[math]2008年東京工業大学後期数学問題1

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問題

\((1)\) 実数\(a_1, a_2, x_1, x_2, y_1, y_2\)が$$\begin{eqnarray}0 < a_1 \leq a_2 \\ a_1x_1 \leq a_1y_2 \\ a_1x_2 + a_2x_2 \leq a_1y_1 + a_2y_2\end{eqnarray}$$をみたしているとする。このとき\(x_1 + x_2 \leq y_1 + y_2\)であることを証明せよ。
\((2)\) \(n\)を\(2\)以上の整数とし、\(3n\)個の実数\(a_1, a_2, \cdots, a_n, x_1, x_2, \cdots, x_n, y_1, y_2, \cdots, y_n\)が$$0\leq a_1 \leq a_2\leq \cdots \leq a_n$$および\(n\)個の不等式$$\sum_{i = 1}^{j}{a_ix_i}\leq \sum_{i=1}^{j}{a_iy_i}\ \ \ (j = 1, 2, \cdots, n)$$をみたしているならば、$$\sum_{i=1}^{n}{x_i}\leq \sum_{i = 1}^{n}{y_i}$$であることを証明せよ。

方針

\((1)\)を\((2)\)に一般化するのが難しい。\(y_i-x_i = z_i\)と置いて、さらに\(a_1z_1 = b_1, a_1z_1 + a_2z_2 = b_2\)などとしたときに、\(z_1+z_2 \geq 0\)を示すことを目標にする。

解答

以後\(y_j-x_j = z_j\ \ (j = 1, 2, \cdots, n)\)とする。

\((1)\) \(a_1z_1 = b_1, a_1z_1 + a_2z_2 = b_2\)とすると、\(b_1 \geq0, b_2 \geq 0\)である。これは、\(0< a_1\leq a_2\)より、\(\displaystyle z_1 = \frac{b_1}{a_1}, z_2 = \frac{b_2-b_1}{a_2}\)と変形できる。今、\(0 < a_1 \leq a_2, b_1 \geq 0\)より、\(\displaystyle z_2 = \frac{b_2}{a_2}-\frac{b_1}{a_2}\geq \frac{b_2}{a_2}-\frac{b_1}{a_1}\)が成り立つ。したがって、$$\begin{eqnarray}z_1 + z_2 & = & \frac{b_1}{a_1} + \left(\frac{b_2}{a_2}-\frac{b_1}{a_2}\right)\\ & \geq & \frac{b_1}{a_1} + \left(\frac{b_2}{a_2}-\frac{b_1}{a_1}\right)\\ & = & \frac{b_2}{a_2} \\ & \geq & 0\end{eqnarray}$$である。よって、\(x_1+x_2\leq y_1 + y_2\)である。

\((2)\) \((1)\)と同様に\(a_1z_1 = b_1, a_1z_1 + a_2z_2 = b_2, \cdots, a_1z_1 + a_2z_2 + \cdots + a_nz_n = b_n\)とする。与えられた条件から、\(b_j \geq 0 \ (j = 1, 2, \cdots, n)\)である。これは、\(0 < a_1 \leq a_2\leq \cdots \leq a_n\)より、\(\displaystyle z_1 = \frac{b_1}{a_1}, z_2 = \frac{b_2-b_1}{a_2}, \cdots , z_n = \frac{b_n-b_{n-1}}{a_n} \)と変形できる。今、\(0 < a_1\leq a_2 \leq \cdots \leq a_n, b_{j-1}\geq 0\ (j = 2, 3, \cdots, n)\)より\(\displaystyle z_j = \frac{b_j}{a_j}-\frac{b_{j-1}}{a_{j}}\geq \frac{b_j}{a_j}-\frac{b_{j-1}}{a_{j-1}}\)が成り立つ。したがって、$$\begin{eqnarray}z_1+z_2 + \cdots + z_n & = & \frac{b_1}{a_1} + \left(\frac{b_2}{a_2}-\frac{b_1}{a_2}\right) + \cdots + \left(\frac{b_n}{a_n}-\frac{b_{n-1}}{a_n}\right) \\ & \geq & \frac{b_1}{a_1}+\left(\frac{b_2}{a_2}-\frac{b_1}{a_1}\right)+\cdots + \left(\frac{b_n}{a_n}-\frac{b_{n-1}}{a_{n-1}}\right) \\ & = & \frac{b_n}{a_n} \\ & \geq & 0\end{eqnarray}$$である。よって、\(x_1 + x_2 + \cdots + x_n \leq y_1 + y_2 + \cdots + y_n\)である。

解説

\((1)\) これはそれほど苦労せずに解ける。文字がやや多いが適当に式をいじっていれば、\(10\)分もあれば解決出来るだろう。ただし、これを\((1)\)の一般化である\((2)\)に繋げるのがとても難しい。背理法、差を作るなど色々な手法が考えられるが\(\cdots\)。\((2)\)はとても考えにくい。キレイに説明出来た受験生は相当な実力を持っているものと自信をもっても良い。解答をいきなり読むとギョッとするかもしれないが、当然裏がある。以下の問題を参照する。

\(a_1, a_2, \cdots, a_n, b_1, b_2, \cdots, b_n\)は実数で、\(\displaystyle c_k = \sum_{i=1}^{k}{a_ib_i}\ \ (i = 1, 2, \cdots, n)\)とおく。$$\begin{eqnarray}b_1 \geq b_2 \geq \cdots \geq b_n > 0 \\ c_k \leq 0 \ \ (k = 1, 2, \cdots, n-1), c_n > 0\end{eqnarray}$$であるとき、
\((1)\) \(a_k \ \ (k = 1, 2, \cdots, n)\)を\(b_1, b_2, \cdots, b_n, c_1, c_2, \cdots, c_n\)を用いて表わせ。
\((2)\) \(\displaystyle \sum_{k=1}^{n}{a_k} > 0\)を証明せよ。

1982年の東京慈恵会医科大学で出題された問題であるが、上の東京工業大学の問題とほぼ同じ問題である。この誘導を参考にして、解決したという次第である。東京工業大学では古くに出題された問題を、誘導なしの素材そのままの形で出題することが多々ある。受験生の思考力と勉強の度合いを見るのには良い出題方針なのではないかと思われる。

関連問題

1986年京都大学文理共通問題1 大小関係の感覚と不等式
1988年京都大学文系B日程問題1 不等式と置き換え

東京工業大学で出題された有名事実を題材にした問題

1988年東京工業大学数学問題5 対数を取る、区分求積法、過去問研究
1994年東京工業大学数学問題3 絶対値のついた積分と極限
1994年後期東京工業大学数学問題2 無理数の\(n\)乗、共役無理数
1996年東京工業大学前期数学問題1 文字数の多い整数多項式

関連リンク

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