[math]2022年東京工業大学数学問題4

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問題

\(a\)は正の実数とする。複素数\(z\)が\(\mid z-1 \mid = a\)かつ\(\displaystyle z \ne \frac{1}{2}\)を満たしながら動くとき、複素数平面上の点\(\displaystyle \omega = \frac{z-3}{1-2z}\)が描く図形を\(K\)とする。このとき、次の問いに答えよ。
\((1)\) \(K\)が円となるための\(a\)の条件を求めよ。また、そのとき\(K\)の中心が表す複素数と\(K\)の半径を、それぞれ\(a\)を用いて表わせ。
\((2)\) \(a\)が\((1)\)の条件を満たしながら動くとき、虚軸に平行で円\(K\)の直径となる線分が通過する領域を複素数平面上に図示せよ。

方針

座標を置いて解いても良いし、複素数で表しても良い。

解答

\((1)\) \(\displaystyle \omega = \frac{z-3}{1-2z}\)であるから、\(\omega(1-2z) = z-3\)であり、\(z\)について解くと、\(\displaystyle z(1+2\omega) = \omega + 3 \)である。\(1+2\omega = 0\)のとき、\(0 = \omega + 3\)となり矛盾する。したがって\(\displaystyle \omega \ne -\frac{1}{2}\)で、\(\displaystyle z = \frac{\omega + 3}{1+2\omega}\)である。\(\mid z-1\mid = a\)に代入して、$$\begin{eqnarray}\left|\frac{\omega + 3}{1+2\omega}- 1\right| & = & a \\ \left|\frac{-\omega + 2}{1+2\omega}\right| & = & a\end{eqnarray}$$である。\(\omega = x + yi\)とすると、$$\mid (-x+2)-yi \mid = a\mid (2x+1)+2yi\mid$$となる。両辺の二乗を考え、$$(-x+2)^2+y^2 = a^2((2x+1)^2+4y^2)$$となり、整理すると$$(4a^2-1)x^2 + 4(a^2+1)x + (4a^2-1)y^2 + a^2-4 = 0 \tag{a}$$である。\(\displaystyle 4a^2-1=0\)のとき、式\((a)\)は直線になる。したがって\(4a^2-1\ne 0\)が必要で、このとき式\((a)\)は$$x^2+\frac{4(a^2+1)}{4a^2-1}x+y^2 = -\frac{a^2-4}{4a^2-1}$$である。さらに変形して、$$\begin{eqnarray}\left(x + \frac{2(a^2+1)}{4a^2-1}\right)^2+y^2 & = & \frac{4(a^2+1)^2}{(4a^2-1)^2}-\frac{a^2-4}{4a^2-1}\\ & = & \frac{4(a^2+1)^2-(4a^2-1)(a^2-4)}{(4a^2-1)^2} \\ & = & \frac{25a^2}{(4a^2-1)^2} \end{eqnarray}$$となる。このとき、\(K\)は複素数平面上で中心\(\displaystyle -\frac{2(a^2+1)}{4a^2-1}\)で半径\(\displaystyle \frac{5a}{\mid 4a^2-1\mid }\)の円になる。求める条件は\(\displaystyle \underline{a\ne \frac{1}{2}}\)となる。

\((2)\) 直径の上端の点は\(\displaystyle \left(-\frac{2(a^2+1)}{4a^2-1}+i\frac{5a}{\mid 4a^2-1\mid}\right)\)であり、下端の点は\(\displaystyle \left(-\frac{2(a^2+1)}{4a^2-1} -i\frac{5a}{\mid 4a^2-1\mid}\right)\)となる。\(\displaystyle x(a) = -\frac{2(a^2+1)}{4a^2-1}, y(a) = \frac{5a}{4a^2-1}\)として、\(x(a), y(a)\)の増減、凹凸を調べる。$$\begin{eqnarray}x^{\prime}(a) & = & -\frac{4a(4a^2-1)-2(a^2+1)\cdot 8a}{(4a^2-1)^2} \\ & = & -\frac{20a}{(4a^2-1)^2}\\ y^{\prime}(a) & = & \frac{5(4a^2-1)-5a\cdot 8a}{(4a^2-1)^2} \\ & = & -\frac{5(4a^2+1)}{(4a^2-1)^2}\end{eqnarray}$$であるから、$$\frac{y^{\prime}(a)}{x^{\prime}(a)} = \frac{4a^2+1}{4a}$$となり、\(a > 0\)において\(\displaystyle \frac{y^{\prime}(a)}{x^{\prime}(a)} > 0\)である。また、$$\begin{eqnarray}\frac{d^2y}{dx^2} & = & \frac{d}{dx}\left(\frac{dy}{dx}\right)\\ & = & \frac{d}{da}\left(\frac{dy}{dx}\right)\cdot \frac{da}{dx} \\ & = & \frac{d}{da}\left(\frac{4a^2+1}{4a}\right)\cdot \left(-\frac{(4a^2-1)^2}{20a}\right) \\ & = & \frac{4a^2-1}{4a^2}\cdot -\frac{(4a^2-1)^2}{20a}\\ & = & -\frac{(4a^2-1)^3}{80a^3}\end{eqnarray}$$となる。したがって、\(\displaystyle 0 < a < \frac{1}{2}\)のときには\((x(a), y(a))\)は上に凸で、\(\displaystyle a > \frac{1}{2}\)のときは下に凸になる。また、$$\begin{eqnarray}\lim_{a\to 0}{x(a)} & = & 2\\ \lim_{a\to 0}{y(a)} & = & 0 \\ \lim_{a\to \frac{1}{2}-0}{x(a)} & = & \infty\\ \lim_{a\to \frac{1}{2}+0}{x(a)} & = & -\infty\\ \lim_{a\to\frac{1}{2}-0}{y(a)} & = & -\infty \\ \lim_{a\to\frac{1}{2}+0}{y(a)} & = & \infty \\ \lim_{a\to\infty}{x(a)} & = & -\frac{1}{2}\\ \lim_{a\to\infty}{y(a)} & = & 0 \end{eqnarray}$$以上をもとに\(a\)と\(\displaystyle \frac{1}{2}\)の大小に留意しつつ線分が動く領域を図示すると、以下のようになる。ただし、境界は含むが、点\(\displaystyle \left(-\frac{1}{2}, 0\right)\)と\(\displaystyle \left(2, 0\right)\)は除く。

解答概略図。

解説

アポロニウスの円を題材にした問題である。

アポロニウスの円 - Wikipedia

\((1)\) よくある複素数平面の問題だが、計算がなかなかボリュームがある。複素数のままで進めてもよいが、結局中心も半径も求めなくてはならないので、どこかで座標計算に移るというのも一つの手である。

\((2)\) 複素数平面の話がいつの間にか媒介変数表示された曲線の話になる。二階微分までは調べる必要がないかもしれないが、やるのであれば決して$$\frac{y^{\prime\prime}(a)}{x^{\prime\prime}(a)}$$を計算してはいけない。パラメータ表示された曲線の二階微分については、過去何回か取り上げているので、関連問題を参照していただくと良い。なお、\(x(a), y(a)\)は複素数平面上の点なので、個別に微分する意味は少ない。

なお、\(\displaystyle x = -\frac{2(a^2+1)}{4a^2-1}\)から\(\displaystyle a^2 = \frac{x-2}{4x+2}\)となる。これを\(\displaystyle y = \frac{5a}{4a^2-1}\)の\(a^2\)の部分に代入すると、\(\displaystyle a = -\frac{y}{2x+1}\)になる。改めて\(\displaystyle y = \frac{5a}{4a^2-1}\)に代入して整理すると$$\left(x-\frac{3}{4}\right)^2-y^2 = \frac{25}{16}$$となる。これは\(\displaystyle x-\frac{3}{4}\pm y = 0\)を漸近線とする双曲線になる。この解法も自然である。

関連問題

媒介変数表示された曲線について。

その他の関連問題は以下を参照。
2000年東京大学理系前期第2問 複素数平面の名問題
2020年東京工業大学前期数学問題2 複素数平面

関連リンク

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