[math]2021年東京医科歯科大学数学問題1

surgeons performing surgery math
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問題

\(0\)から\(9\)までの相異なる整数が\(1\)つずつ書かれた\(10\)個の球が、袋の中に入っている。この袋から球を無作為に\(1\)個取り出してはもとにもどす操作を\(3\)回繰り返したとき、取り出した球に書かれている数を順に\(a_1, a_2, a_3\)とする。また\(b_1 = 10+a_1, b_2 = 20+a_2, b_3 = 30+a_3\)とおき、\(b_1, b_2, b_3, b_1+b_2+b_3\)の\(1\)の位を四捨五入して得られる数をそれぞれ\(c_1, c_2, c_3, c_4\)とする。このとき以下の各問いに答えよ。
\((1)\) \(b_1 + b_2 + b_3 = 70\)となる確率を求めよ。
\((2)\) \(c_4 = 90\)となる確率を求めよ。
\((3)\) \(c_1 = 20\)かつ\(c_1 + c_2 + c_3 > c_4\)となる確率を求めよ。

方針

数え上げる前に一工夫して手数を減らしたい。

解答

\((1)\) \(b_1 + b_2 + b_3 = 70\)のとき、\(a_1 + a_2 + a_3 = 10\)となる。変形すると\((a_1+1)+(a_2+1) + (a_3 + 1) = 13\)となる。\(13\)個のボールを並べ、\(12\)個の隙間に\(2\)枚の板をはさみ、左から順に\(a_1+1, a_2+1, a_3+1\)とする。$$\bigcirc\bigcirc\mid\bigcirc\mid\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc\bigcirc$$上は\(a_1 + 1 = 2, a_2 + 1 = 1, a_3 + 1 = 9\)の例である。このように\(a_1, a_2, a_3\)を決めると、ボールと板の並べ方と\(a_1, a_2, a_3\)の決め方は一対一に対応する。ただし、\(a_1 \leq 9, a_2\leq 9, a_3 \leq 9\)だから、\(a_1 = 10\)または\(a_2 = 10\)または\(a_3 = 10\)となる\(3\)通りは除く。ボールの選び方は、\(\displaystyle _{12}{\mathbb{C}}_{2}-3 = 63\)通りである。\(a_1, a_2, a_3\)の選び方は\(10^3 = 1000\)通りなので、求める確率は\(\displaystyle \underline{\frac{63}{1000}}\)である。

\((2)\) \(c_4\)は\(b_1+b_2+b_3\)を四捨五入した数なので、\(c_4 = 90\)のとき、\(85\leq b_1+b_2+b_3\leq 94\)となる。すなわち、\(85 \leq (10+a_1) + (20 + a_2) + (30 + a_3) \leq 94 \)である。変形して、\(25 \leq a_1 + a_2 + a_3 \leq 34\)である。\(a_1 \leq 9, a_2\leq 9, a_3\leq 9\)だから、\(a_1+a_2+a_3\leq 27\)だから、\(a_1+a_2+a_3 = 25, 26, 27\)となる。
\((i)\) \(a_1+a_2+a_3 = 25\)となるとき、\((9, 9, 7)\)となるのが\(3\)通り、\((9, 8, 8)\)となるのが\(3\)通りある。
\((ii)\) \(a_1 + a_2 + a_3 = 26\)となるとき、\((9, 9, 8)\)となるのが\(3\)通りある。
\((iii)\) \(a_1 + a_2 + a_3 = 27\)となるとき、\((9, 9, 9)\)となるのが\(1\)通りある。

合計\(6 + 3 + 1\)通りなので、求める確率は\(\displaystyle \frac{10}{1000} = \underline{\frac{1}{100}}\)となる。

\((3)\) \(a_1+a_2+a_3 = d\)と置く。\(c_1 = 20\)だから、\(5\leq a_1\leq 9\)で、\(5\leq d\leq 27\)である。$$c_4 = \begin{cases}70\ \ (5\leq d\leq 14)\\ 80\ \ (15\leq d\leq 24)\\ 90\ \ (25\leq d\leq 27)\end{cases}$$である。\(c_2 = 20, 30, c_3 = 30, 40\)であるから、\(c_1+c_2+c_3 > c_4\)となるのは\((c_2, c_3, c_4) = (20, 40, 70), (30, 30, 70), (30, 40, 70), (30, 40, 80)\)である。
\((i)\) \(c_1 = 20, c_2 = 20, c_3 = 40, c_4 = 70\)のとき、\(5\leq a_1\leq 9, 0\leq a_2\leq 4, 5\leq a_3\leq 9, 5\leq a_1+a_2+a_2\leq 14\)である。\(a_1-5 = d_1, a_2 = d_2, a_3-5 = d_3\)とすると、$$\begin{cases}0\leq d_1\leq 4 \\ 0\leq d_2\leq 4\\ 0\leq d_3\leq 4\\ -5\leq d_1+d_2+d_3 \leq 4 \end{cases}$$となる。\(d_1+d_2+d_3\)は負にならないから、書き直すと$$\begin{cases}0\leq d_1\leq 4 \\ 0\leq d_2\leq 4\\ 0\leq d_3\leq 4\\ 0\leq d_1+d_2+d_3 \leq 4 \end{cases}$$である。\(d_4 = 4-(d_1+d_2+d_3)\)とすると、$$\begin{cases}0\leq d_1\leq 4\\ 0\leq d_2\leq 4\\ 0\leq d_3\leq 4\\ 0\leq d_4\leq 4\\ d_1+d_2+d_3+d_4 = 4\end{cases}$$となる。この選び方であるが、\(4\)つの\(\bigcirc\)を並べて、\(5\)個の隙間に重複を許して\(3\)つの仕切りを入れて、左から順に\(d_1, d_2, d_3, d_4\)とすれば良い。$$\mid \mid \bigcirc \bigcirc \mid \bigcirc \bigcirc$$上は\(d_1 = 0, d_2 = 0, d_3 = 2, d_4 = 2\)の例である。このような選び方は、\(\begin{pmatrix}5+3-1\\ 3\end{pmatrix} = 35\)通りある。
\((ii)\) \(c_1 = 20, c_2 = 30, c_3 = 30, c_4 = 70\)のとき、\(5\leq a_1\leq 9, 5\leq a_2\leq 9, 0\leq a_3\leq 4, 5\leq a_1+a_2+a_2\leq 14\)である。\(a_1-5 = d_1, a_2-5 = d_2, a_3 = d_3\)とすると、$$\begin{cases}0\leq d_1\leq 4 \\ 0\leq d_2\leq 4\\ 0\leq d_3\leq 4\\ -5\leq d_1+d_2+d_3 \leq 4 \end{cases}$$となる。\(d_1+d_2+d_3\)は負にならないから、書き直すと$$\begin{cases}0\leq d_1\leq 4 \\ 0\leq d_2\leq 4\\ 0\leq d_3\leq 4\\ 0\leq d_1+d_2+d_3 \leq 4 \end{cases}$$である。\((i)\)と同じく、選び方は、\(\begin{pmatrix}5+3-1\\ 3\end{pmatrix} = 35\)通りある。
\((iii)\) \(c_1 = 20, c_2 = 30, c_3 = 40, c_4 = 70\)のとき、\(5\leq a_1\leq 9, 5\leq a_2\leq 9, 5\leq a_3\leq 9, 5\leq a_1+a_2+a_2\leq 14\)である。\(a_1-5 = d_1, a_2-5 = d_2, a_3-5 = d_3\)とすると、$$\begin{cases}0\leq d_1\leq 4 \\ 0\leq d_2\leq 4\\ 0\leq d_3\leq 4\\ -10\leq d_1+d_2+d_3 \leq -1 \end{cases}$$となる。\(d_1+d_2+d_3\)は負にならないから、このような場合は存在しない。
\((iv)\) \(c_1 = 20, c_2 = 30, c_3 = 40, c_4 = 80\)のとき、\(5\leq a_1\leq 9, 5\leq a_2\leq 9, 5\leq a_3\leq 9, 15\leq a_1+a_2+a_2\leq 24\)である。\(a_1-5 = d_1, a_2-5 = d_2, a_3-5 = d_3\)とすると、$$\begin{cases}0\leq d_1\leq 4 \\ 0\leq d_2\leq 4\\ 0\leq d_3\leq 4\\ 0\leq d_1+d_2+d_3 \leq 9 \end{cases}$$となる。\(d_1, d_2, d_3\)の選び方は\(5^3 = 125\)通りあるが、\(d_1+d_2+d_3 > 9\)となるのは、\((d_1, d_2, d_3) = (4, 4, 4), (4, 4, 3), (4, 4, 2), (4, 3, 3)\)(順不同)であり、これは\(1+3+3+3 = 10\)通りある。したがって、\((iv)\)のときの選び方は\(125-10 = 115\)通りである。

\((i)\sim (iv)\)から、\(c_1 = 20\)かつ\(c_1+c_2+c_3 > c_4\)となるのは\(35+35+115 = 185\)通りである。求める確率は、\(\displaystyle \frac{185}{1000} = \underline{\frac{37}{200}}\)となる。

解説

\((3)\)はなかなか面倒であるが、工夫が可能である。この問題のように、\(a_1, a_2, a_3\)だけならば数え上げても大したことはないが、例えば\(a_1, a_2, \cdots, a_5\)などとなると数え上げるのはお手上げになってしまう。入学試験の過去問題は答えが合っていればおしまい、というのでは何の勉強にもならない。自分の力で解いた後、様々な解法を学んで取り入れていくことがとても大切な勉強の姿勢である。実際に、医科歯科大学の過去問題では、数え上げでは不可能な出題も見られる。解答のように、場合の数や重複組み合わせの考え方に帰着させる方法は、学習の価値がある。

\((3)\) \((iv)\)では\(d_1+d_2+d_3 \leq 9\)の場合を数えるより、\(d_1+d_2+d_3 > 9\)の場合を数える方が楽になる。

また、参考までに以下の場合についての場合の数を掲載する。練習問題としてチャレンジしてみると良い。$$\begin{eqnarray}c_1 = 20, c_1+c_2 + c_3 < c_4 & & 10通り\\ c_1 = 20, c_1+c_2+c_3 = c_4 & & 305通り\\ c_1 = 10, c_1+c_2+c_3 > c_4 & & 35通り\\ c_1 = 10, c_1+c_2+c_3 < c_4 & & 110通り\\ c_1 = 10, c_1+c_2+c_3 = c_4 & & 355通り\end{eqnarray}$$\((3)\)の解答の\(185\)通りと合わせて合計\(1000\)通りになっていることも合わせて確認すると良い。

なお、解答で用いた考え方は、以下の東京大学の問題の解答を参照にすると良い。

重複組み合わせについての考え方を用いた解法。

関連問題

1998年東京大学前期理系数学問題2 場合の数と置き換え
1987年東京医科歯科大学数学問題2 場合の数と置き換え
2001年東京医科歯科大学前期数学問題3 場合の数、誘導の利用
2006年度前期東京医科歯科大学数学問題1 数列、場合の数、置き換え
2009年東京医科歯科大学前期数学問題2 整式と整数、場合の数

関連リンク

国立大学法人 東京医科歯科大学

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