[math]1998年京都大学前期文系問題3

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問題

\(a, b\)は実数で\(a\ne b, ab\ne 0\)とする。このとき不等式$$\frac{x-b}{x+a}-\frac{x-a}{x+b} > \frac{x+a}{x-b}-\frac{x+b}{x-a}$$を満たす実数\(x\)の範囲を求めよ。

方針

同値変形を繰り返して、整理する。

解答

\(x \ne \pm a, \pm b\)に注意する。与えられた不等式を変形すると、$$\frac{x-b}{x+a}+\frac{x+b}{x-a} > \frac{x+a}{x-b}+\frac{x-a}{x+b} \tag{a}$$となる。式\((a)\)を示すことを目標にする。整理すると、式\((a)\)は$$\frac{2(x^2+ab)}{x^2-a^2} > \frac{2(x^2+ab)}{x^2-b^2}$$となる。左辺と右辺の差を作ると、$$\begin{eqnarray}2(x^2+ab)\left(\frac{1}{x^2-a^2}-\frac{1}{x^2-b^2}\right) & = & \frac{2(a^2-b^2)(x^2+ab)}{(x^2-a^2)(x^2-b^2)} > 0\end{eqnarray}$$となる。両辺に\((x^2-a^2)^2(x^2-b^2)^2 > 0\)を掛けて、$$(a^2-b^2)(x^2-a^2)(x^2-b^2)(x^2+ab) > 0 \tag{c}$$となる。式\((c)\)を満たすような\(x\)の範囲を求める。

\((i)\) \(a>b>0\)のとき、\(a^2-b^2 > 0, x^2+ab > 0\)だから、求める範囲は\(x< -a, -b < x < b, a<x\)となる。
\((ii)\) \(b > a > 0\)のとき、\(a^2-b^2 < 0, x^2+ab > 0\)だから、求める範囲は\(-b < x < -a, a< x < b\)となる。
\((iii)\) \(a < b < 0\)のとき、\(a^2-b^2 > 0, x^2+ab > 0\)だから、求める範囲は\(x < a, b < x < -b, -a < x\)となる。
\((iv)\)\(b < a < 0\)のとき、\(a^2-b^2 < 0, x^2+ab > 0\)だから、求める範囲は\(b < x < a, -a < x < -b\)となる。
\((v)\) \(a > 0 > -a > b\)のとき、\(a^2-b^2 < 0\)だから、求める範囲は\(b < x < -\sqrt{-ab},-a < x < a, \sqrt{-ab} < x < -b\)となる。
\((vi)\) \(a > 0 > b > -a\)のとき、\(a^2-b^2 > 0\)だから、求める範囲は\(x < -a, -\sqrt{-ab} < x < b, -b < x < \sqrt{-ab}, a < x\)となる。
\((vii)\) \(a > 0 > b = -a\)のとき、\(a^2-b^2=0\)だから、解は存在しない。
\((viii)\) \(b > 0 > -b > a\)のとき、\(a^2-b^2 > 0\)だから、求める範囲は\(x < a, -\sqrt{-ab} < x < -b, b < x < \sqrt{-ab}, -a < x\)である。
\((ix)\) \(b > 0 > a > -b\)のとき、\(a^2-b^2 < 0\)だから、求める範囲は\(-b < x < -\sqrt{-ab}, a < x < -a, \sqrt{-ab} < x < b\)である。
\((x)\) \(b > 0 > a = -b\)のとき、\(a^2-b^2 = 0\)だから、解は存在しない。

解説

異常に面倒な問題で、解答が\(10\)回の場合分けを要する。解答の式\((c)\)を出すまでは標準的であるが、ここからはとても京大で出題された問題だとは思えない。延々と地道な場合分けが続くだけであるが、ポイントがいくつかある。

先ず、\(a, b\)が同符号のときは、\(x^2+ab > 0\)となるから、\(x^2\)についての\(2\)次関数\((a^2-b^2)(x^2-a^2)(x^2-b^2)\)を解けば良い。\(\mid x\mid\)の関数と見てしまえば良いかも知れないが、問題文で問われているのは\(x\)の範囲についてであって、\(\mid x\mid\)の範囲についてではない。なので、解答の中に\(\mid x\mid\)を残したままなのはやはりまずいのだろう。そこで初めから、\(4\)次関数\((a^2-b^2)(x+a)(x-a)(x+b)(x-b)\)を考える。これは、\(\displaystyle x\to \pm \infty\)のときに\(\to \infty\)になるので簡単にグラフの概形が分かる。後は\(a, b, -a, -b\)の大小と不等号の向きに注意しながら慎重に範囲を書き出していくだけになる。

\(a, b\)が異符号の場合も基本的には同じで、\(x\)の\(6\)次関数\((a^2-b^2)(x+a)(x-a)(x+b)(x-b)(x+\sqrt{-ab})(x-\sqrt{-ab})\)のグラフを描いてしまうのが早い。見た目ですぐに範囲が分かるし、間違いも多少は減らすことができよう。

関連問題

1973年東京大学理系数学問題2 数と式
1989年東京大学文理共通 同値変形
1972年京都大学文理共通文系問題2理系問題3 数と式の基本
1988年京都大学文系B日程問題1 不等式と置き換え

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