begin{eqnarray}L & = & \frac{2\sqrt{2}}{t+\frac{1}{t}}\\ & \leq & \frac{2\sqrt{2}}{2\sqrt{t\cdot \frac{1}{t}}}\\ & = & \sqrt{2}\end{eqnarray}$$である。等号は\(\displaystyle t = \frac{1}{t}\)、つまり\(t=1\)のときに成立する。よって、\(L\)の最大値は\(\underline{\sqrt{2}}\)となる。

\((4)\) \(t=1\)のとき\(s=0\)であり、\(l\)と\(E\)の囲む領域のうち、原点を含まない領域は次の図のようになる。

領域の図示。

この図を\(y\)軸方向に\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\)倍拡大すると、楕円\(E\)は円になり、囲まれる部分の面積も\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\)倍される。ところが、この変換後の領域の面積は、図から簡単に求めることができて、半円の面積\(\displaystyle \frac{\pi}{2}\)から底辺が\(\sqrt{2}\)で高さ\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\)の三角形の面積を除き、さらに角度\(45^\circ\)の扇形を\(2\)つ除いたものであるから、$$\frac{\pi}{2}-\frac{1}{2}\cdot \sqrt{2}\cdot \frac{1}{\sqrt{2}}-2\cdot\frac{\pi}{4}\cdot 1\cdot1 \frac{1}{2} = \frac{\pi}{4}-\frac{1}{2}$$である。\(A\)の値はこれを\(\sqrt{2}\)倍したものだから、\(\displaystyle \underline{A = \frac{\sqrt{2}(\pi-2)}{4}}\)となる。

\(\displaystyle \frac{1}{\sqrt{2}}\)倍拡大図。

解説

\((1)\) 結果だけでも構わないであろう。勉強のため証明はここでしておく。円\(C\)上の点\((s, t) (s^2+t^2=1)\)と原点を通る直線の傾きは\(\displaystyle \frac{t}{s}\)である。この直線に垂直な直線の傾きは\(\displaystyle -\frac{s}{t}\)だから、\((s, t)\)における\(C\)の接線は$$y = -\frac{s}{t}(x-s)+t$$であり、整理すると\(sx+ty=1\)となる。

\((2)\) メインは計算部分になる。解と係数の関係を用いる。整理してから最後に代入するとミスを減らせる。

\((3)\) 微分でも良いが、\(L\)の式をよく見ると相加平均と相乗平均の関係が使えることに気がつく。等号成立条件を忘れないようにする。

\((4)\) 楕円を円にしないでそのまま積分してもよい。

この手の問題では前の問題での結果を次の問題で用いるので、計算ミスは厳しく減点されても文句はいえない。\((4)\)での楕円から円への変換も計算ミスを防ぐ工夫の一つである。

関連問題

1988東京医科歯科大学数学問題1 二次曲線と面積、微分
2021年東京工業大学前期数学問題2 楕円と直線
2021年東京医科歯科大学医学科数学問題3 二次曲線と接線、双曲線

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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