[math]2022年東京医科歯科大学医学科数学問題3

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問題

曲線\(C: y = f(x)\ \ (0\leq x<1)\)が次の条件を満たすとする。
\(\cdot f(0) = 0\)
\(\cdot\) \(0<x<1\)のとき\(f^{\prime}(x) > 0\)
\(\cdot\) \(0<a<1\)を満たすすべての実数\(a\)について、曲線\(C\)上の点\(P(a, f(a))\)における接線と直線\(x=1\)との交点を\(Q\)とするとき、\(PQ=1\)
このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(f^{\prime}(x)\)を求めよ。
\((2)\) \(\displaystyle \int_{0}^{\frac{1}{2}}{(1-x)f^{\prime}(x)dx}\)の値を求めよ。
\((3)\) 曲線\(C\)と\(x\)軸、直線\(x=1\)、直線\(\displaystyle y = f\left(\frac{1}{2}\right)\)で囲まれた図形の面積を求めよ。

方針

誘導に従う。\((3)\)は立式してみると\((2)\)が使えることに気がつく。

解答

\((1)\) \(C\)の点\(P\)における接線は\(y=f^{\prime}(a)(x-a)+f(a)\)となる。\(x=1\)として、\(Q\)の\(y\)座標は\(f^{\prime}(a)(1-a)+f(a)\)である。したがって、$$\begin{eqnarray}PQ^2 & = & (1-a)^2 + (f^{\prime}(a)(1-a)+f(a)-f(a))^2\\ & = & (1-a)^2(1+(f^{\prime}(a))^2)\end{eqnarray}$$である。\(PQ=1\)だから、$$(1-a)^2(1+(f^{\prime}(a))^2)=1$$であり、変形して$$f^{\prime}(a) = \sqrt{\frac{1-(1-a)^2}{(1-a)^2}} = \frac{\sqrt{a(2-a)}}{1-a}$$となる。\(0<a<1\)を満たすすべての実数\(a\)でこの式が成り立つので、\(\displaystyle \underline{f^{\prime}(x) = \frac{\sqrt{x(2-x)}}{1-x}}\)である。

\((2)\) \((1)\)から$$\begin{eqnarray}\int_{0}^{\frac{1}{2}}{(1-x)f^{\prime}(x)dx} & = & \int_{0}^{\frac{1}{2}}{\sqrt{x(2-x)}dx} \\ & = & \int_{0}^{\frac{1}{2}}{\sqrt{-\left(x-1\right)^2+1}dx}\end{eqnarray}$$である。この積分は、下図の斜線部の面積と等しく、\(\displaystyle \underline{\frac{\pi}{6}-\frac{\sqrt{3}}{8}}\)となる。

中心角\(\displaystyle \frac{\pi}{6}\)の扇形から、底辺\(\displaystyle \frac{1}{2}\)、高さ\(\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2}\)の三角形を除いた面積になる。

\((3)\) 下図から、求める面積は$$\begin{eqnarray}\int_{0}^{\frac{1}{2}}{f(x)dx}+\frac{1}{2}f\left(\frac{1}{2}\right) & = & \int_{0}^{\frac{\pi}{2}}{(-(1-x))^{\prime}f(x)dx}+\frac{1}{2}f\left(\frac{1}{2}\right)\\ & = & \left[-(1-x)f(x)\right]_{0}^{\frac{1}{2}}+\int_{0}^{\frac{1}{2}}{(1-x)f^{\prime}(x)dx}+\frac{1}{2}f\left(\frac{1}{2}\right)\\ & = & -\frac{1}{2}f\left(\frac{1}{2}\right)+\frac{\pi}{6}-\frac{\sqrt{3}}{8} + \frac{1}{2}f\left(\frac{1}{2}\right)\\ & = & \underline{\frac{\pi}{6}-\frac{\sqrt{3}}{8}}\end{eqnarray}$$となる。

\(y = f(x)\)と囲まれる部分の概略図。

解説

\((3)\)は\((2)\)をヒントにして、部分積分法を用いてみると、うまく計算できる。部分積分法に気がつけば難しいところはない。

この曲線\(C\)について、各点からの接線と\(x=1\)軸との距離が一定になっている。このような曲線を牽引線(Tractrix)という。

Tractrix - Wikipedia

実際に\(f(x)\)を求めておこう。$$f^{\prime}(x) = \frac{\sqrt{-(1-x)^2+1}}{1-x}$$であるから、\(f(0) = 0\)に注意すると、$$f(x) = \int_{0}^{x}{\frac{\sqrt{-(1-t)^2+1}}{1-t}dt}$$である。この積分で\(s = \sqrt{-(1-t)^2+1}\)と置くと、\((1-t)^2=1-s^2\)であり、\(0<t<1\)だから\(1-t = \sqrt{1-s^2}\)である。微分して、\(\displaystyle -dt = \frac{-sds}{\sqrt{1-s^2}}\)となる。したがって、$$\begin{eqnarray}f(x) & = & \int_{0}^{\sqrt{-(1-x)^2+1}}{\frac{s}{\sqrt{1-s^2}}\cdot \frac{s}{\sqrt{1-s^2}}ds}\\ & = & \int_{0}^{\sqrt{-(1-x)^2+1}}{\frac{s^2}{1-s^2}ds}\\ & = & \int_{0}^{\sqrt{-(1-x)^2+1}}{\frac{s^2-1+1}{1-s^2}ds}\\ & = & \int_{0}^{\sqrt{-(1-x)^2+1}}{-dx} + \frac{1}{2} \int_{0}^{\sqrt{-(1-x)^2+1}}{\left(\frac{1}{1+s}+\frac{1}{1-s}\right)ds}\\ & = & -\sqrt{-(1-x)^2+1} + \left[\log{\left|\frac{1+s}{1-s}\right|}\right]_{0}^{\sqrt{-(1-x)^2+1}}\\ & = & -\sqrt{-(1-x)^2+1} + \log{\left|\frac{1+\sqrt{-(1-x)^2+1}}{1-\sqrt{-(1-x)^2+1}}\right|}\end{eqnarray}$$となる。これを求めたからといって、特に\((3)\)で良いことがあるわけではない。

関連問題

歯学科、保健衛生学科では以下の問題が出題されている。

曲線\(C: y = f(x)\ \ (0<x\leq1)\)が次の条件を満たすとする。
\(\cdot f(1) = 0\)
\(\cdot\) \(0<x<1\)のとき\(f^{\prime}(x) > 0\)
\(\cdot\) \(0<a<1\)を満たすすべての実数\(a\)について、曲線\(C\)上の点\(P(a, f(a))\)における接線と\(y\)軸との交点を\(Q\)とするとき、\(PQ=1\)
このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(f^{\prime}(x)\)を求めよ。
\((2)\) \(\displaystyle \int_{\frac{1}{2}}^{1}{xf^{\prime}(x)dx}\)の値を求めよ。
\((3)\) 曲線\(C\)と\(x\)軸、直線\(x=1\)、直線\(\displaystyle y = f\left(\frac{1}{2}\right)\)で囲まれた図形の面積を求めよ。

解答もほとんど同じなので、上の解答を参照にすると良い。その他の関連問題は以下になる。
1999年東京工業大学後期数学問題1 積分不能な関数の積分値
2011年東京医科歯科大学前期数学問題2 微分と図形
2012年東京医科歯科大学前期数学問題3 逆関数の積分とはさみうちの原理

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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