[math]2022年東京医科歯科大学医学科数学問題2

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問題

\(xy\)平面上の放物線\(P: y^2 = 4x\)上に異なる\(2\)点\(A, B\)をとり、\(A, B\)それぞれにおいて\(P\)への接線と直行する直線を\(n_A, n_B\)とする。\(a\)を正の数として、点\(A\)の座標を\((a, \sqrt{4a})\)とするとき、以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(n_A\)の方程式を\(a\)を用いて表わせ。
\((2)\) 直線\(AB\)と直線\(y = \sqrt{4a}\)とがなす角の\(2\)等分線のひとつが、\(n_A\)に一致するとき、直線\(AB\)の方程式を\(a\)を用いて表わせ。
\((3)\) \((2)\)のとき、点\(B\)を通る直線\(r_B\)を考える。\(r_B\)と直線\(AB\)とがなす角の\(2\)等分線のひとつが、\(n_B\)に一致するとき、\(r_B\)の方程式を\(a\)を用いて表わせ。
\((4)\) \((3)\)のとき、直線\(AB\)と放物線\(P\)で囲まれた図形の面積を\(S_1\)とし、\(P\)と直線\(y = \sqrt{4a}\)、直線\(x = -1\)および\((3)\)の\(r_B\)で囲まれた図形の面積を\(S_2\)とする。\(a\)を変化させたとき、\(\displaystyle \frac{S_1}{S_2}\)の最大値を求めよ。

方針

\((2)\) 二等分線について、\(2\)つ出てくるが、どちらが適するかを考察する必要がある。

解答

\((1)\) \(P\)の方程式の両辺を微分すると、\(2ydy = 4dx\)である。したがって、\(\displaystyle \frac{dy}{dx} = \frac{2}{y} = \frac{1}{\sqrt{x}}\)である。\(n_A\)は点\(A\)における\(P\)の法線であるから、その傾きは\(-\sqrt{a}\)となる。したがって、\(\underline{n_A: y = -\sqrt{a}(x-a)+\sqrt{4a}}\)となる。

\((2)\) 直線\(AB\)の傾きは\(\displaystyle \frac{\sqrt{4a}-(-\sqrt{4b})}{a-b} = \frac{2}{\sqrt{a}-\sqrt{b}}\)となる(\(a\ne b\))。直線\(AB\)と\(y = \sqrt{4a}\)がなす角を\(\theta\)とすると、$$\tan{\theta} = \frac{2}{\sqrt{a}-\sqrt{b}} \tag{a}$$である。下の図から、直線\(AB\)と直線\(y = \sqrt{4a}\)とがなす角の\(2\)等分線は\(2\)つあるが、その傾きは\(\displaystyle \tan{\frac{\theta}{2}}\)か\(\displaystyle \tan{\left(\frac{\theta}{2}+\frac{\pi}{2}\right)}\)になる。

図形の概略図。図の角度が\(\theta\)であり、これを二等分する直線が、点線の直線である。

ところが、\(\tan{\theta} > 0\)であるから、\(\displaystyle \tan{\frac{\theta}{2}} > 0\)であり、\((1)\)から\(n_A\)の傾きは負であるから、\(n_A\)の傾きは\(\displaystyle \tan{\left(\frac{\theta}{2}+\frac{\pi}{2}\right)}\)となる。$$\tan{\left(\frac{\theta}{2}+\frac{\pi}{2}\right)} = -\frac{1}{\tan{\frac{\theta}{2}}} = -\sqrt{a}$$であるから、$$\tan{\frac{\theta}{2}} = \frac{1}{\sqrt{a}} \tag{b}$$である。\(\displaystyle \tan{\theta} = \frac{2\tan{\frac{\theta}{2}}}{1-\tan^2{\frac{\theta}{2}}}\)に注意すると、\(a\ne 1\)のとき式\((a)\)と式\((b)\)から、$$\frac{\frac{2}{\sqrt{a}}}{1-\frac{1}{a}} = \frac{2}{\sqrt{a}-\sqrt{b}}$$となる。整理すると、\(\displaystyle \sqrt{b} = \frac{1}{\sqrt{a}}\)となる。これより、\(\displaystyle \frac{2}{\sqrt{a}-\sqrt{b}} = \frac{2\sqrt{a}}{a-1}\)となる。直線\(AB\)の方程式は\(\displaystyle {y = \frac{2\sqrt{a}}{a-1}(x-a)+2\sqrt{a}}\)となる。これを\((a-1)y = 2\sqrt{a}(x-a)+2\sqrt{a}(1-a) = 2\sqrt{a}(x-1)\)と書くと、\(a = 1\)のとき\(\displaystyle x = a = 1, b = \frac{1}{a} = 1\)となり、\(a = b = 1\)でも成立する。求める直線\(AB\)の方程式は\(\underline{(a-1)y = 2\sqrt{a}(x-1)}\)である。

\((3)\) \((1), (2)\)から点\(B\)の座標は\(\displaystyle \left(\frac{1}{a}, -\frac{2}{\sqrt{a}}\right)\)である。\((2)\)と同じように考えると、点\(B\left(b, -2\sqrt{b}\right)\)に対して、直線\(AB\)と\(y = -2\sqrt{b}\)とがなす角の二等分線の一つは\(n_B\)に一致する。したがって、\(r_B\)の方程式は\(\displaystyle y = -2\sqrt{b} = \underline{-\frac{2}{\sqrt{a}}}\)である。

\((4)\) \((2)\)より直線\(AB\)の方程式は\(\displaystyle x = \frac{a-1}{2\sqrt{a}}y + 1\)である。したがって、$$\begin{eqnarray}S_1 & = & \int_{-\frac{2}{\sqrt{a}}}^{2\sqrt{a}}{\left(\frac{a-1}{2\sqrt{a}}y+1-\frac{y^2}{4}\right)dy}\\ & = & -\frac{1}{4}\int_{-\frac{2}{\sqrt{a}}}^{2\sqrt{a}}{\left(y+\frac{2}{\sqrt{a}}\right)\left(y – 2\sqrt{a}\right)dy} \\ & = & -\frac{1}{4}\cdot -\frac{1}{6}\left(2\sqrt{a}+\frac{2}{\sqrt{a}}\right)^3\\ & = & \frac{1}{3}\left(\sqrt{a}+\frac{1}{\sqrt{a}}\right)^3\end{eqnarray}$$である。\(S_2\)は下図の台形から、\(S_1\)を除いた面積なので、$$\begin{eqnarray}S_2 & = & \frac{1}{2}\left(\left(1+\frac{1}{a}\right)+(1+a)\right)\cdot \left(2\sqrt{a}+\frac{2}{\sqrt{a}}\right)-S_1\\ & = & \left(\sqrt{a}+\frac{1}{\sqrt{a}}\right)^3-\frac{1}{3}\left(\sqrt{a}+\frac{1}{\sqrt{a}}\right)^3\\ & = & \frac{2}{3}\left(\sqrt{a}+\frac{1}{\sqrt{a}}\right)^3\end{eqnarray}$$である。以上から、\(\displaystyle \underline{\frac{S_1}{S_2} = \frac{1}{2}}\)となる。

上図で点\(A\)の座標は\((a, 2\sqrt{a})\)、点\(B\)の座標は\(\left(\frac{1}{a}, \frac{2}{\sqrt{a}}\right)\)である。これから台形\(ABCD\)について、\(\displaystyle AC = 1+a, BD = 1+\frac{1}{a}\)であり、\(\displaystyle CD = 2\sqrt{a}+\frac{2}{\sqrt{a}}\)となる。

解説

医学科以外では\(y^2=4x\)を\(y = 4x^2\)に変更したものが出題された。こちらの方が素直に解け、良い練習になると思われるので、まずはそちらにチャレンジしてみると良い。

\((1)\) 接線と法線の方程式を求める。これは落とせない。

\((2)\) これも簡単ではない。角の二等分線の求め方として、解答のように\(\tan\)を考える方法と、距離で考える方法がある。距離で考える方法とは、例えば以下の問題\(3x-4y-1 = 0\)と\(2x+y+1=0\)のなす角の二等分線を求めよ、などというとき、求める直線上の点を\((X, Y)\)とすると、直線の距離の公式から、$$\frac{\mid 3X-4Y-1 \mid }{\sqrt{3^2+4^2}} = \frac{\mid 2X+y+1\mid}{\sqrt{2^2+1}}$$となり、これを解くと直線の方程式が求まる、というものである(答えは\(2\)つ出てくる)。どちらも使えるようにしておく必要があるが、この問題の場合、距離で考えるとかなり計算が大変になる。

\((3)\) 場合分けして\((2)\)と同じように角度を考えて…とやっていると時間がいくらあっても足りない。せっかく\((2)\)で同じことをやっているので、サラッと\((2)\)を利用したい。

\((4)\) 最大値を求めよ、となっているのに定数になりギョッとする。過去にも京都大学で最大値を求めよ、と言っているのに答えが定数になる問題が出題され議論になったことがある。定関数の最大値は一定なので、問われ方としては何の問題もないが、受験生にとってはたまったものではない。

実は、\(x = -1\)は放物線\(P\)の準線と呼ばれる直線である。

放物線 - Wikipedia

\(P\)は直線\(x = -1\)と点\((1, 0)\)からの距離が等しい点の集合である。確かめてみよう。$$x + 1 = \sqrt{(x-1)^2+y^2}$$であり、整理すると\(y^2=4x\)となる。この問題は放物線の二点を結ぶ直線と法線、それらを二等分する直線と準線についての有名事実を題材にしたものであるが、そんなものを知っている受験生は多くはないので、粛々と計算できればそれで良い。

関連問題

1988東京医科歯科大学数学問題1 二次曲線と面積、微分
2010年前期東京医科歯科大学数学問題3 二次曲線と楕円
2021年東京医科歯科大学医学科数学問題3 二次曲線と接線、双曲線

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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