[math]1998年東京大学前期数学問題6

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問題

\(xyz\)座標空間に\(5\)点\(A(1, 1, 0), B(-1, 1, 0), C(-1, -1, 0), D(1, -1, 0), P(0, 0, 3)\)をとる。四角錐\(PABCD\)の\(x^2+y^2\geq 1\)をみたす部分の体積を求めよ。

方針

立体の体積を求める基本は、軸に平行な平面で切り、切り口の面積を求めてから足し上げる(積分する)ことである。

解答

\(z = t\ (0\leq t\leq 3)\)で考えている立体を切る。四角錐の切り口は正方形で、その一辺の長さを\(s\)とすると、\(\displaystyle 1:3 = \frac{s}{2}:3-t\)だから、\(\displaystyle s = \frac{2}{3}(3-t)\)となる。

概略図。

\(x^2+y^2\geq 1\)を満たす部分が存在するのは、\(\displaystyle \frac{s}{\sqrt{2}}\geq 1\)のときである。これ\(\displaystyle s = \frac{2}{3}(3-t)\)を代入すると、\(x^2+y^2\geq 1\)を満たす部分が存在するのは、\(\displaystyle t\leq 3-\frac{3}{\sqrt{2}}\)のときである。さて、次の図のように角度\(\theta\)を考える。

斜線部の面積が\(\displaystyle \frac{S(t)}{4}\)になる。

斜線部の面積が考えている立体の\(z = t\)による切り口であるから、その面積を\(S(t)\)とすると、$$\frac{S(t)}{4} = \left(\frac{s}{2}\right)^2-\frac{1}{2}\cdot \frac{s}{2}\sin{\theta}\times 2-\frac{1}{2}\left(\frac{\pi}{2}-2\theta\right)$$である。これは、\(1\)辺が\(\displaystyle \frac{s}{2}\)の正方形から三角形\(2\)つと扇形を除いたものである。求める体積は$$\int_{0}^{3-\frac{3}{\sqrt{2}}}{S(t)dt}$$である。\(\displaystyle \cos{\theta} = \frac{s}{2}\)を用いて\(S(t)\)を書き直すと、$$\begin{eqnarray}S(t) & = & s^2-2s\sin{\theta}-\pi + 4\theta \\ & = & 4\cos^2{\theta}-4\cos{\theta}\sin{\theta}-\pi +4\theta \end{eqnarray}$$となる。\(\displaystyle \cos{\theta} = \frac{s}{2} = \frac{3-t}{3}\)であり、\(\displaystyle 0\leq t\leq 3-\frac{3}{\sqrt{2}}\)だから、\(\displaystyle 0\leq \theta\leq \frac{\pi}{4}\)である。また、\(\displaystyle -\sin{\theta}d\theta = -\frac{dt}{3}\)だから、$$\begin{eqnarray}\int_{0}^{3-\frac{3}{\sqrt{2}}}{S(t)dt} & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{4}}{3\sin{\theta}(4\cos^2{\theta}-4\cos{\theta}\sin{\theta}-\pi+4\theta)}\\ & = & 12\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}{\cos^2{\theta}\sin{\theta}-\sin^2{\theta}\cos{\theta}}-3\pi\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}{\sin{\theta}d\theta}+12\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}{\theta\sin{\theta}d\theta} \\ & = & 4[-\cos^3{\theta}-\sin^3{\theta}]_{0}^{\frac{\pi}{4}}-3\pi[-\cos{\theta}]_{0}^{\frac{\pi}{4}}+12[-\theta\cos{\theta}]_{0}^{\frac{\pi}{4}}-12\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}{(-\cos{\theta})d\theta}\\ & = & -4\left(\frac{\sqrt{2}}{4}-1+\frac{\sqrt{2}}{4}-0\right)+3\pi\left(\frac{\sqrt{2}}{2}-1\right)+12\left(-\frac{\pi\sqrt{2}}{8}-0\right)+12[\sin{\theta}]_{0}^{\frac{\pi}{4}}\\ & = & -\sqrt{2}+4-\sqrt{2}+\frac{3\pi\sqrt{2}}{2}-3\pi-\frac{3\pi\sqrt{2}}{2}+6\sqrt{2}\\ & = & \underline{4\sqrt{2}+4-3\pi}\end{eqnarray}$$となる。

解説

とても東大らしい問題で、計算もたっぷり。初めてこのタイプの問題にチャレンジするものには厳しいが、求積についての練習をきちんとしているものにとってはなんとか時間内に解くことの出来るレベルである。切り口の図形は比較的把握しやすく、計算ミスがあったとしても部分点はとりたい問題である。立体の体積を求めるときの大基本は、軸に平行な平面で立体を切り、その切り口の面積を求めることである。ここでは、\(z\)に平行な平面で立体を切る。切り口が円と正方形だから図は簡単に書けるが、円弧が現れるので多少ややこしくなる。こういうときは文字をどんどんおいて、後で積分するときに対応を一つ一つ合わせていけば良い。この場合扇形が出てくるので、角度\(\theta\)で積分するのが簡単である。\(S(\theta)\)の積分計算もそれほど複雑にならずに済む。

図形、計算、どれをとっても受験生の実力を測ることの出来る良問である。東京大学では立体の感覚を見るためにか体積を求める問題が多く出題されている。京都大学ではどちらかというと代数的な問題が出題されることが多いが、受験問題にも校風が現れてくるのは面白い。\(2005\)年度の前期に同じく東京大学の理系で本質的に上の問題と同じ問題が出題されている。この\(1998\)年度の問題の場合\(x\)軸か\(y\)軸に垂直に切ると、計算は上の解答よりも簡単になるが、その考え方はあまり汎用性がない。円弧が現れたとしても解答のように角度をおいて置換積分を行う方法も知っておかないと、\(2005\)年度の方には太刀打ちできないだろう。

関連問題

1983年東京大学理系数学第6問 斜回転体の体積
2006年度前期東京医科歯科大学数学問題2 四面体、空間座標、体積
2010年東京医科歯科大学前期数学問題2 空間図形と体積

関連リンク

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