[math]1975年東京大学理系数学問題6

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問題

赤玉が\(1\)個と白玉が\(3\)個入った容器\(A\)と、ほかに赤玉と白玉の入った容器\(B\)と\(C\)がある。いま\(A, B, C\)から無作為に\(1\)個ずつ合計\(3\)個の球を取り出し、これらからやはり無作為に\(1\)個を取って\(A\)にかえすという動作をくり返す。ただし容器\(B\)から赤玉が取り出される確率と白玉が取り出される確率はともに\(\displaystyle \frac{1}{2}\)に保たれており、容器\(C\)からはつねに赤玉が取り出されるものとする。
\((1)\) 上記の操作を\(n\)回くり返したとき、容器\(A\)に\(x\)個の赤玉が入っている確率を\(P_n(x), n = 1, 2, 3, \cdots\)で表せば、関係式$$P_{n+1}(x) = \frac{1}{12}(6+x)P_n(x)+\frac{1}{24}(1+x)P_{n}(x+1)+\frac{1}{8}(5-x)P_n(x-1)$$が成り立つことを証明せよ。ただし、\(x\leq -1\)または\(x\geq 5\)のときは\(P_n(x) = 0\)と定める。
\((2)\) \(n\)回目の操作を終えたとき\(A\)の中にある赤玉の数の期待値\(E_n\)を求めよ。
\((3)\) \(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{E_n}\)を求めよ。

方針

結論が与えられているので確率を求める部分は難しくはない。\((2)\)では\(E_n\)についての漸化式を立てると良い。

解答

次の\(4\)通りがある。
\((i)\) \(A\)から赤玉が取り出されて赤玉が戻る場合
\((ii)\) \(A\)から赤玉が取り出されて白玉が戻る場合
\((iii)\) \(A\)から白玉が取り出されて赤玉が戻る場合
\((iv)\) \(A\)から白玉が取り出されて白玉が戻る場合

順に考える。便宜的に赤玉を\(\bullet\)で、白玉を\(^\circ\)で表す。\(B\)から赤玉を取り出す確率と、白玉を取り出す確率がともに\(\displaystyle \frac{1}{2}\)であることに注意すると、
\((i)\) 取り出した球が\((A, B, C) = (\bullet, \bullet, \bullet)\)となり、取り出される確率が\(\displaystyle \frac{x}{4}\times \frac{1}{2}\)となるか、\((A, B, C) = (\bullet, ^\circ, \bullet)\)となり、取り出される確率が\(\displaystyle \frac{x}{4}\times \frac{1}{2}\)となるかのどちらかなので、$$ = \frac{x}{4}\cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{2}{3}P_{n}(x) + \frac{x}{4}\cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{2}{3}P_{n}(x) \tag{a}$$である。
\((ii)\) 取り出した球が\((A, B, C) = (\bullet, \bullet, \bullet)\)となり、取り出される確率が\(\displaystyle \frac{x+1}{4}\times \frac{1}{2}\)となるか、\((A, B, C) = (\bullet, ^\circ, \bullet)\)となり、取り出される確率が\(\displaystyle \frac{x+1}{4}\times \frac{1}{2}\)となるかのどちらかなので、$$ = \frac{x+1}{4}\cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{0}{3}P_{n}(x+1) + \frac{x+1}{4}\cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{3}P_{n}(x+1) \tag{b}$$である。
\((iii)\) 取り出した球が\((A, B, C) = (^\circ, \bullet, \bullet)\)となり、取り出される確率が\(\displaystyle \frac{4-(x-1)}{4}\times \frac{1}{2}\)となるか、\((A, B, C) = (^\circ, ^\circ, \bullet)\)となり、取り出される確率が\(\displaystyle \frac{4-(x-1)}{4}\times \frac{1}{2}\)となるかのどちらかなので、$$ = \frac{4-(x-1)}{4}\cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{2}{3}P_{n}(x-1) + \frac{4-(x-1)}{4}\cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{3}P_{n}(x-1) \tag{c}$$である。
\((v)\) 取り出した球が\((A, B, C) = (^\circ, \bullet, \bullet)\)となり、取り出される確率が\(\displaystyle \frac{4-x}{4}\times \frac{1}{2}\)となるか、\((A, B, C) = (^\circ, ^\circ, \bullet)\)となり、取り出される確率が\(\displaystyle \frac{4-x}{4}\times \frac{1}{2}\)となるかのどちらかなので、$$ = \frac{4-x}{4}\cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{1}{3}P_{n}(x) + \frac{4-x}{4}\cdot \frac{1}{2}\cdot \frac{2}{3}P_{n}(x) \tag{d}$$である。

式\((a), (b), (c), (d)\)の合計を考え、\(\displaystyle P_{n+1}(x) = \frac{1}{12}(6+x)P_n(x)+\frac{1}{24}(1+x)P_{n}(x+1)+\frac{1}{8}(5-x)P_{n}(x-1)\)となり、確かに題意が成り立つ。

\((2)\) \((1)\)の結果に\(x = 0, 1, 2, 3, 4, 5\)を代入して、$$\begin{cases}P_{n+1}(0) & = & \displaystyle \frac{1}{2}P_n(0) & + &\displaystyle \frac{1}{24}P_n(1)\\ P_{n+1}(1) & = &\displaystyle \frac{1}{2}P_n(0) & + &\displaystyle \frac{7}{12}P_n(1) & + &\displaystyle \frac{1}{12}P_n(2)\\ P_{n+1}(2) & = & & & \displaystyle \frac{3}{8}P_n(1) & + &\displaystyle \frac{2}{3}P_n(2) & + & \displaystyle\frac{1}{8}P_n(3) \\ P_{n+1}(3) & = & && & & \displaystyle \frac{1}{4}P_n(2) & + & \displaystyle \frac{3}{4}P_n(3) & +& \displaystyle \frac{1}{6}P_n(4) \\ P_{n+1}(4) & = & && && && \displaystyle \frac{1}{8}P_n(3) & + &\displaystyle \frac{5}{6}P_n(4)\end{cases}$$となる。これから、$$\begin{eqnarray}E_{n+1} & = & P_{n+1}(1) + 2P_{n+1}(2)+3P_{n+1}(3) + 4P_{n+1}(4)\\ & = & \frac{1}{2}P_{n}(0) + \left(\frac{7}{12} + \frac{3}{4}\right)P_{n}(1) + \left(\frac{1}{12} + \frac{4}{3} + \frac{3}{4}\right)P_n(2)\\ & & + \left(\frac{1}{4}+\frac{9}{4} + \frac{1}{2}\right)P_n(3) + \left(\frac{1}{2}+\frac{10}{3}\right)P_n(4)\end{eqnarray}$$となるが、\(P_n(0) + P_n(1)+P_n(2) + P_n(3) + P_n(4) = 1\)であるから、\(P_n(0)\)を消去して、$$\begin{eqnarray}E_{n+1} & = & \frac{1}{2} + \frac{5}{6}(P_n(1)+2P_n(2)+3P_{n}(3)+4P_n(4))\\ & = & \frac{1}{2} + \frac{5}{6}E_n\end{eqnarray}$$となる。変形して、\(\displaystyle E_{n+1} – 3 = \frac{5}{6}(E_n-3)\)となる。\(\displaystyle E_1 = \frac{4}{3}\)であるから(解説参照)、\(\displaystyle E_{n}-3 = \left(\frac{5}{6}\right)^{n-1}\left(\frac{4}{3}-3\right)\)である。よって、\(\displaystyle \underline{E_n = 3-2\left(\frac{5}{6}\right)^{n}}\)となる。

\((3)\) \((2)\)から\(\displaystyle \underline{\lim_{n\to\infty}{E_n} = 3}\)となる。

解説

確率を求める部分は結論も与えられているのでやり易い。結果が与えられていないと計算ミスをしてしまいそうであるが。\((2)\)で詰まってしまったものは多かったのかもしれない。期待値について漸化式を立ててみようという気になれば難しくはないが。その際、期待値の定義である$$E_n = 0\cdot P_n(0) + 1\cdot P_n(1) + 2\cdot P_n(2) + 3\cdot P_n(3) + 4\cdot P_n(4)$$において、\(P_n(0)\)は現れないので、消去する方向で計算を進めると上手く行く。確率の漸化式の問題では、$$P_n(0) + P_n(1) + P_n(2) P_n(3) + P_n(4) = 1$$という関係式を忘れないように留意する。球の数は必ず\(0, 1, 2, 3, 4\)個のどれかなので、確率の和は必ず\(1\)になる。これを忘れると式変形が異常に大変になるか、あるいは多くの場合問題そのものが解けなくなってしまう。

解答では\((2)\)の漸化式を書き連ねている部分で余白を空けて式を見易くしている。このように工夫することで、例えば縦方向に目をやって、\(P_n(3)\)の係数を足してみるときちんと\(\displaystyle \frac{1}{8}+\frac{3}{4}+\frac{1}{8} = 1\)になっていることが分かる。計算ミスをなくすための工夫の一つであるが、意識的に工夫を入れていくことでミスは減らすことが出来る。

解答ではいきなり\(\displaystyle E_1 = \frac{3}{4}\)が出てきている。真面目に考えても良いが、求めた漸化式に\(P_0(1) = 1\)、それ以外のとき\(P_n(x) = 0\)を代入し(初め袋\(A\)には赤玉が\(1\)つ入っているので、\(P_0(1) = 1\))、\(P_1(x)\)を求めて定義から\(E_1\)を求めている。分量のある問題なのでここら辺は省略気味でも構わないだろう。内容的にはそれほど難しくなく漸化式の基本を学べる良い問題だと思うが、試験場でカリカリと記述することを考えると中々煩わしい問題である。

関連問題

1991年東京大学前期理系数学問題1 確率と漸化式、対称性
1993年東京大学理系前期数学問題5 確率と漸化式、個別に考える
1994年京都大学前期文系数学問題4 確率と漸化式、7で割り切れる確率
2011年東京医科歯科大学前期数学問題1 確率と漸化式

関連リンク

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