[math]1998年東京大学前期理系数学問題2

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問題

\(n\)を正の整数とする。連立不等式$$\begin{cases}x+y+z\leq n \\ -x+y-z\leq n \\ x-y-z\leq n\\ -x-y+z\leq n\end{cases}$$をみたす\(xyz\)空間の点\(P(x, y, z)\)で、\(x, y, z\)がすべて整数であるものの個数を\(f(n)\)とおく。極限\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{\frac{f(n)}{n^3}}\)を求めよ。

方針

\(f(n)\)は具体的に求めることができる。

解答

$$\begin{cases}X = -x+y-z\\ Y = x-y-z\\ Z = -x-y+z\end{cases}$$とすると、$$X+Y+Z = -(x+y+z)$$であるから、問題の条件は$$\begin{cases}X+Y+Z\geq -n\\ X\leq n\\ Y\leq n\\ Z\leq n\end{cases} \tag{a}$$となる。また、\(\displaystyle x = -\frac{X+Z}{2}, y = -\frac{Y+Z}{2}, z = -\frac{X+Y}{2}\)である。したがって、\(X, Y, Z\)はすべて偶数であるか、またはすべて奇数である。さらに、\(n-X=a, n-Y=b, n-Z =c\)とおくと、条件\((a)\)は$$\begin{cases}a+b+c\leq 4n\\ a\geq 0\\ b\geq 0\\ c\geq 0\end{cases} \tag{b}$$となる。\(a, b, c\)はすべて偶数であるか、またはすべて奇数である。条件\((b)\)を満たすような\((a, b, c)\)の個数が\(f(n)\)となる。
\((i)\) \(a, b, c\)がすべて偶数のとき、\(a = 2p, b = 2q, c = 2r\)とおく。条件\((b)\)は$$\begin{cases}p+q+r\leq 2n\\ p\geq 0\\ q\geq 0\\ r\geq 0\end{cases} \tag{c}$$となる。\(s=2n-(p+q+r)\)とすると、条件\((c)\)は$$\begin{cases}p+q+r+s=2n \\ p\geq 0\\ q\geq 0\\ r\geq 0\\ s\geq 0\end{cases} \tag{d}$$となる。条件\((d)\)を変形すると、$$\begin{cases}(p+1)+(q+1)+(r+1)+(s+1) = 2n+4\\ p+1\geq 1\\ q+1\geq 1 \\ r+1\geq 1 \\ s+1\geq 1\end{cases}$$となる。したがって、条件\((e)\)を満たす\((p, q, r, s)\)の組の個数を求めれば良い。これは、\(2n+4\)個の球を並べて、\(2n+3\)個の隙間に\(3\)つの区切りを入れ、左から順に\(p+1, q+1, r+1, s+1\)と定めれば良く、\(_{2n+3}{\mathbb{C}}_{3}\)通りである。
\((ii)\) \(a, b, c\)がすべて奇数のとき、\(a = 2p+1, b = 2q+1, c = 2r+1\)とおく。条件\((b)\)は$$\begin{cases}2(p+q+r)+3\leq 4n\\ p\geq 0\\ q\geq 0\\ r\geq 0\end{cases}$$となる。\(p, q, r\)はすべて整数なので、これは$$\begin{cases}p+q+r\leq 2n-2\\ p\geq 0\\ q\geq 0\\ r\geq 0\end{cases} \tag{c’}$$と同値である。\(s = 2n-2-(p+q+r)\)とおくと、条件\((c^{\prime})\)は$$\begin{cases}p+q+r+s = 2n-2\\ p\geq 0\\ q\geq 0\\ r\geq 0\\ s\geq 0\end{cases} \tag{d’}$$となる。条件\((d^{\prime})\)を変形すると、$$\begin{cases}(p+1)+(q+1)+(r+1)+(s+1) = 2n+2\\ p+1\geq 1\\ q+1\geq 1\\ r+1\geq 1\\ s+1\geq 1\end{cases} \tag{e’}$$となる。したがって、条件\((e^{\prime})\)を満たす\((p, q, r, s)\)の組の個数を求めれば良い。これは、\(2n+2\)個の球を並べて、その\(2n+1\)個の隙間に\(3\)つの区切りを入れ、左から順に\(p+1, q+1, r+1, s+1\)と定めれば良く、\(_{2n+1}{\mathbb{C}}_{3}\)通りである。

以上\((i), (ii)\)から、$$\begin{eqnarray}f(n) & = & _{2n+3}{\mathbb{C}}_{3} + _{2n+1}{\mathbb{C}}_{3}\\ & = & \frac{(2n+3)(2n+2)(2n+1)}{6}+\frac{(2n+1)(2n)(2n-1)}{6}\end{eqnarray}$$であるから、\(n^3\)で割って極限を取ると、\(\displaystyle \frac{8}{6}\cdot2 = \underline{\frac{8}{3}}\)となる。

解説

解答中にはいくつか大事な考え方が現れている。先ず、式\((a)\)を導く所であるが、問題文には、\(-x+y-z, x-y-z, -x-y+z\)などと言う正体不明のものが現れている。見たことがない形なので、取りあえず文字で\(X, Y, Z\)と置いてしまう。すると、式\((a)\)を得る。ここからが難しいが、解答のようにさらに置き換えを進めてみる。普通はそもそも\(X, Y, Z\)と置き換えないで、\(z = k\)などと置いて\(xy\)座標平面上で考える。式\((b)\)を得たらあとは偶奇に分けて考える。式\((c)\)から式\((d)\)、および式\((d)\)から式\((e)\)への置き換えだが、これは比較的頻出パターンと言っても良い。身に付けると応用が広がる。最後は極限だが、これは単なるおまけである。極限を求めよと書いてあると、直接\(f(n)\)が求められることに気がつきにくくなる。そういう意味では意地悪な聞き方だともいえよう。

解答では整理した形で記述されているので難しいと思うものもいるかも知れないが、考え方自体は応用が利くものだから、復習すると良い。問題自体が解くことで大事な考え方やものの見方を知ることが出来るようになっている。

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