問題
\(n\)は\(2\)以上の自然数とする。関数\(y = e^{x}\cdots\cdots\text{(ア)}, y = e^{nx}-1\cdots\cdots\text{(イ)}\)について以下の問に答えよ。
\((1)\) \(\text{(ア)}\)と\(\text{(イ)}\)のグラフは第\(1\)象限においてただひとつの交点を持つことを示せ。
\((2)\) \((1)\)で得られた交点の座標を\((a_n, b_n)\)としたとき\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{a_n}\)と\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{na_n}\)を求めよ。
\((3)\) 第\(1\)象限内での\(\text{(ア)}\)と\(\text{(イ)}\)のグラフおよび\(y\)軸で囲まれた部分の面積を\(S_n\)とおく。このとき\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{nS_n}\)を求めよ。
方針
\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{a_n} \ne 0\)だと\(na_n\)の極限は発散するので、\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{a_n} = 0\)なのだろう。
解答
\((1)\) \(f(x) = e^x-e^{nx}+1\)とする。$$\begin{eqnarray}f^{\prime}(x) & = & e^x-ne^{nx}\\ & = & ne^{x}\left(\frac{1}{n}-e^{(n-1)x}\right)\end{eqnarray}$$である。したがって、\(f^{\prime}(x) = 0\)となるのは、\(\displaystyle \frac{1}{n}-e^{(n-1)x} = 0\)、すなわち\(\displaystyle x = \frac{-\log{n}}{n-1}\)のときである。この\(x\)の値は負の値であるから、\(x > 0\)においては\(f^{\prime}(x) < 0\)であることが分かる。これから、\(x > 0\)において\(f(x)\)は減少する。\(\displaystyle f(0) = 1, \lim_{x\to\infty}{f(x)} = -\infty\)であるから、\(x > 0\)においてただひとつ\(f(x) = 0\)を満たす\(x\)が存在する。その\(x\)を\(\alpha\)とすると、\(e^{\alpha} > 0\)であるから、交点は第\(1\)象限にある。よって、題意の通り\(\text{(ア)}\)と\(\text{(イ)}\)のグラフは第\(1\)象限にただひとつの交点を持つ。
\((2)\) $$\begin{eqnarray}f\left(\frac{\log{3}}{n}\right) & = & e^{\frac{\log{3}}{n}}-e^{\log{3}}+1\\ & = & 3^{\frac{1}{n}}-3+1 \\ & = & 3^{\frac{1}{n}}-2 \\ & \leq & 3^{\frac{1}{2}}-2 \\ & = & \sqrt{3}-2 \\ & < & 0\end{eqnarray}$$である。これと\((1)\)から\(\displaystyle 0 < a_n < \frac{\log{3}}{n}\)であることがわかるので、はさみうちの原理から\(\displaystyle \underline{\lim_{n\to\infty}{a_n} = 0}\)である。また、\(\displaystyle f(a_n) = e^{a_n}-e^{na_n} + 1 = 0\)だから、$$\begin{eqnarray}na_n & = & \log{(e^{a_n} + 1)}\\ & \to & \log{(1+1)}\\ & = & \log{2} \end{eqnarray}$$となるから、\(\displaystyle \underline{\lim_{n\to\infty}{na_n} = \log{2}}\)となる。
\((3)\) 下の図から、$$\begin{eqnarray}S_n & = & \int_{0}^{a_n}{f(x)fx}\\ & = & \int_{0}^{a_n}{(e^{a_n}-e^{na_n}+1)dx}\\ & = & \left[e^x-\frac{e^{nx}}{n} + x\right]_{0}^{a_n}\\ & = & e^{a_n}-1-\frac{e^{na_n}-1}{n} + a_n\end{eqnarray}$$となる。これから、$$\begin{eqnarray}nS_n & = & n(e^{a_n}-1)-e^{na_n}+1+na_n\\ & = & \frac{e^{a_n}-1}{a_n}\cdot na_n-e^{na_n} + 1+na_n\\ & \to & e^{\prime}_{\mid x = 0}\cdot \log{2}-e^{\log{2}}+1+\log{2} \ \ \ (n\to \infty)\\ & = & \log{2}-2+1+\log{2}\\ & = & 2\log{2}-1\end{eqnarray}$$となる。
解説
\((2)\) \((1)\)から\(f(x)\)は単調に減少するので、\(f(x) < 0\)となる\(x\)を見つけることができれば\(a_n\)についての不等式を立てることができる。\(\displaystyle \lim_{n\to\infty}{a_n}\ne 0\)だと\(na_n\)の極限は求められないので、当然\(a_n\)の極限は\(0\)になると予想して評価していく。
極限自体は比較的簡単に求めることができるが、自分で不等式を作り評価しなくてはならず、難しい問題である。
関連問題
1988年東京工業大学数学問題1 はさみうちの原理
1990年東京大学理系前期数学問題1 はさみうちの原理
2000年京都大学前期理系数学問題5 積分と有名極限、漸化式、はさみうちの原理
1992年東京医科歯科大学前期数学問題1 不等式と積分、はさみうちの原理
2018年東京工業大学数学問題3 関数と解の和、はさみうちの原理
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