[math]1993年東京大学理系前期数学問題5

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問題

\(1\)と\(0\)を\(5\)個並べた列\(10110\)をある人が繰り返し書き写すとする。ただし、この列を\(S\)で表し、これの第\(1\)回目の写しを\(S_1\)で表すとき、第\(2\)回目に書き写すときに\(S_1\)を書き写す。\(S_1\)の写しを\(S_2\)とするとき、第\(3\)回目には\(S_2\)を書き写す。以下、同様に続ける。
この人が\(0\)を\(1\)に写しまちがえる確率は\(p\ (0<p<1)\)であり、\(1\)を\(0\)に写しまちがえる確率は\(q\ (0<q<1)\)であるが、それ以外の写しまちがえはないものとする。第\(n\)回目の写し\(S_n\)が\(S\)に一致する確率を\(C(n)\)とするとき、極限値\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{C(n)}\)を求めよ。

方針

各文字について個別に考えるのが良い。

解答

\(10110\)について、左から\(1, 3, 4\)番目の数字が第\(n\)回目の書き写し後に\(1\)である確率を\(p_n\)とする。\(p_0 = 1\)であり、第\(1\)回目の書き写し後、数字が\(1\)である確率は第\(1\)回目でまちがえない確率であるから、\(p_1 = 1-q\)である。第\(n+1\)回目の書き写しの後、数字が\(1\)である確率は第\(n\)回目の写しの後の数字が\(1\)で、それを写しまちがえないときと、第\(n\)回目の写しの後の数字が\(0\)で、それを\(1\)に写しまちがえるときがある。したがって、$$p_{n+1} = (1-q)p_n+p(1-p_n)$$である。変形して、$$p_{n+1}-\frac{p}{p+q} = (1-p-q)\left(p_n-\frac{p}{p+q}\right)$$となるから、$$p_n-\frac{p}{p+q} = (1-p-q)^{n-1}\left(1-q-\frac{p}{p+q}\right)$$である。よって、$$p_n = \frac{p+q(1-p-q)^n}{p+q} \tag{a}$$となる\((n=0, 1, 2, \cdots)\)。これは\(1-p-q=0\)のときも成り立つ。

同様に、\(10110\)について、左から\(2, 5\)番目の数字が第\(n\)回目の書き写しの後に\(0\)である確率を\(q_n\)とする。\(q_0 = 1\)であり、第\(1\)回目の書き写し後、数字が\(0\)である確率は第\(1\)回目で写しまちがえない確率であるから、\(q_1 = 1-p\)である。第\(n+1\)回目の書き写しの後、数字が\(0\)である確率は第\(n\)回目の写しの後の数字が\(0\)で、それを写しまちがえないときと、第\(n\)回目の写しの後の数字が\(1\)で、それを\(0\)に写しまちがえるときがある。したがって、$$q_{n+1} = (1-p)q_n + q(1-q_n)$$である。変形して、$$q_{n+1} -\frac{q}{p+q} = (1-p-q)\left(q_n-\frac{q}{p+q}\right)$$となるから、$$q_n-\frac{q}{p+q}=(1-p-q)\left(q_n-\frac{q}{p+q}\right)$$である。よって、$$q_n = \frac{q+p(1-p-q)^n}{p+q} \tag{b}$$となる\((n=0, 1, 2, \cdots)\)。これは\(1-p-q = 0\)のときも成り立つ。

\(C(n) = {p_n}^3{q_n}^2\)である。今、\(0<p<1, 0<q<1\)から、\(-1 < 1-p-q < 1\)である。したがって、式\((a), (b)\)から\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{p_n} = \frac{p}{p+q}, \lim_{n\to\infty}{q_n} = \frac{q}{p+q}\)である(\(1-p-q = 0\)のときも成り立つ)。よって、$$\begin{eqnarray}\lim_{n\to\infty}{C(n)} & = & \lim_{n\to\infty}{{p_n}^3{q_n}^2}\\ & = & \lim_{n\to\infty}{{p_n}^3}\lim_{n\to\infty}{{q_n}^2}\\ & = & \frac{p^3}{(p+q)^3}\frac{q^2}{(p+q)^2}\\ & = & \underline{\frac{p^3q^2}{(p+q)^5}}\end{eqnarray}$$となる。

解説

数字を全体として考えるとかえって難しくなる。個々の数字に着目し、漸化式を立てる。漸化式はふたつ必要になるが、やることはどちらも同じである。極限を求めるという問われ方であるが、\(C(n)\)そのものを求めてしまった方が楽である。書き写しという言葉に一瞬ギョッとするが、冷静に考えることができればそれほど難しくはない。

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