[math]1997年東京工業大学理系前期数学問題2

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問題

\((1)\) 極限値\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\sum_{k=n}^{2n}{\frac{1}{k}}}\)を求めよ。
\((2)\) 任意の正数\(a\)に対して、\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\sum_{k=n}^{2n}{\frac{1}{a+k}}}\)は\((1)\)と同じ極限値をもつことを証明せよ。

方針

\((1)\)は区分求積法を用いる。\((2)\)が問題になるが、ガウス記号を持ち出すと良い。

解答

\((1)\) 区分求積法から、$$\begin{eqnarray}\sum_{k=n}^{2n}{\frac{1}{k}} & = & \sum_{k=0}^{n}{\frac{1}{n+k}}\\ & = & \frac{1}{n}\sum_{k=1}^{n}{\frac{1}{1+\frac{k}{n}}}\\ & \to & \int_{0}^{1}{\frac{1}{1+x}dx}\ (n\to\infty)\\ & = & [\log{(1+x)}]_{0}^{1}\\ & = & \underline{\log{2}}\end{eqnarray}$$となる。

\((2)\) 与えられた式は\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\sum_{k=0}^{n}{\frac{1}{n+a+k}}}\)である。\(a\)を超えない最大の整数を\(m\)とすると、\(m\leq a< m+1\)である。これを変形すると、$$\frac{1}{n+m+1+k}<\frac{1}{n+a+k}\leq \frac{1}{n+m+k}$$となる。したがって、$$\sum_{k=0}^{n}{\frac{1}{n+m+1+k}}<\sum_{k=0}^{n}{\frac{1}{n+a+k}}\leq \sum_{k=0}^{n}{\frac{1}{n+m+k}}$$である。最左辺は、$$\begin{eqnarray} & = & \sum_{k=0}^{n+m}{\frac{1}{n+m+k}}-\frac{1}{n+m}-\sum_{k=1}^{m}{\frac{1}{n+m+n+k}}\\ & \to & \log{2}-0-0\ (n\to\infty)\\ & = & \log{2}\end{eqnarray}$$であり、最右辺は、$$\begin{eqnarray}& = & \sum_{k=0}^{n+m}{\frac{1}{n+m+k}}-\sum_{k=1}^{m}{\frac{1}{n+m+n+k}}\\ & \to & \log{2}-0\ (n\to \infty)\\ & = & \log{2}\end{eqnarray}$$となるから、はさみうちの原理より、求める極限値は確かに\((1)\)と同じ値になる。

解説

\((1)\)は基本的である。区分求積法については、一般の積分可能な関数\(f(x)\)に対して、$$\frac{1}{n}\sum_{k=0}^{n}{f\left(\frac{k}{n}\right)}$$が\(n\to\infty\)の極限で\(\displaystyle \int_{0}^{1}{f(x)dx}\)と一致する。積分の定義に戻れば当たり前だが、ポイントは自分でこの形を上手く作り出すことになる。ちなみに、\(k=1\)であったり、\(n\)が\(n+1\)になっていても結果は変わらない。極限をとるので細かいことにこだわる必要はない。(1)は区分求積法がそのまま使える。

\((2)\)が問題で、\(a\)がどんなに大きい数、例えば一億であっても、\((1)\)と同じ極限になることを示せ、と言っている。\(a\)が実数のままでは扱いづらいので解答では整数部分だけを考え、はさみうちの原理を用いることにする。そうすると、和の計算が行えるので便利である。解答中の式変形についての補足である。たとえば、最右辺は$$\frac{1}{n+m}+\frac{1}{n+m+1}+\cdots +\frac{1}{n+m+n}$$で、これを変形すると$$\frac{1}{n+m}+\frac{1}{n+m+1}+\cdots \frac{1}{n+m+n+m}-\left(\frac{1}{n+m+n+1}+\frac{1}{n+m+n+2}+\cdots +\frac{1}{n+m+n+m}\right)$$である。シグマ記号で書くと、$$\sum_{k=0}^{n+m}{\frac{1}{n+m+k}}-\sum_{k=1}^{m}{\frac{1}{n+m+n+k}}$$となる。第一項は\((1)\)と同じ極限値に、第二項は\(k\)が\(m\)までの和になっているので、極限をとると各項が\(0\)になる。最左辺についても同様になる。\((1)\)の利用がポイントであった。

関連問題

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