問題
\(a\)を正の実数、\(\theta\)を\(\displaystyle 0\leq \theta \leq \frac{\pi}{2}\)を満たす実数とする。\(xyz\)空間において、点\((a, 0, 0)\)と点\((a+\cos{\theta}, 0, \sin{\theta})\)を結ぶ線分を、\(x\)軸のまわりに\(1\)回転させてできる曲面を\(S\)とする。さらに、\(S\)を\(y\)軸のまわりに\(1\)回転させてできる立体の体積を\(V\)とする。
次の問いに答えよ。
\((1)\) \(V\)を\(a\)と\(\theta\)を用いて表わせ。
\((2)\) \(a = 4\)とする。\(V\)を\(\theta\)の関数と考えて、\(V\)の最大値を求めよ。
方針
立体の積分については、
1: 式で表す。
2: 回転軸に平行な平面で切る。
3: 変数の動く範囲を考える。
4: 積分する。
という基本を忠実に守る。
解答
最初に\(\theta \ne 0\)のときを考える。\((a, 0, 0)\)を点\(A\)とする。\(S\)上の点\(P(x, y, z)\)の間に成り立つ関係式を求める。点\(P\)から\(x\)軸に下ろした垂線の足を\(H\)とすると、\(PH = \sqrt{y^2+z^2}\)である。下の図から\(PH: HA = \sin{\theta}:\cos{\theta}\)であるから、$$\sqrt{y^2+z^2}:x-a = \sin{\theta}:\cos{\theta}\ \ (a\leq x\leq a+\cos{\theta})$$である。
両辺を二乗して整理すると、\(S\)の方程式が\(\cos^2{\theta}(y^2+z^2) = \sin^2{\theta}(x-a)^2\)であることがわかる。\(V\)を求めるために\(y = t\)とする。すなわち、平面\(y = t\)によって\(S\)を\(y\)軸の周りに回転させたものの断面を考える。このとき\(t\)の動く範囲であるが、\(-\sin{\theta}\leq t\leq \sin{\theta}\)である。
さて、\(\cos^2{\theta}(t^2+z^2) = \sin^2{\theta}(x-a)^2\)を\(x\)について解くと、\(\displaystyle z = a + \frac{1}{\tan{\theta}}\sqrt{t^2+z^2}\)である。これを\(a\leq x\leq a + \cos{\theta}\)に代入して整理すると、\(\mid z \mid \leq \sqrt{\sin^2{\theta}-t^2}\)がわかる。\(S\)上の点\(P(x, y, z)\)から\(y\)軸に下ろした垂線の足を\(I\)とすると、\(PI^2 = x^2+z^2\)である。\(PI\)の最大値を\(BI\)、最小値を\(AI\)とすると、求める\(V\)は$$V = \int_{-\sin{\theta}}^{\sin{\theta}}{\pi(BI^2-AI^2)dt} \tag{a}$$である。したがって、\(BI, AI\)を求める。
\(\displaystyle x^2+z^2 = \left(a + \frac{1}{\tan{\theta}}\sqrt{t^2+z^2}\right)^2+z^2\)であるが、これは\(z\)に関しての増加関数である。したがって、\(\mid z\mid = \sqrt{\sin^2{\theta}-t^2}\)として、$$BI^2 = (a+\cos{\theta})^2+\sin^2{\theta}-t^2 \tag{b}$$であり、\(z = 0\)として、$$AI^2 = \left(a\pm \frac{t}{\tan{\theta}}\right)^2 \tag{c}$$である。ただし、式\((c)\)では\(t\geq 0\)のときには\(\pm\)の\(+\)を、\(t\leq 0\)のときには\(\pm\)の\(-\)をとるものとする。式\((a), (b), (c)\)から$$\begin{eqnarray}BI^2-AI^2 & = & a^2+2a\cos{\theta}+\cos^2{\theta}+\sin^2{\theta}-t^2-a^2\mp \frac{2a}{\tan{\theta}}t+\frac{t^2}{\tan^2{\theta}}\\ & = & -\frac{1}{\sin^2{\theta}}t^2 \mp \frac{2a}{\tan{\theta}}t + 2a\cos{\theta}+1 \end{eqnarray}$$となり、$$\begin{eqnarray}V & = & \pi\int_{-\sin{\theta}}^{0}{\left(-\frac{1}{\sin^2{\theta}}t^2+\frac{2a}{\tan{\theta}}t + 2a\cos{\theta}+1\right)dt}\\ & & + \pi\int_{0}^{\sin{\theta}}{\left(-\frac{1}{\sin^2{\theta}}t^2-\frac{2a}{\tan{\theta}}t + 2a\cos{\theta}+1\right)dt}\\ & = & 2\pi\int_{0}^{\sin{\theta}}{\left(-\frac{1}{\sin^2{\theta}}t^2-\frac{2a}{\tan{\theta}}t + 2a\cos{\theta}+1\right)dt}\\ & = & -\frac{2\pi}{3}\sin{\theta}-\frac{4a\pi}{\tan{\theta}}\cdot \frac{\sin^2{\theta}}{2}+2\pi\sin{\theta}(2a\cos{\theta}+1)\\ & = & \underline{\frac{2\pi}{3}(2+3a\cos{\theta})\sin{\theta}}\end{eqnarray}$$となる。これは\(\theta = 0\)のときに\(V = 0\)となり、\(\theta = 0\)においても成り立つ。
\((2)\) \((1)\)から\(a = 4\)とすると、\(\displaystyle V = \frac{4\pi}{3}(1+6\cos{\theta})\sin{\theta}\)である。\(\displaystyle f(\theta) = (1+6a\cos{\theta})\sin{\theta}\ \left(0\leq \theta \leq \frac{\pi}{2}\right)\)とすると、\(f(\theta) = \sin{\theta}+3\sin{2\theta}\)であり、$$\begin{eqnarray}f^{\prime}(\theta) & = & \cos{\theta} + 5\cos{2\theta}\\ & = & \cos{\theta} + 6(2\cos^2{\theta}-1)\\ & = & (3\cos{\theta}-2)(4\cos{\theta} + 3)\end{eqnarray}$$となる。\(\displaystyle \cos{\alpha} = \frac{2}{3}\)とすると、\(f(\theta)\)の増減は以下の表のようになる。\begin{array}{|c|*6{c|}}\hline \theta & 0 & & \alpha & & \displaystyle \frac{\pi}{2} \\ \hline f^{\prime}(\theta) & & + & 0 & – & \\ \hline f(\theta) & & \nearrow & & \searrow \\ \hline \end{array}よって、\(f(\theta)\)の最大値は$$\begin{eqnarray}f(\alpha) & = & \left(1 + \frac{2}{3}\right)\sqrt{1-\left(\frac{2}{3}\right)^2}\\ & = & \frac{5\sqrt{5}}{3}\end{eqnarray}$$となる。\(V\)の最大値は\(\displaystyle \frac{4\pi}{3}\cdot \frac{5\sqrt{5}}{3} = \underline{\frac{20\sqrt{5}}{9}\pi}\)となる。
解説
東大後期としては、比較的易しい問題ではあるが、とは言ってもボリューム十分である。\((1)\)がメインで、こういった空間図形の問題、特に積分の問題の場合は図形的な考察はあまり意味を持たない。勿論点\((a, 0, 0)\)と\((a+\cos{\theta}, 0, \sin{\theta})\)の位置関係くらいは図に書くことができるし行っておくべきなのだが、直線を回転させさらにそれを\(y\)軸の周りに回転させるともはや一体どのような図形なのかは簡単には分からない。そこで方程式を活用して問題に取り組む必要がある。解答では先ず\(S\)の方程式を求めている。結果として余り見たことのない形(傘型の図形になる)が出てくるがが、先ず\(S\)を正しく式で表すことが重要である。その後は立体積分の定石、ある軸に対して平行な面で立体を切る訳であるが,ここである軸とは回転軸である\(y\)軸になる。\(y = t = \)一定と言う式が、この操作に当たる訳である。
この平面で切った後、\(S\)との交わりで\(y\)軸との距離が最大の距離の半径を持つ円から、最小の距離の半径を持つ円をくりぬいた部分が平面による立体の切り口になる。解答では、\(t\leq 0\)と\(t\geq 0\)で分けて考えているが、どうせ立体は\(y\)軸に関して対称なので初めから\(t\geq 0\)として後で積分を\(2\)倍しても良い。\(\theta = 0\)だけは別々に考える必要がある。
\((2)\)は\((1)\)ができればおまけの問題である。この年の東大後期数学は、第\(3\)問が超難問であったが(2006年東京大学後期数学問題3 冪乗の和)、第\(1\)問は東大にしては易し目の問題だった。この第二問題でどれだけ粘れたかが勝負の分かれ目となった訳である。
立体の問題は、慣れるととても取り組みすいことがわかる。東大受験生は、毎年のように狙われている分野でもありじっくりと取り組んでみると良い。
関連問題
1983年東京大学理系数学第6問 斜回転体の体積
1991年前期東京医科歯科大学数学問題2 空間図形と方程式
1998年東京大学前期数学問題6 四角錐と円柱、求積の基本について
2022年東京大学理系前期数学問題5 軸回りの回転体の体積、立体の求積
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